0012
俺が反乱軍に協力するようになって3ヵ月が経った。
いつの間にか俺は反乱軍のエースパイロットの1人となっていた。
俺は冒険者として反乱軍の依頼を受けてるだけだ。
反乱軍に加わったわけじゃないんだがな。
まあ、敵は俺を反乱軍の一員だと判断しているだろうが。
俺と舞姫七式は各地を転戦しながらヴェルザーク帝国と戦っている。
戦っている時に思ったのだが、この世界の技術レベルは進歩が遅い。
FFOで見かけた最上位の量産機を俺は今だに見た事も聞いたことも無い。
それはつまり舞姫七式の性能面でのアドバンテージは暫く問題無いという事だ。
だが、俺はその事実に己惚れる事無く日々精進している。
今も舞姫七式をさらに強化すべくミアリー・ファンクスの元を訪れていた。
「まさかアカツキが反乱軍のエースとはね」
「まあ、俺達が初めて出会った時には考えられない事だな」
「噂じゃ反乱軍のトップエースはアカツキとノア皇子なんだってね。アカツキから見てノア皇子はどんな感じなんだい?」
「あいつは天才だな。機体が同じなら負けるかもしれない」
「ふーん、そんなに強いんだ。でも舞姫があれば勝てるだろう?」
「当然だ」
「うん、それでこそアカツキだね」
ミアリーは俺と他愛無い話をしながら舞姫七式の強化を行う。
俺はその様子を眺めているのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ジェラード皇国の首都エルシアのある惑星ジェラード。
セレン・ファレンシアは反乱軍のリーダーとしてこの惑星を訪れていた。
エルシアの中央に存在する皇城の一室で会談は行われた。
セレン王女に相対するのはアルス・ジェラード。
最近になって新たな皇王として即位した人物だ。
だが、その即位には良からぬ噂が流れている。
「本日はお忙しい中、時間を割いて頂きありがとうございます」
「セレン殿も忙しい身だろう。前置きは無しで話そうではないか」
「分かりました。今日は皇王様にお願いがあって参りました」
「以前から提案している対帝国連合同盟の件かな?」
対帝国連合同盟とはヴェルザーク帝国に対抗する為の同盟である。
この同盟が実現すれば、ヴェルザーク帝国に対して侵略した国々の解放と軍事力の放棄を要求し、それに同意しない場合は帝国への武力行使を実行する事になっている。
しかしこの同盟はペルシウス公国とジェラード皇国から同意が得られていない。
数ある小国は2国が同盟に参加するか、反乱軍の戦力がヴェルザーク帝国と対等に戦えるまで成長するかを同盟参加の条件にしている。
セレン王女としてはどうしてもジェラード皇国の参加表明を得たかった。
「その通りです。帝国を討つ為に、皇国にも協力をお願いしたいのです」
「私が皇王となったからには帝国を好き勝手させておく気はない」
「では同盟に参加していただけるのですね」
セレン王女は笑顔になったが、アルス皇王は首を横に振る。
「我が国は他国と同列で参加する意思はない。同盟軍が我が国の下につく気があるのなら構わないが」
セレン王女の後ろに控えている護衛のアーレン・クレイヴの顔が渋る。
セレン王女は怒りで声を荒げた。
「それでは他国が納得しません! 貴国も我々の力は必要なはずです!」
「反乱軍か。確かにここ最近急激に勢力を拡大しているのは認めよう。その武力とセレン殿の求心力による対帝国連合同盟の提唱。その夢物語に多くの小国は縋るだろう。だが、ペルシウス公国は参加を表明していないようだが?」
「ペルシウス公国にも参加を要請しています。どちらかが動けばもう一方も動きましょう。2国が動けば、多数の小国が同盟に参加する事を確約出来ています。ですのでどうかお考え直しください」
「何か勘違いしているようだな。3ヵ月前の敗北は帝国の戦力を過小評価していたからに過ぎない。もう帝国の切り札である四大将軍の力も見切った。すでに我が国は他国の協力無しに帝国を滅ぼせるのだ」
「帝国は何か企んでいます。あの戦いの後にペルシウス公国にもジェラード皇国にも攻めなかったのは何か理由があるはずです」
「それは帝国がオリハルコンの採掘地を持つ国ばかりを攻めているという話か?」
「ご存知でしたか。その通りです。帝国は明らかにオリハルコンを狙っています。これは警戒すべき事項です」
「帝国がオリハルコンを集めて何を企んでいるのかは分からん。個人的には興味があるが、我が国が警戒する事でもないだろう。もし、帝国がオリハルコンを集めている理由が納得出来るものであったら同盟の参加を考えてもいい」
「……分かりました。その言葉、忘れないでください」
こうしてセレン王女は目的を達成出来ないまま、ジェラード皇国を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ヴェルザーク帝国に敗北した小国に反乱軍が潜入した。
その目的は捕らえられた王族の救出だ。
王族は近日中に処刑されるという情報を反乱軍は掴んでいた。
故に王族の救出は迅速に行う必要があった。
潜入したのはコンバットフレーム30機。
その中には冒険者の姿も多く見られた。
反乱軍の戦力には冒険者も多く含まれているのだ。
「今回はアカツキがいない。俺達だけだが、失敗は出来ないぞ」
今回の作戦の立案者であり、作戦の指揮を執っているのはノア・ヴェルザーク。
ノア皇子は3ヵ月前に反乱軍の作戦で保護された人物だ。
以前から皇帝に反感を覚えていたノア皇子は反乱軍に志願。
数々の作戦を成功させ、反乱軍内での地位を確立していった。
