第056話 今後は?
俺とフィリアとヘイゼルは日本に転移した。
3人で日本からあっちの世界に転移したことはあるが、あっちの世界から日本に転移したのは初めてである。
だからどうということはないが、なんとなく、この2人と結婚するんだなーと思えた。
俺達は帰還すると、風呂に入ることにした。
最初はフィリアだった。
今、フィリアが風呂に行っており、俺とヘイゼルはソファーに座ってお茶を飲んでいる。
お酒は全員が風呂から上がった後だ。
「お前、さっきのはないぞ」
俺は転移直前のヘイゼルの発言を責める。
「悪かったわよ。でも、あんたがふざけるからでしょ」
「俺はいつもふざけてるじゃん」
「いや、それが悪いんじゃない?」
まあ、そうとも思う。
「8対2くらいかな……」
もちろん、ヘイゼルが8で俺が2。
「えー、6対4くらいだと思うなー」
実は俺もそのくらいかなと思ってる。
「これは罰だな。これ、ヘイゼル、こちらに来なさい」
「それが言いたかっただけでしょ。しょうがないなー」
ヘイゼルはやれやれといった感じで身を寄せてくる。
俺はそんなヘイゼルを抱きしめた。
「…………ヘイゼル、好きだ。俺と結婚してほしい」
「あー……あんたらが来るのが遅かった理由がわかったわ」
まあ、フィリアのじいさんと話しているだけにしては時間がかかりすぎてたからね。
「まあまあ。2人も娶って悪いとは思う」
「別にフィリアならいいわよ…………ねえ? たとえ、死しても私を守ってくれる?」
多分、これはロストの風習だろうな…………
母親が父親に聞いているところを何回か見たことがある。
夫婦喧嘩して仲直りする時だ。
見たくはなかったけどね…………
「絶対に守ると誓う」
「うん…………お願い」
ヘイゼルも了承してくれ、俺を抱きしめ返してくる。
「……………………あいつ、いつ風呂から上がるかな?」
「やんないわよ」
サービスもなしっぽいな…………
「しかし、フィリアが風呂入ってる時にこんなことをしてると、罪悪感がヤベーな」
すげー、浮気っぽくね?
「そら、あんたはそうでしょうよ」
「お前は?」
「何も思わない。どうせフィリアがお風呂から上がって、次に私がお風呂に入っている時に似たようなことをするんだろうなーって想像がつくもん」
…………まあね。
罪悪感が増したわ……
とはいえ、俺がヘイゼルを離すことはなかった。
それからちょっとすると、フィリアが風呂から上がってたので、ヘイゼルが風呂に向かった。
もちろん、ヘイゼルが風呂に入っている最中、フィリアに愛を囁き、イチャイチャしてた。
なお、当然、罪悪感はやばかった。
しばらくすると、ヘイゼルも風呂か上がってきたので、最後に俺が入った。
俺はあまり待たせてはいけないと思い、早めに風呂から上がった。
風呂から上がると、2人が待っているソファーに座る。
左にヘイゼル、右にフィリアというお決まりの配置だ。
2人はこっちの服に着替えており、ちょっと新鮮で嬉しい。
だって、こいつら、あっちでは黒ローブと修道服しか見たことがないんだもん。
もちろん、首にはそれぞれ、俺が贈った金と銀のネックレスを着けている。
俺達は酎ハイが入ったコップを持ち、乾杯した。
すごいのは2人共、距離が近いことだ。
マジでこの店は優良店だわー。
「それで? 私に話って?」
ヘイゼルがここに転移する前の話を聞いてくる。
「それな。ヘイゼルちゃん、泣くんじゃないぞ?」
「いや、泣かないわよ」
「お前、アルトの町にいることが実家にバレてたぞ」
「へ!? あはは、そんなバカなー」
棒読みだし……
かわいそうな子…………
「フィリアのじいちゃんに言われた。バーナードの当主に気にかけてほしいって頼まれたんだとよ」
「そそ、そんななな、ばば、ばかなな………」
ヘイゼルちゃん…………
「あのな、貴族はそういう情報をちゃんと把握してるんだってさ。だからお前の親はお前がこの町にいることも知っている。というか、町の人間の大半はお前が貴族なことを知っている」
俺がそう言うと、ヘイゼルはフィリアを見る。
「知ってるよ。だって、ヘイゼルさんって、言動が貴族のそれだもん…………」
「ガーン!」
ガーンだね…………
「ヘイゼル、これはクレモンから聞いた話なんだけどな……魔法って、金がかかるから上流階級しか学べないそうだ」
「そういえば、学校には金持ちしかいなかった気がする!」
「そういうわけで、皆、知ってる。親もお前の居場所を知ってる」
「でも、誰も言ってこなかった…………言ってきたのはリヒトだけ…………あ、詐欺師だ」
コラ!
俺が悪いみたいに言うなや!
「だって、言えないよ…………貴族なら貴族って名乗るし、名乗らないなら事情があるからだもん。冒険者は人の事情に首を突っ込まない。突っ込んでくるのは騙して、利用しようとする人だけ」
ねえねえ、どっちでもいいんだけど、場所を交代しない?
2人で話してよ。
挟んで交互に責めてこないで。
あ、ガラ悪マッチョが言ってた意味がわかった!
