第9話 整形

 私が住んでいる所は、高級住宅街だ。金持ちは美人の奥さんを好む。特に成金タイプ。一見まともそうな人でも、奥さんがある程度年を取ったら離婚して、若い奥さんに乗り換えるというのがすごく多い。お金があれば、男の夢を実現するのはたやすい。


 私のティールームのお客さん、小岩さんもそんな若奥様の一人。旦那は50代で、奥さんはまだ28くらいだ。実家が貧乏で高卒だけど、イベントコンパニオンをしていた時に、旦那さんと知り合ったそうだ。こういう人だから、周りの奥様達とは話が合わない。子どもを幼稚園に預けて、他の人たちはママ友とランチをしたりしてるけど、そういう場所は苦手だからと私のティールームに頻繁にやってくる。


 彼女はぱっと見スタイルがよくてモデルみたいな美人なんだけど、顔にちょっと違和感がある。目元が不自然。


「もしかして、整形なさってる?」

「あ、わかっちゃいました?目を二重にしたんですけど、糸がちょっと切れちゃって。左右対称じゃなくなっちゃったんです」

「あら、じゃあ、早く美容整形に行かなきゃ」

「そうですよね。これから行きます」

 小岩さんは笑った。


 小岩さんの子どもと同じ幼稚園のお母さんが、私のお客さんにいる。

 その人に私は言った。

「小岩さんって目を整形してるんですって!」

 幼稚園ではこの話題で持ちきりだろう。

 でも、本人は友達がいないみたいだから、きっと噂に気が付かないだろう。ちょっと愉快だ。

 

 ***


「この間、子どもが言ってたんですけど、他の子から『〇〇ちゃんのお母さんって整形なんでしょ?』って聞かれたって言うんです。いつの間にかばれてて・・・」

 一月後に小岩さんに会った時、ちょっと表情が沈んでいた。

「お医者さんから見ると整形ってわかるみたいだからね。まあ、仕方ないんじゃない?整形なんてみんなしてるわよ!私はしてないけどね」


 小岩さんは、整形がばれたことをきっかけに、あまり人前に出なくなって、その後は私のティールームにも来なくなった。予約取りたい人は山ほどいるんだから、私は全然かまわない。噂では駅前の診療内科に通っているとか。まあ、分不相応な結婚がまずかったんじゃないかと思う。自分と似たようなタイプの人と結婚してたら、ママ友ができて楽しく過ごせたんじゃないかしら・・・。身の程知らずってところよね。ふふふ。

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