第6話 プロポーズ待ち

 12月某日日PM2:30


 女性。工藤さん。40歳。40なんておばさんだと思っていたけど、自分が55にもなると、若いと感じるから不思議だ。

 この人は、彼氏からのプロポーズを待つべきか、それとも新たな出会いを探すべきか迷っているらしい。


「彼がなかなかプロポーズしてくれなくて」

 こういう相談は私で何人目だろうと思う。自分でも答えが出せないまま、同じ相談を延々と続けているんだ。

「彼氏いくつ?」

「同い年です」

「どのくらい付き合ってるの?」

「8年」

「え、そんなに!?」もう、ダメなんじゃないの?思わず言いそうになるけど、我慢する。

「はい。最初の頃は結婚の話が出てたんですけど、最近はもう全然で」

「何かプロポーズできない理由があるの?」

「彼の仕事が忙しいのと、お母さんが末期がんで・・・大変なのはわかるんですけど、私もそんなに若くないので」

「あ、そう・・・大変ね。でも、会ってるの?」

「大体毎週」

「他に女がいるんじゃない?」

「でも、土日はほとんど一緒なので、それはないと思います。それに、お母さんのお見舞いにも一緒に行っているし・・・ほとんど奥さんみたいな感じなんですけど、それでもプロポーズしてくれなくて」

「あなたの存在に甘えてるのよ。あなたいくつ?」

「40です」

「その年だったら、もう後がないから、早く結婚相談所にでも行けば?」

「そ、そうですよね。でも、彼と別れないでってことですか?」

「二股でもいいと思うけど、いっそのこと別れて、新しい人を探せば?」

「そうした方がいいしょうか?」

「そうよ。結婚相談所に行くと、結婚前提にっていう人がいっぱいいるわよ」

「わかりました・・・」


 ***


 それから一週間後。工藤さんがまた来た。

 マスクの下に青あざができていた。

「大丈夫?」

「彼氏に結婚してくれないなら、結婚相談所に行くと言ったら殴られました・・・。俺がこんなに大変な時に、何考えてるんだって・・・」

「よかったじゃない。暴力をふるうような男とは今すぐ別れた方がいいわ」

「でも、彼が大変なのはわかってるんです。それに、その後は土下座して謝って来て。そんなに言うなら、籍入れようって言うんです。元々暴力ふるうような人じゃないんです。私も悪かったと思ってて」工藤さんは泣きじゃくった。

「そんなの振った方がいいわよ。暴力ふるうような男は絶対またやるわ」


 ***


 それから2週間後、工藤さんからLineがあった。


『彼氏が自殺しました。私と別れるくらいなら死ぬと言って・・・あなたのせいです。取り敢えずそれだけお知らせしたくて』


 映子は満足げに笑った。

 今日もカクヨムのネタができたわ。

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