第5話 【犬】

ロボ「むむっ、前方約200メートル付近に生体反応がありマス!」


少女「!? え、そういうのすごいSFっぽい!!」


ロボ「近づいて来マス!」


少女「え、怖い怖い! ゾンビとかじゃないでしょうね!」


ロボ「生体反応なので、ちゃんと生きた生命体のはずデス」


少女「宇宙人とかじゃないでしょうね!」


ロボ「タイトルに答えが」


少女「メタいのやめんか!」




犬「くんくん」


ロボ「犬デスね」


少女「予想通りすぎる!」


犬「わっふ」


ロボ「よく生き延びていましたね、この世界で」


少女「エサとかどうしてるんだろ」


犬「くぅん……」スリスリ


少女「可愛すぎる」


ロボ「エサをあげたくなりマスねえ」




少女「エサって言っても、今は味の濃い缶詰しかないのよねえ」


ロボ「さすがに塩分がきつ過ぎるかと思いマス」


犬「くんくん」ペロペロ


少女「おーよしよし、すごい人馴れしてる犬ねえ」


ロボ「首輪をしているから飼い犬だったんでしょうね」


少女「飼い主はいなくなっちゃったのかなあ」


ロボ「こんな世の中デスしね」


少女「ねー」




少女「あ、一緒に旅する?」


少女「そうしたらエサを見つけられるかもよ? 長持ちするパンとか固形フードとか」


ロボ「それは無理でしょう」


少女「なんで?」


ロボ「この犬は、飼い主を待っているようデス」


少女「あ……」


犬「わふん」


ロボ「この近辺でしか生活をしていないようデス」


少女「そっか……そうだよね……」




少女「水とかエサは大丈夫かな……」


ロボ「あまり衰弱している感じではありませんし、自力でなんとかしているのでしょう」


少女「そっか……」


少女「じゃあ、せっかくの出会いだし、ちょっとだけお土産を貰っていこう」


ジャキン


ロボ「!? ご主人、そのハサミをどうするのデスか!?」


少女「ふふふ……」


ロボ「そ、そんな猟奇的なシーンを入れるのデスか!? お話のジャンルが変わってしまいマスよ!?」


少女「なに言ってんのよあんたは」


チョキン




ロボ「毛……」


少女「そ、暑そうだし、ちょっとトリミングをね」


少女「で、この毛をちょちょいとまとめて……」


ロボ「筆デスね」


少女「違うわよ! ストラップにしてお守りにするのよ!」


ロボ「狩った獲物の一部を持ち歩くサイコキラーにも見えマスね」


少女「発想が怖い!!」


ロボ「ドクロでネックレスを作るような感じデスね」


少女「一緒にすんな!!」


犬「くぅうん……」




ロボ「野生動物ではなく、明らかに飼われていた動物は初めて見ましたね」


少女「そうね……強く生きてほしいわね……」


ロボ「飼い主を健気に待っている忠犬でしたね」


少女「うーん」


ロボ「どうしました?」


少女「わかってる気がするんだよね、あの犬」


少女「わかってて、それでも待ってる、そんな気がする」


ロボ「それは……ワタシのようなロボットには理解しがたい感情デスね」


少女「そうかも」


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