0004
外の宙賊を殲滅した俺とフィナは奴らのアジト内部を探索している最中だ。
アジト内部にはまだ宙賊が残っていたので残らず殺した。
その際に忌避感は特に感じなかった。
これは一度死んでいる事が原因だったりするのだろうか?
或いはこの世界をゲームの延長線上にあるものだと思っているからか?
……まあ、このFFOの世界は躊躇ったら死ぬ。
そういう世界に転生したんだからグダグダ考えても仕方ないか。
「アカツキ。ここのボスが使っていた部屋を見つけたわ」
「何かありそうだったか?」
「パソコンが置いてあったわ。何か情報があるかも」
「分かった。俺はハッキングツールを持ってるからパソコンを見てみよう」
俺達はボスが使っていた部屋に着いた。
そこにはフィナの言う通り1台のパソコンが置かれてあった。
早速ハッキングツールを使ってパソコンの情報を引き出す。
パソコンの中には驚愕の情報が入っていた。
「まさかあのコロニーで新型のコンバットフレームが開発されていたなんてな」
「これって軍事機密じゃないの? 何で宙賊なんかが知ってるのかしら?」
「さてな。そんな事より、この情報が正しいかどうかだ。もし本当なら王国の新型を帝国はすでに知ってる事になるぞ」
「手遅れになる前にギルドに報告した方がよさそうね」
「もうすでに手遅れのような気もするがな」
俺達はこの情報をコロニーに持ち帰り、冒険者ギルドへ報告したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
エリス・ティレット子爵が治めるコロニーには、国が秘密裏に作らせた軍事施設が存在し、そこでは新型のコンバットフレームが開発されていた。
この情報がどこからか宙賊に漏れ、ヴェルザーク帝国に流れていた。
「ギルドからの報告では、この施設は帝国に知られている可能性が高いそうです」
「そうですか。では帝国はすでに動いていると考えた方が良さそうですね」
ここはティレット子爵の城の執務室。
ティレット子爵が相対する女性は金髪青眼の美女だ。
ティレット子爵の言葉使いは上位の者に対するものであった。
それもそのはずでティレット子爵の目の前にいる女性は王女なのだ。
名前をセレン・ファレンシアという。
「バスターは4機とも完成していますが、セイバーは諦めるしかありません」
「上位機であるセイバーを諦めるのは残念ですが……」
「申し訳ありません。私の管理するコロニーで機密漏洩があったばかりに」
「……今は責任を問う暇はありません。至急、新型を運び出しましょう」
「分かりました。すぐに手配させます」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
秘密裏に建設された軍事施設。
そこには5機のコンバットフレームがあった。
施設は慌ただしくなっている。
宇宙戦艦に4機のコンバットフレームを搬入する作業の最中だからだ。
「情報通りありましたね」
「本当にこんな辺境のコロニーでコンバットフレームを作っていたなんてな」
「ジーク様の情報に間違いは無いさ」
「未完成の1機は無視だ。完成している4機を奪うぞ」
施設に侵入している帝国兵は、皇帝の懐刀と呼ばれるジーク・ローズ直轄の部隊で、帝国内ではルード隊と呼ばれている。
女性兵のエリーナ・ホーク。
エリーナの実弟であるクリス・ホーク。
ベテラン兵のランベル・シュルツ。
そして隊長のザクス・ルード。
ルード隊はこの4人で構成されている。
「では作戦開始だ」
ザクスが作戦開始の合図をする。
今回の作戦は新型コンバットフレームの強奪だ。
機体に乗り込み、未登録ならID登録して奪う。
登録済なら機体IDを消去してロストナンバーとして奪う。
そして強奪後はコロニー外に脱出。
その後、周辺宙域に潜伏しているステルス母艦と合流する。
これがヴェルザーク帝国の作戦であった。
ザクス達は一斉に発煙弾を投擲。
視界を奪ったところで一気に新型機に近付き、傍にいた兵士達を殺していく。
コンバットフレームに乗り込んだザクス達は素早く機体IDを確認した。
機体IDは未登録であった為、即座にID登録を済ませる。
新型機の強奪に成功したザクス達は施設を飛び出してコロニー内部を移動。