「そっかー…………知ってたのかー……フィリア、私は実はロストの貴族なの」
「いや、私は知ってるから。リヒトさんに聞いたし、ソフィア様の件でこの前、そこで跪いてたじゃん」
フィリアがこの前、ヘイゼルがカエルになっていたフローリングを指差す。
「そういえば、そうね。しかし、お父様もお母様も知ってたのか…………これは早めに手紙を送ろうかな……」
「フィリアのじいさんが事情説明も兼ねて手紙を送っておくってさ」
「あら、あの怖い人も中々、良い人ね」
ホント、ホント。
「ねえねえ、おじいちゃんって、ヘイゼルさんのバーナード家と繋がりがあるの?」
俺とヘイゼルがうんうんと頷いていると、フィリアが聞いてくる。
「あ、それそれ…………身内の恥をさらすんだけどさ…………」
俺はフィリアのじいさんの過去も説明した。
「そうだったんだ…………おじいちゃんって、元はロストの人間だったのか」
フィリアはちょっと驚いている様子だ。
「どこの家かしら? 王女である巫女様の護衛に選ばれるって相当な家柄よ?」
「そこまでは聞いてないな。あんま、母親のことを聞きたくないんだ」
「そうなの?」
「まだ名誉なら良かったんだがなー…………」
3日で逃げたクズだもん。
「あー…………」
「私はノーコメント」
フィリアとヘイゼルはそっぽを向いた。
「まあ、俺の母親のことは置いておいて、フィリアのじいちゃんと話したのはそんなところかな」
「とりあえず、わかった」
「私はちょっとショックだけどね…………」
ちょっとだけらしい。
ヘイゼルちゃんの傷は思ったより浅いようだ。
「それとさー、今後のことなんだけど……」
「いつ結婚する?」
「いつでもいいわよ」
多分、早くしたいんだろうなー……
こいつら、適齢期っぽいし。
こっちではJKのくせに……
「それね。まずは俺の親に報告する。まあ、これは俺の役目だな」
「お願いね」
「挨拶とかは? ソフィア様はもちろんだけど、お義父様にも挨拶するべきだと思うんだけど…………」
まあ、そうだろうね。
「その辺も含めて聞いてみる。前にも言ったが、ウチの国というか、この世界の大半は重婚がダメなんだよね…………」
「反対される可能性があるってこと?」
「へ? 今さら? 私、かなり引き下がれないとこまで来てんだけど?」
フィリアもヘイゼルもどっちもそこまで来てるよ…………
「多分、反対はしないと思うし、反対されても無視するけど、まあ、話してみる。というか、母親は知ってそう…………」
あの人も未来視を持ってるし……
「あー……ソフィア様だもんねー」
「巫女様の中でも特に優秀な方だったらしいしね」
3日で逃げたけどね。
「まあ、そこは俺がやる。あとさ、住む場所ってどうする?」
「………………え?」
「………………ここ?」
「いや、ここ俺の家だけど、実家だぜ? 今はいないけど、普通に親が住んでる。お前ら、ソフィア様とかやらと一緒に住みたいか?」
というか、部屋が足りねーわ。
「あー…………まあ、嫁ぎ先がそういうケースもあるけどねー。できたら避けたい」
「そうそう。貴族は100パーセントそうなるけど、私も避けたい」
誰だって嫌だわ。
俺だって嫌だもん。
「というわけで、家を出ないといけない。というか、ここだけじゃなくて、あっちの世界もだな」
「あっちの世界かー…………家を借りる?」
「いや、私の家に住めばよくない? というか、引っ越したばかりなのにまた引っ越すの嫌………………もう1年分の家賃を払ったし(ボソッ)」
ヘイゼルちゃん?
「ヘイゼルさん? …………おいこら、ポンコツ!」
「な、なによ? 何か文句でもあるのか、守銭奴!」
喧嘩はやめてー。
せめて、座る位置を交換してー。
「まあまあ。落ち着いて。ヘイゼル、お前の家って、リビングを入れても3部屋だろ。俺ら3人で住むには狭くないか? お前は研究部屋がいるだろ」
子供は…………まあ、早いか。
「私はリビングで研究するから2部屋を譲るわよ……」
「お前、見られたくないんじゃないの?」
引っ越しを手伝った時も頑なに俺らに触らせなかった。
「家族になるのなら別に見てもいい。他所には漏らさないだろうし」
漏らすも何もお前の研究成果を俺やフィリアが見ても理解できないと思う。
「ヘイゼルさんはどこで寝るの?」
「え? リビング?」
「いや、それはねーだろ」
というか、それでいいのか、お前?
「じゃあ、どっちかの部屋で寝る」
どっちだよ…………
「フィリア、1年はこいつの家で住むとしよう。俺もあっちの世界では別に部屋はいらんし、片方を寝室にして、片方をお前に譲るわ」
どっちみち、あっちの家ではやることもないし、部屋もいらん。
「リヒトさん、落ち着いて……真面目に聞くけど、3人で一緒に寝る気?」
………………困る時があるな。
稼ぐ場があっちの世界がメインとなると、比率で言うと、あっちの世界にいる時間の方が長いだろう。
困るな…………うん、困るな。
俺も若いし。
「よし! 片方をヘイゼルの部屋にして、もう片方をフィリアの部屋にしよう! 俺はお客様ポジでいく」
我ながら最低だと思う。
「まあ、それが現実的かな…………こっちの世界の部屋を分ければいいか…………」
「別に私は3人で一緒に寝ればいいと思うけどなー……」
ここでも意見が食い違う2人……
「お前、寝てる横でフィリアの嬌声を聞きたいか?」
「さいてー…………」
フィリアが白い目で非難してくる。
「え? 私は? 仲間に入れてよ」
「もっとヤバいのがいたし…………」
ヘイゼルちゃんは3人でもいいの!?
この人、ヤバくない?
俺の嫁(予定)で師匠だよ?
「賃貸か買うかはわからんが、こっちでは広い家にするか」
「そうしましょう」
「ってかさー、あんたら、ウチに来る前にヤッてきたでしょ」
ちょっと黙れ、ドスケベ!
お前はさっきから飲みすぎなんだよ!
それで失敗した過去をもう忘れたのか!?
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