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 スペースシャークを討伐した俺はフィナと共にコロニーに戻ってきた。


 今は回収したスペースシャーク(舞姫七式には戦利品を自動回収する機能がある)の死体の売却とクエストの達成報告をしている最中である。


 今回はビームサーベルで仕留めた個体が多かったので死体の質は良い。

 飛び道具で撃破したら死体が吹き飛んで価値が下がってしまうからな。


「スペースシャーク10体を1人で倒したのですか?」


 クエストの報告をするとギルド職員が信じられないといった風な顔をした。

 スペースシャーク10体を一度に相手にするのはこの世界では非常識らしい。


「戦闘データを確認すれば事実である事が分かるはずです」


 俺は舞姫七式の戦闘ログへのアクセスを許可した。

 それを見たギルド職員は暫く沈黙した後、ゆっくりとこちらを見た。


「……確認しました。報告は正しいものであると判断します」


「なら、これからは同伴者なんて付けないでください。俺は1人で大丈夫です」


「その通りですね。今後は同レベルのクエストは1人で受ける事を認めます」


「もっと難度の高いクエストも1人で問題無いですよ?」


「……それはまた精査させていただきます」


 ギルド職員は少しだけ迷ってそう答えた。

 まあ、今は少しだけ譲歩を引き出せただけ良しとするか。


「それでは今回のクエストは達成という事になります。報酬は後日送金という形になりますが、報酬は全額等分で構いませんか?」


 俺はそれで構わないと頷く。

 しかし、それにフィナが待ったをかけた。


「私は同行しただけで何もしてないわ。調査報酬だけ等分にして」


 フィナはスペースシャークの討伐報酬と素材売却で得た金はいらないようだ。

 冒険者として金に関してはきっちりしておきたいのだろう。


 だが、俺は独断専行したからな。

 結果はどうあれフィナに迷惑をかけている。

 だから迷惑料代わりに報酬は受け取ってほしいのだ。


「今回は俺の独断専行でフィナに迷惑をかけた。だから、迷惑料代わりに報酬を全額等分にするという形じゃ駄目か?」


「……まあ、アカツキがそう言うなら断る理由も無いわ。ありがたくもらっておくわね」


 フィナはあっさりと引き下がった。

 俺としてもこんな事で言い争うつもりはなかったので良かった。


「では、報酬は全額等分で送金させていただきますね。よろしいですか?」


 ギルド職員が確認してきたので「問題ありません」と言う。

 これでスペースシャークの件については完全に終わったな。


「それじゃ私はまだ余裕があるし他のクエストを受けるわ。アカツキはどうするの?」


「じゃあ俺も付き合うよ。フィナがそれでいいのなら、だけどな」


「あなたみたいな強い冒険者と一緒にクエスト出来るなら心強いわ。それじゃ引き続きよろしくね」


 俺とフィナは続けてクエストを受ける事にした。

 選んだクエストは宙賊狩りだ。


 クエスト内容は最近宙賊が頻繁に現れる宙域の調査。

 それから可能であれば宙賊の殲滅だ。


 このクエストは別の冒険者がキャンセルしたものらしい。

 事情を聞くとパーティーメンバーの都合が合わなくなってしまったようだ。

 そのパーティーは違約金を払う事になったらしいが……俺には関係無い話だな。


 クエストを受けた俺とフィナは、宇宙港に戻って機体の推進剤を補給。

 それからコロニーを出発した。


 目的の宙域には2時間くらいで辿り着いた。

 着いた宙域はデブリの多い場所だ。

 ここなら宙賊も身を隠しやすいだろうな。


『どうする? 別れて宙賊を探す?』


「いや、ここは俺の舞姫七式のレーダーで探す」


『探すって……ここはデブリも多いわ。本当に探せるの?』


「任せろ。俺の舞姫七式に見つけられない敵はいない」


『……つくづく規格外なのね。あなたの機体って』


 驚いているフィナは放っておき、レーダー機能を最大にして宙賊を探す。

 すると早速宙賊らしきコンバットフレームを見つけた。


「宙賊らしきコンバットフレームを見つけた。これから尾行するぞ」


『尾行って……レーダーに捉えてるならそんな事する必要無いでしょ?』


「いや、試したい事がある。ステルス尾行だ」


『ステルス尾行? 何それ?』


 ステルス尾行とはFFOで一時期流行った戦法だ。

 ステルスバリアーという装備を使えば誰にでも出来るのが流行った理由だな。


 メリットはレーダーを掻い潜って敵に接近する事が出来る。

 デメリットはステルスバリアー展開時にエンジンを停止しないといけない。


 俺の舞姫七式はステルスバリアーを装備している。

 それに大容量バッテリーを備えているのでエンジンを停止しても動けるのだ。


「ステルス尾行をすれば相手に察知されないで近付くことが出来る。ここは俺を信じてコンバットフレームのエンジンを止めてくれ」


『うーん……大丈夫かしら』


 フィナは半信半疑なようだ。

 まだ出会って間もないわけだから信じろと言われても困惑するか。

 それでも俺の言う通りエンジンを切ってくれたのでフィナは素直だな。


「よし、じゃあ移動するぞ。フィナの機体は引っ張っていくからな」


『え? アカツキの機体もエンジンは止めてるのよね? 何で動けるの?』


「俺の舞姫七式はステルス尾行を出来るようにカスタムされてるからな」


 俺は舞姫七式のステルスバリアーを大きめに展開する。