コロニーの緊急脱出口を目指す。
「ランベルはどうした? 失敗したのか?」
『ランベルが撃たれるところを見ました。恐らくランベルは……』
「くっ……この機体は必ず持ち帰るぞ」
『隊長! 敵のコンバットフレームが来ます!』
背後を見れば数機のコンバットフレームが追いかけてきていた。
しかし、まだ距離があるので逃げるのは容易だとザクスは判断する。
その判断は正しく、ザクス達は緊急脱出口まで逃げ切る事が出来た。
「クリス。お前の機体のロケットランチャーで脱出口の隔壁を破壊しろ」
『了解です』
クリスの乗る機体のロケットランチャーでコロニーの緊急脱出口に大穴が開く。
コロニー内の空気が宇宙空間に抜けていき、辺りが強風と騒音に包まれる。
『脱出口を確保しました。いつでも飛び出せます』
「よくやった。お前達は先に行け」
『了解しました』
『了解です』
ホーク姉弟が脱出するのをザクスは見送る。
それから追い付いてきたファレンシア王国の機体にビームランチャーを発射。
ファレンシア王国の機体を数機倒すとザクスもコロニーから脱出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
フィナと一緒に冒険者ギルドにいると建物の窓が震えた。
外を見ると空に巨大な物体があった。
コロニー内に宇宙戦艦が入ってきたのだ。
通常であればコロニー内は戦闘兵器の立ち入りを禁止しているそうだ。
空に宇宙戦艦が浮いている状況は異常な光景であった。
どうやら報告した情報をファレンシア王国は信じる事にしたらしいな。
あの宇宙戦艦で新型コンバットフレームを運び出す気なんだろう。
こんな大きなアクションをすればヴェルザーク帝国も何か行動に出るだろう。
ヴェルザーク帝国が動いた時に備えて舞姫七式に乗っておくか。
「俺は舞姫七式で宇宙に出る。緊急事態が起きるかもしれないしな」
もし本当に緊急事態が起こった場合、状況次第では逃げよう。
宙賊狩りの報酬や懸賞金はもらっているし、このコロニーに残る理由は無い。
「それなら私も行くわ。何かあればすぐに動けるように、でしょ?」
いや、そんなつもりで言ったわけじゃないんだが。
フィナに勘違いさせてしまったようだ。
まあ、誤解を解けばそれはそれで面倒な事になる。
本音は黙っていよう。
俺とフィナは宇宙港からコロニーを出た。
機体の補給は冒険者ギルドへ向かう前に整備員に任せていたので問題無い。
『コロニーの外は特に騒ぎになっていないわね。そっちで何か気付いた事はある?』
「レーダーにも敵影は無い。問題は無さそうだが……いや、待て」
『何か分かったの?』
「今、コロニーの外壁で爆発があった。コンバットフレームが外に出てくるぞ」
ズーム機能で爆発があった辺りを確認する。
そこには3機のコンバットフレームがいた。
あの機体はデュナンボースという名前だったか。
FFOだとCランクくらいの冒険者がよく乗っていた射撃戦の得意な機体だな。
デュナンボースの外見はフィナのラナンキュラスに少し似ている。
まあ、見た目が似ていても性能は全然違うのだが。
「3機のコンバットフレームが逃げていくな」
『あのコンバットフレーム見た事がないわ。あれが新型なんじゃないの?』
フィナもズーム機能で逃げていくコンバットフレームを見たのだろう。
フィナはデュナンボースを見た事が無いらしい。
この世界じゃデュナンボースはまだ市場に出回っていないのかもしれない。
「ステルス尾行してみるか?」
『そうね。あいつらがどこに向かうのか知りたいわ』
俺とフィナはステルス尾行で3機のコンバットフレームを追いかける。
暫くコンバットフレームを追跡するとステルス母艦を見つけた。
3機のコンバットフレームはその母艦に入っていく。
『あれってどこの所属なのかしら?』
「たぶん帝国だろうな。そうなら宙賊の持ってた情報に合致する」
『……今なら奇襲出来るんじゃない?』
「馬鹿な考えはよせ。俺達が攻撃したらコロニーに迷惑がかかるぞ」
口ではそう言うが、本音はヴェルザーク帝国と争いたくないのだ。
もしヴェルザーク帝国と戦う事になったら最終的に四大将軍とも戦わないといけなくなる。
あいつらを相手にするのは流石に俺1人じゃ厳しい。
