第064話 色々買う
フィリアの部屋に泊まった翌日、俺は朝からフィリアと出かけている。
家具を見たりしながら店を回っているのだ。
前に市場調査をした時はあったが、家具屋なんかは初めて来た。
店を回って気付いたのは木製の品が多いことだ。
それも結構、良いやつ。
フィリアに聞くと、大森林では大量に木を切れるし、上質な木も多いらしい。
中にはそれ専門の冒険者もいるようだ。
でも、そいつは冒険者じゃなくて、木こりだろとは思った。
今、家具屋で店の裏の倉庫みたいなところに案内されたフィリアは自分用のベッドを見ている。
「新しいのを買うんだよな? 今までのやつは?」
「基本的に部屋にあるのはそのまま置いていくよ。新しい修道女が来たら譲るだろうし、孤児の子もいるからねー」
人が多そうだもんなー。
「どれにしようかね?」
ベッドは色んなサイズが並んでいる。
「うーん、普通だったらこのくらいでいいんだけどねー」
フィリアはシングルサイズのベッドを指差す。
「部屋が結構、広いし、このくらいがいい思う」
俺はクイーンかキングかはわからないけど、大きなベッドを指差した。
「大きすぎない? 2人で寝ることを考えれば大きい方がいいとは思うけど…………あー、そういうことか…………」
俺が何のためについてきたんだと思ってるんだ!
「何があるかわからんし、これにした方がいい。占いでもそう出てる」
「リヒトさん、その言い回しが好きだね。良いことがあるのは自分でしょ。うーん、え? ホントに?…………」
「そういうことは置いておいても一緒に寝ようよ」
「うーん、流される予感がするなー……ヘイゼルさんがアレだもん」
アレだもんねー。
「お前の部屋って他に何かを置くのか?」
「本と机くらいかなー。あとは服」
「余裕、余裕」
「うーん、まあ、旦那様に従っておくかー……」
いいと思う!
稼ぐから!
お前の好きな金貨と1万円をいっぱい集めるから!
フィリアは渋々、大きめなベッドを購入し、配達してもらうことにした。
屈強なマッチョが二人がかりで持ち上げ、運んでくれる。
「ここでいいですかい?」
ヘイゼルの家に着き、マッチョAがフィリアの部屋にベッドを置くと聞いてくる。
こいつら、息がまったく切れてねー……
「ありがとうございます」
「いえいえ、また何かあれば、言ってください。では、これで失礼します」
マッチョは非常に丁寧な対応で去っていった。
「マッチョばっかだなー」
俺は玄関でマッチョ2人を見送り、その後ろ姿を眺めながらつぶやく。
「まあ、木を切ったり運んだりする職業だし、力はいるでしょ」
「お前、筋肉好き?」
「お願いだから対抗して鍛えようとしないでね」
よし、日課の腕立て伏せ30回をやめよう。
正直、飽きたし。
俺とフィリアは玄関から戻り、フィリアの部屋を見た。
「大きいベッドだけど、それでも広い部屋だねー」
フィリアが部屋全体を見ながら言ってくる。
「まあなー。これから物を揃えていくかねー」
「だねー」
俺はソファーが欲しいが、あれこそ重そうだなー……
「あ、2人共、ベッドは買った?」
ヘイゼルが隣の部屋から出てきた。
「あれ」
フィリアが部屋に置かれたベッドを指差す。
「おー! 良いのを買ったねー。実家のベッドもあのくらいだったわー」
さすがは貴族。
豪華な暮らしをしていたらしい。
「あんぐらいがいいよな?」
「うん。そう思う」
ヘイゼルは何も迷わずに頷いた。
「ほら?」
「…………この人、意味わかってるのかな?」
わかってるよ。
魔法学校に通っていた才女であるヘイゼルちゃんだよ?
「まあまあ。片付けは終わったん?」
この部屋を見る限り、ヘイゼルの私物はないが、一応、ヘイゼルに聞いてみる。
「大まかだけどねー。とりあえず、この部屋は空けたから好きにしてよ」
「わかった。ヘイゼルさん、ありがとう」
「うんうん」
仲良くしてね。
「まずは向こうの世界でマットレスを買わないとなー」
「帰るか? 充電期間はとっくに過ぎてるけど…………」
今は昼前だし、向こうは朝方って感じかな?
多少、早い気もするが、どうせ、風呂に入ったりするし、ちょうどいい時間になると思う。
「私は良いけど、ヘイゼルさんは?」
「あー、私も買いたいものとかあるし、帰りたいなー。リヒトのご両親は戻ってるかな?」
「さすがにまだだと思う。もうちょっとかかるかな」
海外だし、すぐには帰ってこれないだろう。
「そっかー。じゃあ、買い物して戻ってくる感じ?」
「そうするか」
「よーし! 帰ろう!」
俺達はあっちの世界に帰ることにし、身を寄せ合う。
そして、アプリを起動し、もう慣れてきたぐるぐる画面を見た。
◆◇◆
帰って来た俺達はフィリア、ヘイゼル、俺の順番でお風呂に入り、昼食(朝食)のパンを食べると、ソファーで酒を飲みながら休んでいる。
「やっぱソファーを持ち込みたいなー」
俺はソファーで酒を飲みながら女2人を侍らし、王様気分でつぶやいた。
「まあねー。でも、これは私の収納魔法では無理よ。もうちょっとサイズが小さいやつなら大丈夫」
ウチのソファーはL字のでかいやつだ。
さすがに収納魔法も無理だし、持つの無理。
「小さいとは言わんけど、3人で座れるくらいがいいなー。買いに行くかねー」
「私もマットレスが欲しいし、行こうよ」
「だなー。まだ8時だから店が空いてないけど、少し、休んだら出かけよう」
「そうしよう!」
9時過ぎに準備を始めればいいかな?
