5 無責任


 十二日目。カズラはガーネの鱗を指差して言った。


『鱗が前よりもきらきら光ってるね』

『そうでしょう。健康の証ですよ』


 ガーネは鼻高々に肯定した。自慢げな様子がとても可愛らしい。カズラは笑って頷いた。


『健康なのはいいことだ』


 しかし、ガーネの表情はたちまち陰ってしまった。 


『鱗がこうして光るのはわたしたちが健康に生きている間だけです。知っていましたか?』


 そう問いかけるガーネの声はかすかに震えている。カズラはすぐには答えずに、ガーネの身体の半分以上を覆う鱗を改めて眺めた。初めて出会ったときにはすっかり色褪せてみすぼらしかった鱗が、今では光沢を取り戻して輝いている。これが本来の姿なのだろう。魅了の歌はなくとも世の変態どもが大金を叩いてでも生け捕りにして愛でたがる異形の美しさ。

 人に似ているが故に嫌悪され、人に似ていないが故に渇望される。髪の一筋から鱗の一枚まで。余すところなく蹂躙される。ガーネたちは人に似ていても決して人ではないから、尊重されることはこれまでもこれからも決してないだろう。

 無感動にカズラは考えて、それから口を開いた。


『いいや。そうだとしたら人間でこんなに綺麗な鱗を見たのは僕だけかもしれないね。お得だなあ』

『……お得……?』


 しみじみと本心を述べるカズラにガーネはただただ困惑していた。


◆◆◆


 二十日目。カズラは相も変わらず茹でただけの芋をのそのそ食べていた。代わり映えのしない様子をしかしガーネは好奇心に満ちた目で見つめている。無遠慮な視線をカズラは完全に受け入れながら単調に芋を食べ進めた。喉にしつこく残る芋の最後の一欠片を水筒のぬるい水で腹に流し込む。そこまで生真面目に見守ってからようやくガーネは発言した。


『あなたはどこで生まれたのですか?』

『クルックスよりずっと寒いところだよ』


 そう返事をしてカズラは水筒の蓋を閉めた。


『どれだけ寒いのですか?』


 ガーネの問いに思案する素振りを見せる一方で、茹で芋を包んでいた葉っぱと先に食べ終えていた果実の皮をまとめて革袋に放り込んだ。それからガーネに向き直る。


『どれだけ……どれだけかあ……ガーネさんは雪って見たことある?』

『ユキ? いいえ。ありません』


 ガーネは頑是なく首を横に振った。彼女の頭のなかで想像されるユキはきっと本物以上に綺麗なのだろう。カズラは顔を綻ばせて答えた。


『寒いと空からふわふわした白い粒が降ってくるんだよ。冷たくて、触るとすぐに溶けてしまうけれど。地面に積もると一面が真っ白になってね。歩きにくいんだ。おまけに雪が降るほど寒いと地面が凍っていることもあるから滑って転ぶこともあって面倒くさいことこの上ないよ』


 識者が耳にすれば卒倒するかもしれない適当な説明だった。後半は説明にすらなっていない。ただの愚痴である。けれども、律儀にふんふんと頷いていたガーネは更に質問を重ねた。


『どうして寒いとユキが降ってくるのですか?』

『さあ』


 カズラは大げさに肩を竦める。するとガーネの眉間に皺が寄った。揶揄われたと思ったのだろうか。今回は本当に知らないのだけれども。幾分か低い声で問い詰められる。


『あなたも知らないのですか?』

『僕は何でも知ってるわけじゃないよ。雪については……習った気もするけど忘れたなあ』


 両目を窄めて遠い過去を思い出そうとしたが、まったく手ごたえはない。はははとごまかし笑いを浮かべるカズラにガーネは落胆したような呆れたようなため息をついた。カズラは両手をあちらこちらへ無意味に動かしてガーネの気を引きながら喋り続ける。


『とにかくさ、僕に生まれたところに比べたらクルックスは暖かいよ。海も澄んでて波は穏やかだし』

『ここだって、ひどく荒れるときもありますよ』


 愛想なくガーネが言い返す。カズラは唇を尖らせた。


『そりゃそうだろうけど。僕のところは荒れてるのが普通だったからさ。漁船の転覆はしょっちゅうあったし、好き好んで海に行こうとは思わなかったな』


 カズラの言にガーネは再び興味を示した。何度も瞬きをしながらカズラを真っ直ぐに見る。


『そんな海が本当にあるのですね。その海にわたしたちはいませんでしたか?』


 どこか縋るような響きを帯びた言葉にカズラは情けをかけるような真似はしなかった。僅かな間も置かずに断言する。


『いなかったね。いたら多少なりとも噂にはなってただろうし』

『そうですか……』


 ガーネは肩を落とした。懲りもせず奇跡の偶然を求めた己を恥じるように徐々にカズラから目を逸らす。しかし、カズラは自省の時間すらガーネに与えなかった。あっけらかんと言う。


