第005話 アンナから情報を仕入れよう!


 アンナに夜這いを疑われているなう。


「なるほど。何故、私らに近づいた」

「マジで馬車目当て」

「ふーむ…………」


 めっちゃ疑ってるなー。


「まあ、信用しなくてもいいよ。占い師なんか絶対に信用しちゃダメだし」

「自分で言うか?」

「信用されても困るんだよね。絶対じゃない占いを信用して、逆恨みはごめんだし」

「そんなものか…………まあ、お前が私らに何かをしようとは思わんな」


 おー!

 俺の人畜無害さをわかってくれたか。


「うんうん!」

「というか、何かを出来る気もせん。お前、弱そうだし…………」


 すぐに首を刎ねれるっていう意味ね。

 まあ、いいけど。


「アンナさ、あんたがこのパーティーのリーダーなんだっけ?」

「そうだな。といっても、このパーティー自体が臨時なんだ」

「臨時? 急増か何か?」

「急増ってわけでもない。私らはこの大陸のでっかいクランに所属する冒険者なんだ」


 おー!

 冒険者っぽいって思ってたら本当に冒険者だった!


「ほうほう!」

「私ら3人を見て、女ばっかだなって思わなかったか?」

「思った。あー、もしかして、女が徒党を組んだ感じ?」

「そうだ。男に負けないぞ!って感じだ」


 なるほどね。

 女ばっかだから危ないなーとは思っていたが、こいつらはそういうクランらしい。


「ミケもフィリアもそこに所属するソロ冒険者だ。女のソロは危ないからこんな感じでクランがパーティーを斡旋するんだよ」

「フィリアって、あの金髪?」

「そうだ…………悪いな。言ってなかったわ」


 まあ、そもそも会話自体が初めてみたいなものだしね。

 でも、仕組みが大体、わかってきたな。


「じゃあ、これからエーデルに行って帰る感じか?」

「いや、エーデルに行って帰るのは私だけだ。他の2人は残る。エーデルで別の2人を補充する感じだな」

「それでいいの?」

「依頼者も納得済みだ。ウチはそういう自由が利くクランなんだ。そうしないと、結婚した有力な冒険者が引退してしまうからな」


 その辺はよくわからんなー。

 結婚したら退職じゃないのかね?


「アンナが剣士、フィリアがヒーラー、猫ちゃんが斥候とみた」

「正解だ」


 合ってた!


「悪いが、もう少し、聞いてもいいか?」

「いいぞ。見張りは暇だからな。付き合ってもらった方が助かる」

「見張り?」

「モンスターや盗賊の夜襲なんかもあるし、当然、見張りを立てる。常識だぞ」


 確かにそうかもしれない。

 ってことは、昨日、俺はクレモンに見張りを完全に任せたことになる。

 悪いことをしたな……


「お前一人?」

「交代で行う。今日は私」


 商人のおっさんはしないだろうし、こいつら3人でローテーションかな?


 俺も手伝ったほうがいいのかなと思ったが、俺が一人で見張りをしても、色んな意味でこいつらは安心して眠れないだろうな。


「俺、冒険者になれるかな?」

「資格的な意味ではなれる。ギルドに行けば誰でもなれるからな。素質的な意味では…………魔法の腕次第だろ」


 荒事は無理かー。


「うーん、アンナが素手で、俺が剣を持っていても勝てる気がしないなー」

「そういうことだ」


 適材適所。

 俺も剣は持っているが、使うことはなさそうだな。


「私も聞いてもいいか?」

「どうぞ。俺も眠れそうにないし、2人で夜を語ろう」

「お前、すごいな。胡散臭さがすごい」


 もう少し、褒めてどうぞ!


「これに慣れると、逆に信用できるかもって思うのが人間なのだよ」

「怖いな…………お前、異世界人っていうのは本当か?」


 アンナは苦笑していたが、すぐに真顔になる。


「だと思う。少なくとも、この世界は俺がいた世界とはかけ離れている」

「そうか…………異世界人は特殊な能力をもらえると聞いたが、その占いか?」

「これは最初から持ってるものだ、もらった能力が何なのかはわからない。逆に聞きたいんだが、どうすればわかる?」


 ステータスとか、説明書とかねーの?