他にも買うものがあるし、今日は1日買い物だろうなー。
大変だけど、こればっかりは仕方がないし、わくわくもする。
「そういえば、領主様はどうだった?」
ヘイゼルは昨日、領主様のところに仕事に行っていた。
「いつも通りだから特に問題はないわね。まあ、ここの領主様は周りの領主とも良好な関係を築いているらしいし、大丈夫でしょー。あ、でも、リヒトに一度会いたいって言ってた」
あの美人かー。
「何の用?」
「ほら、この前の依頼のやつ。褒賞金をくれるってさ。あとはちょっと話を聞きたいらしい」
おー、そういえば、金をくれるってガラ悪マッチョも言ってたな。
「俺1人? お前は?」
「うーん……奥様もどうぞって言われたし、フィリアかな?」
「いや、どう考えてもヘイゼルさんでしょ」
両方だと思う。
「押し付け合いをするなっちゅーに。あの時の依頼だし、俺とヘイゼルで行くよ。いつなん?」
「色々と忙しいでしょうし、いつでも構わないとは言ってたわね。まあ、それにしても早いに越したことはないから帰ったら行く?」
貴族を待たすのはやめた方がいいし、もらえるものはさっさともらっておくか。
「そうだな。帰ったら顔を出しに行こう」
「私はアンナとミケの仕事を手伝おうかなー」
留守番のフィリアは冒険者の仕事をするらしい。
「いいと思う。ついでにミケに焦らなくても大丈夫って言っといて」
「何か見えるの?」
「うんにゃ。見てないから知らないし、気休め。こういうのは焦ってもいいことはないからなー。ミケはかわいいから大丈夫だよ」
猫だもん。
かわいい。
「ミケが好きだねー」
「あいつ、からかうとおもろいよな」
「昨日、リヒトさんがアンナと出ていった後、まだ間に合うよって言われた」
「よーし! 海に落ちたのが実は2回なことを皆にバラそ」
猫め!
フィリアがマリッジブルーとかになったらどうすんだ!
俺達はその後、9時になると、買い物に出かけ、マットレス、ソファー、鏡、あっちでの生活用品などを買った。
もちろん、フィリアとヘイゼルは服屋を見に行きたいと言ったから付き合ったし、食料品なども買い込んだため、帰った頃には夕方の5時を過ぎていた。
マットレスやソファーは大きくて持って帰れないので配達を頼んだ。
明日の午前中には配達されるように頼んだため、あっちの世界に戻るのはそれ以降となるだろう。
俺達は家に戻ると、フィリアが作ってくれた夕食を食べ、まったりと過ごす。
ヘイゼルがどうしても3人でトランプをしたがったため、付き合ってあげたり、フィリアの為に色々と翻訳したりと楽しんだ。
そして、翌日、届いたマットレスとソファーをリビングまで運び、見ている。
「ヘイゼル、入るか?」
俺はマットレスとソファーを見比べた後にヘイゼルに聞く。
「無理。ソファーはいけると思うけど、今は他の物が入ってる。マットレスは無理」
うーん、どっちかを諦めるか……
「ソファーは次にするかなー? 優先すべきはマットレスだろうし」
ヘイゼルの家にもテーブルと椅子はあるので座ることはできる。
でも、マットレスがないとフィリアが眠れない。
「いいんじゃない? 急ぐことでもないし」
まあ、それもそうだなー。
ゆっくりでいい。
「せっかくベッドを買ったし、マットレスを敷いてみたいかも…………」
その気持ちもわかるわ。
買ったばかりの物は試したい。
「じゃあ、マットレスにしよう。えーっと、持てるか?」
俺はフィリアの身長よりも大きいマットレスを縦に上げてみた。
「5秒ね。合図をちょうだい!」
5秒なら持ち上げれるらしい。
というか、よく考えたら持ち上げなくても転移できるかもしれんな…………
「ヘイゼル、ちょっと検証したいからソファーに触っててくれる?」
「こう?」
ヘイゼルは俺の腕を掴みながらソファーに触れる。
「そうそう。フィリアー、大丈夫かー?」
「いっせーので、でお願い!」
大丈夫かな……?
人のことを言えないけど、フィリアって、マジで力が弱いからなー……
「じゃあ、行くぞー。いっせーので!」
「んんー!」
フィリアが俺の腕を掴みながら片手で頑張って持ち上げ、かつ動画を見るという高度なことをしていると、視界が真っ白に染まった。
ホント、大丈夫かな……?
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