『あれ。でも、そういう寒い海にも君の同類はいるんだよね。そう聞いたけど』


 カズラと目を合わせないままガーネは弱々しく答えた。


『いるらしいとしか知りません。わたしも含めて、群れの仲間はずっとここにいますから』

『ずっとか。出ていった仲間はいないの?』

『…………いますが、わたしたちは出ていきません』


 妙な言い回しだった。一体どういう意味かと考えながら、カズラは訊ねる。


『? じゃあ、よそからやって来る仲間は?』

『………………わたしは知りません』


 長い沈黙の後に返ってきたのは随分と含みのありそうな否定だった。ここではまだ退かない。そう決めたカズラは冗談っぽく切り返した。


『引っかかる言い方だな。何を隠してるの?』


 軽い調子で訊いたからといって相手が考えなしに答えてくれるはずもなく。ガーネは極めて無表情にカズラと向かい合っていた。厳かに、そして意地悪にガーネが囁く。 


『あなたの隠し事を教えてくれたら、わたしのも教えますよ』

『僕の隠し事?』


 わざわざガーネの頭の中を覗かずとも見くびられているのは簡単に分かった。出会ったばかりの自分に、人ですらない自分に隠し事など打ち明けられるはずがないと。カズラはそれらしく嘘をつくこともできるのだとガーネは理解しているのだろうか。そして、何より。隠し事を大切に抱え込むような繊細さがカズラに存在するなんて馬鹿げたことを本当に思っているのだろうか?

 カズラは腹の底からこみ上げてくる高ぶりに逆らうことなく、くつくつと笑った。様子のおかしいカズラをガーネが怪訝そうに眺めている。カズラは前のめりにガーネと目を合わせて捲し立てた。


『どれが知りたい? 王妃と寝たせいで死刑を宣告されたこと? 蔓の魔法以外には低級も低級な火の魔法しか使えない木っ端魔法使いだってこと? 泳げないこと? 外見と中身が違うってこと?』


 言葉を挟めそうな隙は一切なかった。ガーネは顔をしかめている。あからさまにカズラを気味悪がっていた。魔法は不必要に見せびらかすものじゃないと以前に語ってはいなかったか? その慎重さをどこに置いてきてしまったのだろう。

 カズラの言ったこと全てが気になって仕方がなかったけれど、ここでカズラの雰囲気に呑まれてはいけない。ガーネは何も聞かなかったことにした。カズラの隠し事を聞いてしまったら、自分の隠し事を話さなければいけないから。


『どうしてそこでべらべらと喋るのですか!』


 と言い放って、ガーネは魔法の蔓を振り払った。それだけで切れるほど魔法の蔓は弱くはないのだが、カズラはガーネの意思を尊重して蔓を切る。ぷりぷり怒った様子で去っていくガーネをカズラはへらへら笑いながら見送った。


「また明日」


◆◆◆


 二十一日目。待てども待てどもガーネは来なかった。激しく降る雨が海へ次々に叩き付けられるのをカズラはひたすら眺めている。


「ガーネさんは真面目だなあ」


 気の抜けた独り言は雨音に掻き消された。ガーネの意図を理解した上でカズラは隠し事を言いたい放題したのだ。カズラに隠し事を押し付けられたからといって自分も隠し事を話さなければと思い詰めることはない。カズラにとっては単純明快なことであったけれど。


「また明日」 


 今度は雨音に負けることのないように無人の洞窟へ声を響かせる。それから躊躇いなく土砂降りの外界へ飛び出していった。


◆◆◆


 二十六日目。それが当たり前であるかのようにガーネが待っていた。五日ぶりの再会だが、ガーネは沈黙したままだ。カズラが接近すると肩を強張らせた。緊張しているのか。それとも恐れているのだろうか。だとしたら、カズラはその恐怖の一端すら掴めそうにない。

 故にカズラは何一つ気負わずにガーネへ魔法の蔓を伸ばした。ガーネは身じろぎせずに蔓を受け入れてくれた。普段よりは少し距離を取って腰を下ろす。そして自分の言いたいことを言った。


『知り合いが教えてくれたんだけど、また人魚狩りが来てるってさ』

『……そうですか』


 ガーネは緩慢にカズラを見やる。ひどく凪いだ反応だった。別にガーネを怯えさせたいわけでもつらい記憶を蘇らせたいわけでもなかった。一応警告はしておいた方がいいだろうと薄っぺらな親切心が疼いただけにすぎない。が、それにしてもガーネの反応は薄かった。もう積極的に生存の道を探るのは諦めて、運命にその身を委ねるつもりなのだろうか?

