第31話:ご祝儀奮発するね
「ちょっと貴族になるのもいいか」
なんて浮かない顔のダニエルから衝撃告白をされた私はとりあえず取り乱した。
やめなよ貴族なんて! ルモワーニュ家になんて行ったら破滅END待ったナシだよ?! と言うわけにもいかず、アワアワアワ踊りを始めた私は呆れたダニエルに落ち着け、とお茶請けを口に突っ込まれた。自作カステラんまーい。
大人しくカステラを咀嚼しながら席に戻る。
ダニエルはため息をついて、私にデコピンをくれた。ありがとうございます!!
「別にマジで貴族になろうなんざ思ってねえよ。それにルモワーニュ家とやらは評判最悪なんだろ? そんなトコに行く気なんてさらさらねえよ。ただ……」
「ただ?」
ダニエルはもにょもにょと言葉を濁した。
私はお茶のお代わりを淹れながらダニエルの言葉を待つ。
「ジャンが貴族になったら、平民のおれとは一緒にいられねえだろ。……それならもらわれる先が評判の悪い貴族だろうと、貴族になれるんなら……、なんて思っただけだよ。
ちょっと思っただけで、なる気はねえけど」
なんて言いながらダニエルはカステラをもぐもぐ、お茶を飲んだ。
なるほど、貴族と平民じゃ身分違いだもんね。結婚も、交流も難しい。
物語ならそれを超えてハッピーエンドになるけど、現実はそうもいかない。
ジャンは養子だし、養父に無理を言って平民のダニエルと結婚させて貰える可能性は低い。なにしろジャンの養父は平民嫌いであるらして、天文学的数字並みに低いのではなかろうか。
「むーん、これは難しい問題ですよ……」
「おい、オディル。なんでおれの手を掴んで立ち上がった?」
「え? ジャンに聞きに行こうと思って」
「俺、先に知らせてくるなー」
「ありがとう、バジルさん」
「行ってらっしゃい。二人とも、帰りはバジル君と一緒に帰ってくるんだよ」
「はーい」
「待て、ちょっと待て」
「はい、ちょっと待ーった!
下手な考え休むに似たりって言うし、ここは本人も交えて相談しに行こう! そのほうが早いよ!」
「それはそうだろうが、待て! 心の準備をさせろ!」
予防注射に行くのがイヤな柴犬のごとく、足を突っ張るダニエルに小首を傾げた。
はて、心の準備とは。ダニエルが貴族になったほうがいいかどうか相談しにいくだけだし、緊張する要素とかあるかな?
まあ、受け取り方によっては、身分違いじゃ一緒にいられないから身分を揃えたい、なんてプロポーズに聞こえなくもないけれども。さすがのダニエルもプロポーズは緊張するだろうし。
…………よく考えたらプロポーズだ、これ。
私はいい笑顔で答えた。
「だが断る!」
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