だから俺はヴェルザーク帝国には手を出さないぞ。
『……コロニーを攻撃した相手をみすみす逃がすなんて』
フィナは悔しそうにしている。
気持ちは分からなくもないがここは堪えてもらうしかない。
ステルス母艦はコンバットフレームを回収するとすぐに去っていった。
俺とフィナはそれを黙って見つめていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
コロニーが襲撃されて数日が経過した。
ファレンシア王国は新型コンバットフレーム(俺にとっては新型じゃないが)を奪われた件について市民には事実を伏せる事にしたようだ。
まあ、余計な混乱を避ける為だろう。
それに関して俺が言う事は特に無い。
数日の間に俺はこのコロニーを離れる準備をしていた。
軍事施設があると判明した以上、ここが戦場になる可能性は高いからな。
俺はヴェルザーク帝国とは戦いたくない。
だから他国に行く事にしたのだ。
「……フィナはいないか」
コロニーを去る当日に俺は冒険者ギルドを訪れた。
フィナにさよならの挨拶をしておきたかったからだ。
しかし、フィナの姿はどこにもなかった。
仕方ないのでギルド職員に言伝を頼んで俺は冒険者ギルドを出た。
そして宇宙港で舞姫七式に乗り込み、コロニーを出発した。
このまま他国へ直接向かいたいところだが、実際はそうもいかない。
というのも他国とは距離があるため通常航行では行き来出来ないのだ。
国を跨ぐ移動にはジャンプドライブを搭載した宇宙船で運んでもらう必要がある。
コンバットフレームにジャンプドライブは搭載出来ないからこれはどうしようもない。
コンバットフレームを載せて運べる大型輸送船が停泊するコロニーは少ない。
俺が目指しているのはそんな数少ないコロニーの内の1つだ。
ちなみにコロニーの名前はセントレアという。
道中は宇宙怪獣の群れに襲われている冒険者を助けた。
助けた冒険者の名前はショウ・クウェル。
セントレアで活動しているそうなので道案内を頼んだ。
セントレアまで5時間の旅だった。
流石に5時間の操縦してると疲れも溜まってしまうな。
『アカツキさん。機体から降りたら一緒に食事しませんか。良い店を知ってますよ』
「そうだな。俺も腹が減ったしそうしよう」
ショウに誘われたので一緒に食事を食べる事にした。
でもその前に宇宙港に着いたら舞姫七式を整備員に預けた。
補給と整備をしてもらう為だ。
コンバットフレームの整備に関しては、ダメージさえなければナノマシンのおかげでほぼメンテナンスフリーなのだが念の為にやってもらう。
舞姫七式はかなり特殊な機体なので整備員は整備に四苦八苦していた。
まあ、苦労するのも勉強だと思って頑張ってくれ。
舞姫七式を預けたらショウと合流。
そのまま街を移動する。
「ここは人が多いな」
「ファレンシア王国の辺境で最も栄えているコロニーですから」
「そうなのか」
何気ない話をしながら目的の料理屋に辿り着いた。
そこで食べたハンターフィッシュのスパイス焼きは絶品だった。
「アカツキさん。今回は本当に助かりました。あの場にアカツキさんがいなかったら僕は今頃死んでいたでしょう」
食事が終わるとショウはそう言って深々と頭を下げた。
そんなに感謝しなくてもいいんだけどな。
俺としては気紛れで助けたんだから。
「クエスト報酬は全額アカツキさんに渡します。どうか受け取ってください」
「それだとお前の機体の修理費が無いんじゃないか?」
「それは自分の責任なのでアカツキさんは気にしなくてもいいですよ」
「……いや、俺は宇宙怪獣の死体売却で金が手に入る予定だ。依頼報酬は受け取れない。報酬は貰える時に貰っておけ」
「ですが……」
「まずは自分の事を考えろ。本当は余裕無いんだろ?」
「……分かりました。アカツキさんの言葉に甘えさせてもらいます」
ショウは渋々といった感じで引き下がった。
しかし、どこか納得がいかないといった顔をしている。
そんなショウを見て俺は肩をすくめるのだった。
捕捉
デュナンボースの見た目
○ンダムの○ェスタをイメージしてください
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