第008話 再び異世界へ!
俺は翌朝、目が覚めると、シャワーを浴び、服を着替える。
服は動きやすい運動系の服を着て、その上に仕事用で雰囲気を出すためのフード付きマントを羽織った。
俺はこの状態で鏡を見る。
「うん。実に怪しい!」
いかにインチキ占い師って感じだ!
顔が悪いのかね?
やっぱオッドアイのせいかなー。
俺はまあいいかと思い、テーブルに行き、クレモンからもらった靴を履いた。
運動靴や安全靴も買ったのだが、今回は町の外に出るつもりはないので、この靴で行く。
そして、剣をベルトごと腰につけ、昨日の夜、色々と物を入れたクレモンのカバンを持った。
「よーし! 完璧! 今は朝の8時だからおそらく、向こうは昼の2時くらいだろ。そんでもって、宿屋の部屋にワープするはずだ」
俺は以前、この部屋から迷いの丘にワープした。
しかし、帰る時は迷いの丘から遠く離れた所だったのに帰ってきた所はこのリビングだった。
おそらく、どこにいようとアプリを使った位置にワープすると思われる。
俺はそう予想をしているし、多分、間違いない。
「よっしゃ、行くぜ」
俺は時計を一度見ると、アプリを起動した。
すると、アプリのカウントダウンは残り40秒だった。
「さて、40秒を待ってみるか…………」
俺はスマホの画面をじーっと見つめる。
「…………5、4、3、2、1」
カウントダウンが終わった瞬間、スマホ画面がぐるぐると回る謎の動画が始まった。
直後、俺の目の前が光に包まれ、何も見えなくなった。
そして、気が付くと、狭い部屋の一室にワープしていた。
ここは俺が昨日、借りた部屋である。
「よし! 予想通りだ」
俺は軽くガッツポーズをすると、部屋を出て、階段を下りる。
「あ、お客さん、起きたの?」
俺が階段を下りると、受付にいる昨日見た女の子が声をかけてきた。
「おはよう、サラ」
「うん、おはようございます」
かわいい子だねー。
「サラ、晩御飯はいくら?」
「えっと、ものによる。日替わり定食だったら銅貨8枚」
800円か。
そんなものかもしれないな。
「今日は食堂で食べようかな」
「まいどでーす。夕方からだったらいつでもいいですよー」
この世界って、時計とか時間ってどうなってんだろ?
「サラ、冒険者ギルドがどこかわかる?」
「知ってるよー。あ、リヒトさんって冒険者なんですか?」
まだ無職だよー。
「まあ、そうだな。実は他にもやってるんだが、そう思ってくれて構わない」
「やっぱりかー。あ、冒険者ギルドはここを出て、右に真っすぐ行けば着きますよー」
おー、わかりやすい。
「ありがとう。お礼にこれをあげよう」
俺はポケットから飴を取り出した。
「何ですか、これ?」
「砂糖菓子かな」
「へー、砂糖なんて珍しいですねー」
砂糖は珍しいらしい。
売れるかな?
「はい、あーん」
俺は飴を袋から取り出し、口を開けるように言った。
「あーん」
サラが素直に口を開けたので、口の中に飴を放り込む。
「もごもご…………わぁ……! 甘くて美味しいですー!」
サラは幸せそうに頬を緩ませる。
「そうか、そうか。またあげるからねー。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃーい!」
サラの好感度がグーンと上がった気がする。
だが、多少、変質者っぽいやり取りだった気がするのは気のせいかな?
まあいいか。
俺は宿屋を出ると、サラに言われた通り、右に真っすぐ歩いていく。
通りすがる人も結構おり、アンナがこの町をそこそこ大きな町って言っていたのも頷けた。
そのまま真っすぐ歩いていると、突き当たりに剣のマークが描いてある看板が立てかけてある建物を見つけた。
俺はあれが冒険者ギルドだろうなーと思い、近づき、扉を開け、中に入る。
建物中は広いホールみたいになっており、丸いテーブルが複数の椅子とセットになって置かれている。
最初は酒場と間違えたかなと思ったが、奥には受付があり、職員らしき何人かの男女が仕事をしている。
というか、職員しかいない。
大丈夫か、ここ?
俺は受付に行こうと思い、近づくが、半分ぐらいの距離で立ち止まった。
受付は2つあり、左はかわいらしい美人がニコニコとこちらを見ている。
一方で右は人相の悪い筋肉マッチョがヤンキーみたいに姿勢を崩し、こちらを見ているというか、睨んでいる。
いや、左だ!
絶対に美人がいる左だろ!
右は絶対にない!
俺は左に行こうとしたのだが、すぐにいやーな予感がしだした。
えー…………マジ?