「うーん、そういう特殊なスキルは教会に行けばわかると思う」


 教会か…………

 仕事上、宗教は苦手なんだがなー。


「エーデルにはある?」

「そらあるが…………あー、エーデルって国の名前だぞ。私らが行くのはエーデルのアルトって町だ」


 あ、そういえば、そうだった。


「アルト…………そこにはあるのか?」

「ああ、もちろんあるぞ。そこそこ大きな町だしな。それこそフィリアに聞けばいい。あいつはそこの修道女だから」


 金髪蛇女、教会の人間だったのか。


「明日、聞いてみるか…………」

「そうしろ。あと、お前の占いは金貨1枚だったか?」

「初回だけね。何か占ってほしいことがあるん?」


 意外だな。


「さっきはゲルドの占いたいことを当てただろ」


 ゲルド……

 商人のおっさんか。


「あれはたまたま見えただけ。そんなに万能じゃない」


 そもそも、何でもわかったらこんなところにいねーっての。


「そうか…………実はちょっと占ってほしい」


 アンナはそう言って、金貨1枚を取り出した。


「まいど。何を占うん?」


 俺はアンナから金貨を受け取ると、占う内容を聞く。


「…………笑うなよ?」

「もうね、そのフリでわかったわ。恋愛だろ」

「…………変か?」

「そこを気にしない方が変だから安心しな。じゃあ、占うぞー」


 俺はアンナの恋愛を占ってみた。


「えーっと、その男は責任感の強い男だなー」

「そ、そうだ!」

「だが、奥手だな…………」

「そ、そうなんだ…………」


 恋する乙女だねー。


「この仕事が終わったらそいつと組んで仕事をしろ。それで上手くいく」

「組む? あいつ、別のパーティーを組んでるんだけど」

「一時的でいいから誘え。それで上手くいく」

「マジ?」

「当たるも八卦当たらぬも八卦。どうなるかはお前次第」


 これ以上は言えない。

 お前がケガして、助けてもらう内に上手くいく。

 だが、これを言ってしまうと、こいつはケガをしなくなる。

 だからこれ以上は言えないのだ。


「それだけか?」

「俺は預言者ではない。占いでも言いすぎなくらいだ。これから一緒にエーデルに行く仲間だからここまで言ったんだよ。あの商人のおっさんもミケも同じだ」


 普通はここまでは言わない。


「そうか…………やってみる」

「言いすぎたお釣りに聞いていいか? フィリアはたまに苦しむような表情をすることがないか?」

「フィリアが? そういえば、あったな。馬車酔いとか、馬車の振動でちょっと痛めたとか言ってたが…………」


 やはりあの蛇は当人も苦しいようだ。


「そうか…………あいつ、金持ってるかな?」

「金? どれくらいだ?」

「金貨100枚」

「持ってるわけないだろ」


 だよねー。

 どうしようかねー?


「うーん…………」

「お前、さっきフィリアが気になるって言ってたな。何かあるのか?」

「この世界ってさ、霊的なもんを信じる風習がある?」


 霊的なもんは宗教に関わることがある。

 下手すると、異教徒狩りや魔女狩りに遭う可能性があり、危険だ。


「霊的なもん? レイスやゾンビか? 街道には出てこないが、その辺にいるな」

「えー……それは嫌だなー」


 ガチでいるのかよ。

 しかも、その辺にいるのかよー…………


「うーん、フィリアには蛇の霊が憑いている」

「蛇? 悪いものか?」

「それが微妙なんだ…………この世界ではどうかは知らないが、蛇は悪い面もあるが、良い面もある。あの蛇は少なくとも、悪いものではない。だが、フィリアを苦しめている」

「苦しめているのなら悪いだろ」


 まあ、そう思うのも確かだ。


「一概にそうは言えない。あれは守護霊…………守護霊ってわかるか?」

「わかるぞ。戦いで運良く助かったりすると、ご先祖様のおかげだとか言うしな」


 一応、似たような考えはあるっぽいな。


「フィリアにはそういうものが憑いてるんだ。あれはフィリアを悪いものから守っている。でも、力が強すぎて、フィリアを締めつけ過ぎているな。あれは本人は苦しいだろう」


 大事なものを守ろうとして、力を込めすぎている。

 まあ、蛇にそこまで考える力はない。

 動物霊だとよくあることだ。


「お前、そういうこともわかるのか……?」

「というか、本業がそっちだ。占いは副業」


 呼び方はエクソシストでも対魔忍でもなんでもいいぞ!

 いや、対魔忍は違うか……


「祓えんのか?」

「そこなんだよね。祓えるけど、高い」


 そして、祓っていいものなのかも微妙だ。

 守護霊だし。


「あー…………それが金貨100枚かー」

「悪いが、この話はフィリアには黙っててくれ」

「なんでだ?」

「人によっては借金とかするからなー。そういうので身を滅ぼされるとちょっと…………」


 占いやこういうスピリチュアルに傾倒する者はかなりいる。

 そういうヤツが金づるになるんだが、やりすぎると、犯罪に手を染めたりするからよろしくない。

 そして、そういう不幸はこっちにも降りかかってくるものなのだ。


「なるほど」

「ちょっと本人に話を聞いて、探ってみる。あいつの家の懐具合とか、返済能力があるかとか」

「お前、やっぱ詐欺師だろ」


 失礼な!

 ちょっと騙してるだけだよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る