0010

 帝国軍や宇宙怪獣に襲われるハプニングはあったが、俺達はなんとか反乱軍に合流することが出来た。


 セレン王女は反乱軍のリーダーに会いに行った。

 反乱軍のリーダーはセレン王女の叔父に当たる人らしい。

 言われてみればFFOでも確かそんな設定があったな。


 セレン王女が話をしている間に俺はフィナの行方を反乱軍に尋ねた。

 反乱軍が素直にフィナの居場所を教えてくれたのは意外だったな。


 フィナは反乱軍が計画している作戦遂行の為に行動しているそうだ。

 今は反乱軍の前線基地にいるらしい。


 とりあえずフィナがどこにいるのかは判明した。

 セレン王女の護衛クエストも完了したし俺はフリーだ。

 今すぐフィナの元に向かってもいい。


 だが、セレン王女に別れの挨拶を言わないまま出ていくのは礼儀知らずだろう。

 セレン王女とはもう知らない仲じゃないのできちんと挨拶はした方がいい。


 俺はリオン達と一緒にセレン王女を待つ事にした。


 待っている間にリオン達と話した。


 リオン達は何度も反乱軍の依頼を受けているらしい。


 反乱軍の中にも知り合いが多くいて、俺がフィナを探している事はその伝手で知ったのだと明かしてくれた。


 そうしてリオン達と話しているとセレン王女が戻ってきた。

 反乱軍との話し合いは無事に終わったようだ。


 セレン王女は俺と烈火の翼の3人を引き続き雇いたいと言ってきた。


 セレン王女の向かう先にはフィナがいるようだ。

 ちょうどよかったので俺はセレン王女の申し出を引き受けた。


 再び護衛クエストを受けた俺はエリュシオンに乗って目的地に向かった。


 前線基地には空間跳躍をして1時間で到着した。


 前線基地では戦闘が行われていた。

 反乱軍の相手は当然、ヴェルザーク帝国。


 戦況は反乱軍が劣勢のようだ。

 俺は反乱軍を援護する為に急いで出撃した。


『これより反乱軍を援護する。烈火の翼はエリュシオンを守れ。アカツキと私は前に出て敵を叩く』


 アーレンの指示に従って烈火の翼の3人はエリュシオンの守りについた。


 俺は舞姫七式を加速させ、戦場に突入するのだった。




◇   ◇   ◇   ◇   ◇




 前線基地に配置された反乱軍の戦力は多い。

 その数は帝国軍でも容易に攻める事は出来ないはずだった。


 しかし、帝国軍はこの戦場に規格外の戦力を投入した。


 その規格外の戦力とは最近になって噂されるようになった帝国の死神である。


 帝国の死神が駆るコンバットフレームは全身が黒で塗られている。

 背中には戦闘機の翼のような物が装備されており、機動力はかなり高い。

 右手には大型のビームライフルを握り、左腕にはビームシールドを備えている。


 その強さは圧倒的で次々に反乱軍のコンバットフレームを撃墜する。

 反乱軍の戦力は帝国の死神によって半壊していた。


「あれは私が食い止めます! 皆は基地の防衛に向かってください!」


『フィナ様1人では無茶です!』


「無理は承知です! ですが、このままでは私達は勝てません! 何か手を打つ必要があるのです!」


 フィナは自分1人で帝国の死神を引き受けて戦局を立て直そうとしていた。

 無茶な行動ではあったが、そうしなければ遠からず反乱軍は負ける。

 それはフィナも他の者も分かっていた。


『……私は残ります。他の者は行かせるので、それで納得してください』


「ゼフィス……ごめんなさい」


 フィナの隣に立つのはゼフィス・ロット。


 彼はクリスティン侯爵家に仕える者であったが、前当主を殺した現当主のミレイ・クリスティンには従えないとして反乱軍に加わった。


 今はフィナの護衛を引き受けている。


 ゼフィスの命令で周りにいたコンバットフレームが離れていく。

 これで帝国の死神との戦いは2対1になった。


「私が前に出ます。ゼフィスは後ろから援護してください」


『しかし、それではフィナ様が危険です!』


「私のラナンキュラスは強化されています。あなたの機体よりは戦えるでしょう」


『……分かりました』


 ゼフィスは渋々フィナの意見に従う。


 フィナのラナンキュラスが攻撃を始めた。

 ラナンキュラスのビームライフルから放たれるビームが帝国の死神に向かう。


 帝国の死神はフィナの攻撃を螺旋を描くように飛んで回避する。


 ゼフィスも帝国の死神に攻撃するが、その攻撃は全く当たらない。

 ゼフィスの実力はフィナには劣るが、それでも一流と呼ばれるくらいの腕前である。

 なのにゼフィスの攻撃は帝国の死神に掠りもしない。


 帝国の死神はお返しとばかりにビームライフルを連射した。

 その狙いはフィナではなくゼフィスだった。


 ゼフィスのコンバットフレームは手足を撃ち抜かれてしまう。

 その損傷具合を見れば戦闘はもう無理であると一目で分かる。


「くっ。手強い!」


 フィナは回避行動をとりながらビームライフルを連射する。

 帝国の死神はまるでフィナの攻撃を予測しているみたいに動く。


 帝国の死神がビームライフルを放つ。

 今度はチャージして威力を増したビームだった。


 フィナはシールドで防ごうとするがそのビームの威力は桁違いだった。

 ラナンキュラスの左腕がシールドと一緒に吹き飛ぶ。


 片腕を急に失った事でラナンキュラスの姿勢が崩れた。