 これで俺とフィナの機体はレーダーに映らなくなった。


 宙賊はのんびりとした動きで移動していたのですぐに見つけた。

 動きから察するに俺達は宙賊の機体のレーダーに表示されていないようだ。

 どうやらステルス尾行はこの世界でも有効らしい。


 宙賊の跡を追うと簡単にアジトを発見出来た。

 宙賊は小惑星に拠点を作っていた。


『こんなに呆気なくアジトを見つけられるなんて思ってなかったわ。やったわね。早くコロニーに戻ってギルドに報告しましょう』


 フィナはそう言うが俺はこの獲物を他の冒険者に渡すつもりはなかった。


「報告するのは無しだ。このまま攻める」


『そんな無茶よ! 相手の数だって分からないのに!』


「楽勝だよ。俺が攻撃するからフィナは逃げる機体を足止めしてくれ」


『ちょっと待ちなさいよ!』


「いくぞ。エンジンを起動しろ」


 俺は舞姫七式のエンジンを起動させてステルスバリアーを解除する。

 フィナも少し遅れてラナンキュラスのエンジンを起動した。


 一応、尾行していたコンバットフレームをスキャンしてみる。

 機体IDは無い……つまりロストナンバーだ。

 つまり、目の前の機体は宙賊で間違いない。


「武装転送。TYPE-BRα」


 舞姫七式の右手にTYPE-BRαが転送されたのを確認してから、すぐさま宙賊のコンバットフレームを撃ち抜いた。


 当然、宙賊のコンバットフレームは爆発。

 すると宙賊のアジトから続々とコンバットフレームが姿を現す。

 こいつらもスキャンしてみたが全てロストナンバーだった。


「足止めは頼むぞ」


『……はあ、仕方ないわね。死んだら恨むわよ』


 フィナのため息を聞きながら、俺は舞姫七式を前進させる。


 宙賊は連携もせずに我先にと突撃してくる。

 数で押せば勝てると思い込んでいるのだろう。

 それは間違いだと教えてやらないといけないな。


 俺は冷静に近くにいる宙賊から処理していく。


 TYPE-BRαのビームが1つ、また1つとコンバットフレームに命中する。


 現れた宙賊の機体は全部で20機くらいだった。

 まあ、5分も経たずに半分になったが。

 訓練された軍隊じゃなければこんなものだ。


 流石に半数がやられれば宙賊も士気を保っていられないようで、何機かは戦場から逃げ出そうとしたが、全てフィナが足止めしてくれたので問題無く処理出来た。


「殲滅出来たか?」


『どうかしら……まだアジトに残ってる奴がいるかもしれ――!?』


「フィナ!」


 アジトから出てきたコンバットフレームがフィナのラナンキュラスを撃った。

 フィナはシールドでその攻撃を防ぐ。


『やってくれたわね! お返しよ!』


 フィナのラナンキュラスがビームライフルで応戦するが当たらない。


 動きが今まで狩ってきた宙賊とは別物だ。

 それにあのコンバットフレームは他の機体よりもカスタムされているようだ。


「どうやらあいつがここのボスらしいな」


 俺はすぐにフィナの援護に入る。


 TYPE-BRαを撃つが敵機は大きく旋回する事で回避した。

 だが、この攻撃で相手の注意を俺に向ける事は出来たはず。


『アカツキ! 援護するわ!』


「分かった。無茶はしてくれるなよ」


 2機で敵機に迫る。


 敵機はラナンキュラスの攻撃をシールドで防ぎ、舞姫七式の攻撃は避ける。

 どっちの攻撃が危険か分かっているな。


「動きの良い相手は弾幕を張るに限るか。武装転送。TYPE-BRβ」


 俺の声に反応して舞姫七式の左手に銃が現れた。


 TYPE-BRβはTYPE-BRαと違って威力よりも連射性を高めたビームライフル。

 これなら相手を捉える事が出来るだろう。


 舞姫七式が射撃を開始。

 放たれるビームの雨が敵機を襲う。


 TYPE-BRβのビームの弾幕を前に敵機は回避を選ぶ。

 しかし、いつまでも躱せるものではない。


 それは向こうも考えているようで、シールドを捨てて身軽になる。

 そしてビームサーベルを構えて突っ込んできた。


『やらせないわ!』


 フィナのラナンキュラスがビームライフルを撃つ。

 敵機はフィナの攻撃を回避せずに攻撃を優先した。

 俺を倒せればフィナはどうにでもなると考えているんだろう。


『止められない……! アカツキ!』


「大丈夫だ」


 敵機がビームサーベルを振りかぶり、そして振り下ろした。

 普通のコンバットフレームならこれで両断されていてもおかしくはない攻撃だった。


 だが、俺の機体は舞姫七式。

 この美しい美女に傷を付けるにはお前は力不足だ。


 舞姫七式の湾曲フィールドが敵機のビームサーベルを捻じ曲げる。


 敵機の動きが明らかに鈍った。

 その隙は致命的だな。


 舞姫七式がTYPE-BRαのトリガーを引く。

 敵機は躱すことが出来ずにビームに撃ち抜かれて爆散した。


 こうして宙賊は壊滅したのだった。


「これでクエストは完了だな」


『全く……無茶はしないでよね。こっちの身が持たないわ』


「この程度、無茶には含まれない」


『そんなのあなただけよ』


 フィナは呆れ顔がモニターに映った。

 それを見た俺は苦笑するしかなかった。










 捕捉


 TYPE-BRβの見た目

 ○ルゴ13が使ってるアサルトライフルをイメージしてください

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