第7話 発達障害 山村さん

1月某日。


最近、発達障害はすごく多い。学童期には10人に1人くらいいると言われている。実際はもっと多いんじゃないかと思うくらいだ。東大生の2人に1人は発達障害と言ってた東大生もいた。東大の人と合コンしたことがあるけど、自慢話を一方的にしてくる。要領のいい女は「すごいね~」と褒めるし、やつらはモテモテだから自分がおかしいと気が付かない。周りも似たいような感じだから、普通だと思っている。


発達障害の特徴はコミュニケーションが苦手なこと。それがないと、発達障害じゃないと言われる。


ごみ屋敷みたいな所に住んでても、コミュニケーション能力は普通の人もいるから、診察などではわからない気がする。人間誰しも発達障害的な要素を持っているらしい。集中できない、時間を守れない、忘れ物が多い、片付けが苦手、勉強が苦手、コミュニケーションが苦手というのは、普通の人でもありえることだ。


先日、大学生の子がやって来た。〇〇大学の山村さん。いい大学に通っていると、世間のやっかみもあっていじめに遭うことが多い。高校時代までいじめられていたそうだ。勉強していない人にとっては鼻につくんだろう。私はいじめ容認派だ。いじめは絶対になくならない。集団があると、そこには必ずスケープゴートがいて、その人を攻撃することで人々は結束する。誰かいじめに遭っている人がいれば、自分は遭わないという安心感にもつながる。


山村さんは大学に友達がまったくいないそうだ。自分に近づいてくるのは、利用しようとする人だけ。あとは、体目当ての不細工な男子学生だけだ。いつも一人でいると、学校にいるのがしんどいらしい。


「もう、大学なんかやめちゃえば?」

「でも、親が学費を払ってくれているし」

「今のままだと精神病になっちゃうよ。そこまでして、大学行く必要ってないんじゃないかな」


 人に相談すると、大体はその人がダメになる方向に行かせようとする。だから、相談する時は、相手を選ばないといけない。私はエリートが嫌い。やつらが転落していくところを見たい。


***


 それから数日して、また山村さんがやって来た。


「期末試験受けませんでした・・・これで留年します」

「留年してどうするの?」

「わかりません」


 山村さんはさらに大学に行きづらくなったと思う。エリートが落伍していく様を見るのは気分がいい。


***


 それから、1ケ月後。


「久しぶりに外に出ました。外に出るのが怖くて・・・」

「あら、いいんじゃない。家にいて好きなことをしてれば気分もよくなるでしょ?」

「でも、それだと世間に置いて行かれるみたいで・・・」

「いいじゃない。あなたまだ若いんだし。少し休んだ方がいいわよ」


「友達も誰もいないし・・・生きてても仕方ない気がして」

「あら。私もそうなの。友達が一人もいなくて、家族もいないから、何で生きてるのかなっていつも思うのよ。あなたご両親とはうまくいってるの?」

「いいえ。全然・・・連絡取っていなくて」

 彼女はド田舎の出身。そんなところから有名大学に行く人は珍しいし、いたら地元では秀才と有名なはずだ。

「で、学費は払ってくれるんだ」

「はい・・・でも、試験受けなかったから・・・どうなるか。きっと怒られると思います」

「いいじゃない。怒ったからっていっても、謝ればいいのよ」

「謝って許してくれる親じゃないし。仕送り止められちゃう・・・私が留年するって知らないので」

「じゃあ、試験受けるべきだったわね」

「はい・・・でも、受ける気力がなくて・・・」

「もうやめる覚悟した方がいいわね。学校」

「はい・・・でも、そしたらどうやって生きて行ったらいいかわかりません。私、外にも出れないので・・・」

「ホームレスって手もあるんじゃない?」

「え?」

「いいじゃない。自由で。外にいたらお金もいらないし」

「でも、全然お金がなかったら、スマホも持てないし・・・」

「そういう時は、空き缶を拾って売りに行ったらいいのよ」

「えぇ!」

 一度もバイトしたこともないっていうし、そのくらい苦労してみたらいいのよ。

「それだけでも生活できるわ」

「はぁ・・・」

 

 女性の路上生活は危険だ。おばあさんでない限りは、男のホームレスからレイプされるのは目に見えている。

 でも、そんなの私には関係ない。


「スマホなんか持ってても仕方ないんです。友達いないんで。誰も連絡してくる人がいないから。解約しちゃいます」


***


 山村さんからLineが来た。『もう、解約するのでLineできなくなります。最後に先生に連絡しました。これから、〇〇ビルから飛び降りて死のうと思います。先生、ありがとうございました』


 私はもちろん警察に連絡しない。

 本当に死ぬ気の人を止めることはできないからだ。エリートが一人この世からいなくなったら、他の人にチャンスが回って来るんだから、別にいいんじゃないだろうか。




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