 その隙を逃がさず、ラナンキュラスに狙いを定める帝国の死神。


『フィナ様!』


 ゼフィスが叫ぶ。


 避けられないとフィナが死を覚悟したその時だった。


 横から帝国の死神に向けてビームが飛んできた。

 そのビームを躱す為に帝国の死神は攻撃を中断せざるを得なかった。


 ビームの飛んできた方を見れば見覚えのあるコンバットフレームがいた。

 あのような個性的なコンバットフレームをフィナは1体しか知らない。


「舞姫七式!? アカツキなの!?」


 驚くフィナの前に天使のような翼を羽ばたかせながら絶世の美女が降臨した。




◇   ◇   ◇   ◇   ◇




 なんとか間に合った。

 もう少し遅かったらフィナは撃墜されていただろう。


『アカツキ……どうしてここに? あなたは帝国とは戦わないって……』


「仲間を見捨てたら夢見が悪くなるからな。まあ、細かい事は気にするな」


『……ありがとう。来てくれて』


「フィナは下がれ。あいつは俺が相手をする」


『あいつは強いわ。気を付けてね』


「ああ、知ってるさ」


 フィナのラナンキュラスは手足の無くなった機体を引っ張りながら後退した。


 戦闘は俺の方から動いた事で始まった。

 まずはお互い様子見で撃ち合う。


 TYPE-BRαで攻撃しながら俺は相手をスキャンしてみる。

 しかし相手のステータスは見れなかった。

 これは相手の機体が高性能のセキュリティシステムを搭載している事を示す。


 それが決定打だった。

 目の前の機体は他人の空似ではなく本物だと確信した。


 相手もそうだったようで通信が入ってきた。

 画面に映し出されたのは俺と同じくらいの若い男だった。


『こいつは驚いたね。まさかこの世界で舞姫を見るとは思わなかったよ』


「そっちはブラックファイターだな。まさかFFOの最強に出会うなんてな」


 相手はFFOで最強と名高いブラックファイターに乗っている。

 相手の話しぶりから察するにどうやら俺と同じ存在のようだ。


「お前は転生者だな?」


『そう言う君もね。機体を知ってるなら僕の事も知ってるのかな?』


「ジェイド・ジョーカー。Sランクに到達した1人だろ」


『正解。でも僕は君の名前を知らないんだ。良かったら教えてよ』


 舞姫七式を知ってるのに俺は知らないのか。

 まあ、俺は数いるAランク冒険者の中の1人に過ぎない。

 舞姫七式はゲーム内じゃそこそこ有名だったが、俺はそうでもないという事か。


「アカツキ・ヒカルだ。プレイヤー名じゃなくて実名だからな」


『へえ、という事はヒカル君か。よろしくね』


 戦いながら会話は進んでいく。

 会話するだけの余裕はまだ充分にある。


 チラッとレーダーを確認するとアーレンが奮闘しているのが分かった。

 反乱軍側も戦力を立て直しつつあるな。

 これならジェイドを抑えておけば大丈夫そうだ。


「どうしてお前は帝国に加担しているんだ?」


『当たり前でしょ。だって帝国には四大将軍がいるんだよ? あれに勝つのは無理だし。それなら帝国側についた方が正解だよ』


「FFOでは勝てるようになってたはずだ」


『それはたくさんのプレイヤーがゴリ押しすればの話だから。1人じゃ勝てないよ』


 ジェイドはそう言うと一旦攻撃を止めた。

 相手の出方が分からないので俺も攻撃を中断する。


『君も勝ち馬に乗ろうよ。帝国に来るなら僕が口添えしてあげる』


 四大将軍には勝てない。

 それは俺も思っていた事だ。


 目の前の男は俺を勧誘している。

 確かにそれは俺にとって最善の道なのかもしれない。

 ……しかし、今の俺にその申し入れを受け入れる事は出来ない。


「俺には仲間がいる。そいつらを裏切って帝国につくつもりはない。お前こそ、俺達につけ。俺達が組めば四大将軍に勝てるかもしれない」


『それは考えが甘いかな。僕は直に四大将軍を見たんだ。想像以上の化物だったよ。帝国と敵対していると必ず後悔することになるよ』


「……そうか。じゃあ話は終わりだな」


 俺は攻撃を再開しようとする。

 だが、ジェイドは予想外の提案をしてきたので攻撃を踏み止まる。


『ねえ、僕は出来れば君とは本気で戦いたくないんだ。ここは見逃してよ』


「……なんだと?」


『Sランクって言っても無敵の存在じゃないからね。出来れば実力の近い相手とは戦いたくないんだ。君だって勝率の低い戦いはしたくないでしょ?』


「それは……」


『それにヒカル君はこのまま帝国と敵対を続ければ将来、四大将軍と戦って負けるんだ。僕が必死になって戦う必要って無いと思わない?』


 こいつの話は自分本位だ。

 だが、ジェイドの言う通り勝てるか分からない戦いは出来れば避けたい。

 俺だって死にたいわけじゃないのだから。


「分かった。見逃すから早く行け」


『あはは。話の分かる人でよかったよ。それじゃまたどこかで会おうね。その時は手加減してくれると助かるかな』


 ジェイドはそう言うと背を向けて帝国軍の宇宙戦艦へ戻っていった。


 この後、反乱軍は帝国軍を押し返す事に成功。

 結果は辛勝であったがなんとか反乱軍は勝利を得たのであった。










 捕捉


 ブラックファイターの見た目

 ○トレイバーの○リフォンをイメージしてください

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