俺はベルトから鞘ごと剣を取り、地面に立てた。
そして、どーっちだと念を込めながら手を放す。
剣は俺の願いとは逆にガラの悪いマッチョの方向に倒れた。
俺は目をこすり、何度も確認するが、剣はどう見ても、ガラの悪いマッチョを指している。
俺はまさかーと思い、もう一度、剣を立てて、放した。
しかし、やはり剣はガラ悪マッチョを指してしまう。
マジかい…………
絶対に嫌だぞ。
だが、ここまでやって、俺の占いが外れるわけがない。
俺は剣を拾い、腰に付けると、観念して、ガラ悪マッチョの方に行く。
「こんにちはー…………」
俺はテンションダダ下がりで挨拶をする。
「おう! こんにちは! ここまで嫌な顔をして俺のところにくるヤツは初めてだぜ!」
ガラ悪マッチョは大きな声で挨拶を返してきた。
「そんなことないですよー…………」
「めっちゃ声が小せーし。で? 何の用だ? 登録か? 依頼か?」
「登録でーす」
「ふむ。じゃあ、これに必要事項を書け。文字は?」
そういえば、識字率が高くないんだったな。
「書けるし、読めます」
「じゃあ、書け」
俺は紙を見て、必要事項を書いていく。
えーっと、名前はリヒトっと。
年齢は20歳。
特技? 占いでいいだろ。
除霊とか書いてもイミフだろうし。
こんなもんかな?
俺は必要事項を書き終え、ガラ悪マッチョに提出する。
すると、ガラ悪マッチョはすぐにそれを読みだした。
「お前、20歳かよ。見えねー。ガキかと思ったわ」
まあ、日本人は若く見えるらしいしな。
この世界の男は皆、でかいし。
商人のゲルドですら俺よりもでかく、筋肉質だった。
「…………占いってなんだ?」
やはりそこが引っかかるらしい。
「さっきやってただろ」
「剣を倒してたやつか?」
「そうそう。俺はあっちの美人が良かったんだけど、あっちに行くと不幸が訪れるって出た」
じゃなきゃ、お前のところなんて絶対に来ねーわ!
「ほーう…………これは本物かな?」
ガラ悪マッチョが手であごを触りながら目を細める。
「あっち行ったらどうなったん?」
「俺がお前を捕まえて奥に連行だ!」
ひえっ!
俺はとっさにお尻を抑えた。
「いや、ちげーよ!! 奥で話を聞くだけだよ!!」
それ、奥に行く必要ある?
ないよね?
「いいから許可出せ」
「ふーむ…………リヒト? リヒト? あれ、どっかで聞いたな」
俺、こっちに来たばっかで名前を全然、売ってませんけど?
同名がいるんかな?
「ギルマス、ほら、アンナさんやミケさんが言っていた」
奥から女性職員が助け舟を出す。
どうやらアンナやミケが俺の事を事前に言っておいたらしい。
いいヤツらだ…………って、ギルマス!?
「ギルマス?」
「そうだ…………あー、思い出した! お前が例の詐欺師か! 確かに詐欺師っぽいし、胡散臭いわ!」
アンナもミケも悪く言ったようだ。
だから名前の中にフィリアがなかったのね…………
あの子は悪口を言わないだろうし。
「詐欺師じゃねーよ!」
「占い師なんて似たようなもんだろ」
すげーひどいことを言う!
「おのれ……!」
俺はじーっと、ガラ悪マッチョを見る。
すると、明日、市場に行くと金を落とすと出た。
「明日、市場に行くと良いことがあるぞー」
「絶対に嘘だな。明日は市場には行くつもりだったが、絶対に行かないことにする!」
チッ!
余計なことを言ったようだ。
「もういいから許可を出せよー」
「まあ、待て…………よし! では、テストをしよう」
は?
「なんでだよ!?」
「お前、よそ者だろ? よそ者はテストする習わしなんだ」
すげー嘘だし。
俺を騙せると思ってんのか?
「嘘つけ」
「まあ、嘘だが、テストはする。テストは何かの依頼を1個やれ」
うーん、めんどくさいが、冒険者のシステムを理解するにはいいかもしれない。
時間もあるし、急いでいるわけではないからなー。
「依頼って? 外に出るのは嫌だぞ」
「お前、弱そうだし、そんなことはせん…………うーん、何がいいかな?」
ガラ悪マッチョは何かの書類を吟味しだした。
「そこの美人とデートって依頼はない?」
俺はあっちの受付に座っている美人の受付嬢を指差す。
すると、受付嬢が笑顔で手を振ってくれた。
もちろん、俺も手を振り返す。
「ねーよ。逆に金を取るわ…………お前、占い師だったな。ちょうどいいのがあった」
ガラ悪マッチョはそう言って、俺に紙を渡してくる。
そこの書かれてたのは猫を探してくれという依頼だった。
「…………ウチの猫ちゃんなら東に行ったぞ?」
「ミケじゃねーよ。というか、お前のじゃねーよ」
あっそ……
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