第6話 【球場】

ロボ「このまま進むと広大な球場に突き当たりマスね」


少女「球場?」


ロボ「野球などをするためのスタジアムデス」


少女「あー野球かあ、あんまりよく知らないけど」


ロボ「行ってみマスか?」


少女「うーん、野生動物の住みかになってない?」


ロボ「大丈夫デス。生体反応は付近を飛ぶ鳥くらいのものデス」


少女「じゃあ、まあ、行ってみよっか」




ロボ「広いデスね、なんでもできそうデス」


少女「わー、誰もいなーい」


ロボ「収容人数10500人、この辺りではかなり大きい部類に入るのではないかと思いマス」


少女「1万人も入るんだ……満員で野球やったら気持ちいいだろうなあ……」


ロボ「やりましょうか、野球」


少女「え」


ロボ「ワタシの腕は150キロの速球と120キロのカーブが投げられるよう設計されていマス」


少女「む、無駄に高スペック……」




少女「150キロって、プロ級だよね?」


ロボ「そうデスね、プロでも投げられる人は少ないデス」


少女「え、わたし完全なる素人だけど、パーフェクト・シロートだけど、150キロを打たせるの?」


ロボ「ご主人は意外とまあまあ運動神経がいいので、練習すれば可能かと思いマス」


少女「意外って言うな」


ロボ「間違っても頭には当てませんのでご安心クダサイ」


少女「頭『には』!? 体には当たるの!?」




ビュン!


少女「ひぃー!!」


ロボ「腰が引けていマスよご主人!!」


ビュン!


少女「ぎえー!!」


ロボ「目をつぶっていては打てるものも打てませんよご主人!!」


ビュン!


少女「お助けぇえー!!」スタコラ


ロボ「あ! そのボックスから出たら反則デスよご主人!!」


少女「知らんわ!!」




少女「あのね、わたし、初心者。アイアム・ルーキー」


少女「ばりばりの素人、完璧な素人、パーフェクト・シロートなの」


少女「バットなんか初めて握ったし」


ロボ「おや、他のモノなら握ったことがあるかのような言い方デスね」


少女「茶化すなー!」


ロボ「わかりました、では150キロは無理なようなので、120キロのカーブを」


少女「それ曲がるやつでしょ!? 打てるか!!」


ロボ「大丈夫デス、さっきより30キロも遅くなりマスよ」


少女「わたしにとってはどっちもスポーツカーだっつの!!」




少女「ていっ」シュン


ロボ「おお、なかなか筋がいい」パシッ


ギュンッ!


少女「ぎえー!」


ロボ「しかしキャッチングはまだまだデスね」


少女「手ぇちぎれるわ!」


ロボ「キャッチボールの機能を搭載しておいてもらえればよかったのデスが……」


少女「もう! 融通の利かないハイスペックね!」




ロボ「人数が必要なスポーツというものは、もはや失われた文明と呼べそうデスね」


少女「伝えていく人がいなければ、なくなってしまうでしょうね……」


ロボ「ワタシはいつでも情報にアクセスできマスが」


少女「でもわたしが死んだら、あんたは誰に伝えるのよ」


ロボ「……」


少女「襲来した宇宙人とキャッチボールでもする?」


ロボ「150キロの速球でギタギタにしてやりマスよ」


少女「宇宙人も逃げてくかもね」




少女「また球場を見かけたら、遊びましょ」


ロボ「了解デス」


少女「あんたはゆるいボールを投げられるようにしときなさいよ」


ロボ「精進しマス」


ロボ「ご主人も150キロを打ち返せるように」


少女「ならないわよ!」


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