ノア皇子の搭乗機はラナンキュラスをベースに反乱軍が開発した新型コンバットフレームであるレゾスアキュラ。
レゾスアキュラはラナンキュラスよりも装甲を増加させているが、それに伴いブースターも強化されているので機動性は寧ろ向上している。
『アカツキがいなくてもやってみせるわ』
「アカツキからフィナには無茶させるなと言われている。あまり前には出るなよ」
『ちょっと! 何でノアはアカツキの言葉を優先するのよ!』
「アカツキの言っている事は正しいからな」
『ノアはアカツキを優遇しすぎよ!』
フィナはノア皇子に抗議した。
元ヴェルザーク帝国貴族のフィナだが皇子であるノアに対する口調は軽かった。
これは3ヵ月の間、共に戦う内にお互いに遠慮が無くなった結果だ。
『フィナ様。落ち着いてください』
『ゼフィスもノアに何か言ってやりなさい!』
『……フィナ様はもう少し大人しくするべきかと』
『ゼフィスもそんな事言うの!?』
フィナとゼフィスの会話も砕けたものであった。
以前は丁寧な口調を心掛けて話していたフィナだったが、それも昔の話である。
「そろそろ作戦領域に到着する。いくぞ!」
ノア皇子の号令で反乱軍は戦闘を始めた。
そして反乱軍はノア皇子の作戦通りに動き始めたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は強化の終わった舞姫七式に乗ってノア皇子達の元に向かっていた。
「作戦開始には間に合わなかったな」
王族を救出するという作戦はノア皇子から聞いていた。
俺も作戦に参加する予定だったが、作戦開始時間に間に合わなかった。
ミアリーの凝り性なところが裏目に出たといったところか。
ノア皇子は俺が遅れた場合の作戦も考えておくと言っていた。
俺がいなくてもちゃんと王族を救出出来るだろう。
「ノアの作戦があれば大丈夫か。あいつは反乱軍のエースだからな」
俺はコックピット内で独り言を呟いた。
ノア皇子に出会ってから3ヵ月くらい経っている。
この3ヵ月で俺とノア皇子は仲良くなった。
ノア皇子は立場に縛られない人物で、俺とも簡単に打ち解けた。
今ではノア皇子は俺の友と言っていい存在だ。
「急ぐか。何かの役に立てるかもしれないしな」
俺は舞姫七式を加速させた。
とりあえずノア皇子達が逃げてくる宙域に向けて移動する。
2時間くらいで爆発の光が見えてきた。
ズーム機能で確認するとそこには敵と戦うレゾスアキュラの姿があった。
レゾスアキュラは5機の敵を抑えながら少しずつ後退している。
その動きに焦りは見られない。
「武装転送。TYPE-BRβ」
俺はTYPE-BRβを呼び出して舞姫七式に装備させた。
そして戦場に向けて突撃する。
「こちらはアカツキ・ヒカルだ。援護する。反乱軍は後退しろ」
『アカツキか! 間に合わないと思っていたぞ!』
ノア皇子から通信が入った。
「遅れてすまない。敵は俺が引きつける」
『了解した。王族は無事に救出出来たぞ。今はフィナ達が護衛している』
「分かった。後で合流ポイントを送信してくれ」
俺はそう言うとTYPE-BRβを連射しながら敵機に突っ込む。
横目で見るとレゾスアキュラが後退するのが見えた。
ヴェルザーク帝国のコンバットフレームは俺の放ったビームで2機倒せた。
この攻撃はラッキーヒットだった。
幸先の良さを感じながら俺は操縦スティックを操作する。
敵機は散開してこちらを攻撃してきた。
俺は冷静に相手の攻撃を見極める。
翼状のフレキシブルブースターを羽ばたかせて舞姫七式は敵の攻撃を避けた。
そしてTYPE-BRβで反撃する。
敵機はビームの雨に打たれて次々に爆発した。
これで3機を倒した事になる。
とりあえずノア皇子が戦っていた5機の敵は片付けた。
レーダーを見れば追加の敵部隊が迫っている。
俺は迫り来る敵部隊を迎撃するべく、舞姫七式を飛翔させるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ヴェルザーク帝国の追撃を退けた俺はノア皇子達と合流した。
合流地点には反乱軍の宇宙戦艦アルカディアがいた。
『舞姫七式は第二ハッチより本艦に着艦せよ』
「了解だ」
俺は誘導に従って舞姫七式を着艦させた。
格納庫のハンガーに舞姫七式を駐機させて降りるとそこにはノア皇子達がいた。
どうやら俺を待っていてくれたようだ。
「今回もアカツキには助けられたな。流石、アカツキだ」
ノア皇子は笑顔でそう言った。
「いや、俺がいなくても余裕だっただろ? やっぱり反乱軍のエースは違うな」
「またそれか。俺はエースじゃない。エースはアカツキだよ」
「俺は所詮、外様の人間だ。そんな俺がエースじゃ締まらないだろ」
「そんなことないさ。フィナやゼフィスもそう思うだろう?」
ノア皇子はフィナとゼフィスに同意を求めた。
フィナはニヤリと意地悪そうな顔をする。
それを見たゼフィスはやれやれといった表情をした。
「そうね。アカツキは反乱軍のエースよ。帝国からもエースだと思われてるんだから間違いないわ。ねえ、ジェノサイドさん。ふふっ、有名人は辛いわね」
「その名で呼ぶのは止めろよ。それ誰が言い出したんだ?」
フィナはニヤニヤしながら俺を揶揄う。
俺はそれに苦笑するしかなかった。
「いいじゃないか。俺は好きだぞ。ジェノサイドなんてかっこいいじゃないか」
ノア皇子から追撃の言葉をもらった俺はため息をつくのだった。
捕捉
レゾスアキュラの見た目
○ンダムのスターク○ェガンをイメージしてください
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