 ガーネの真意を頭の中でこねくり回しながら、カズラはこれまた一応の提案をした。


『僕が始末しとこうか?』

『……いいえ。結構です』


 ガーネは頭を振った。桃色の巻き毛が力なく揺れる。カズラは手負いの獣を誑かす距離感で言った。


『好きでやってるだけだから、見返りを求めたりはしないよ?』

『そういうことではなく……いつかはここを去るあなたに頼るわけにはいかないんです。わたしたちだけでどうにかしなくては』

『なるほど。で、どうにかってどうするの?』


 カズラはどこまでも軽薄に言い返した。黄金色の双眸から憎悪が滲み出す。ガーネが歯を噛みしめる音はカズラにも聞こえるほどだった。


『………………それが思い付いていればあんなことにはなっていません』


 あんなこと、とガーネはぼかしたのでカズラはより鮮明に思い出すことになった。ガーネが人魚狩りに捕まってあわや愛玩動物になりかけていたことを。カズラは頬に手を当てる。爪は短く、すらりと伸びた指には傷一つない。


『君に出会って僕もちょっと調べてみたんだけどさ。今時の人魚狩りって一組に一人は雷か水の魔法使いを入れるのが主流になってるんだって。この前の奴らみたいに雷の魔法で海面に上がってきた君たちを痺れさせてもいいし、もっと強力な魔法使いなら広範囲の生物を無差別に痺れさせることもできる。あれは当たるとなかなかつらいよ』

『…………』 


 突如として始まった昨今の人魚狩りの事情説明にガーネは顔をしかめた。けれども、カズラの言葉を遮ったりはしなかった。


『水の魔法使いは海水を操って束縛できる。君たちを視認できればだけど。……いや、熟練した魔法使いは自分の手足みたいに水を操るから見えてなくても問題ないかもなあ。一度存在を感知されたら逃げるのは難しいかもね』


 カズラの語りは軽快だった。ガーネはそれに対して忌々しそうに、そして同じくらい興味深そうに耳を傾けている。


『僕の全然知らない魔法で君たちを捕まえようとする連中もいるだろうし。ただ逃げ隠れするだけじゃ限界が来そうだね』


 絶望的な結論を剥き出しのまま突きつけられても、もはやガーネは泣き喚くことすらできなかった。途方もない無力感が全身に絡みつく。淀んだ吐息を細く吐き出した。


『…………もう限界は来ていますよ』

『どういう意味?』


 当然カズラは問いかける。ガーネは凹凸のある地面を無言でなぞり続けて、不意に話し始めた。


『………………わたしたちは群れで暮らしています。基本的に、群れには女しかいません』

『男は? 女しか生まれないってことでもないんだろ?』

『男は成熟すれば群れを離れます』

『群れを離れてどうするの?』

『一人で海を彷徨います。一時的に男だけで群れを作ることもあるそうですが』


 カズラは器用に片眉だけ動かした。ガーネの話に引き込まれて知らず識らずにガーネへとにじり寄っていく。


『へえ。男の人魚が目立たないのは単独行動することが多いからなのかな。それで、君の言う限界ってのは?』

『繁殖期になると、男がわたしたちの群れにやって来ます。そして成熟した女の誰かに求愛をして、子どもを作り去っていきます。わたしたちは群れで協力して子育てをして、成熟した男は……』


 カズラは苦もなくガーネの言葉を引き受け続けた。 


『群れを離れる』

『はい。それを繰り返してわたしたちは続いてきました。けれど……』

『けれど?』

『わたしが生まれてから、男が群れに来なくなりました』


 ガーネの告白にカズラはぱちりと瞬きを止めた。目を見開いたまま訊ねる。


『え。何で?』

『分かりません。そんなことはこれまで一度もなかったのに!』


 ガーネの絶叫は蔓を通じてカズラの脳内を強烈にかき混ぜ頭痛となってカズラに苦悶をもたらしていた。しかしカズラはそれを一顧だにせず思案に耽った。


『男の群れに何かがあったのか、それともここに来るまでに障害が……。他の群れ……女たちとはやり取りしてないの?』

『しません。どこにいるかも知りません』


 ガーネが吐き捨てるように言う。あくまでカズラは穏やかだった。


『そっか。男は知ってそうだけど、まずその男がどこにいるか分からないしなあ』

『このままの状態が続けばわたしたちは皆いなくなります』


 ガーネは呻いた。それからすぐに震える両手で唇を覆った。言ってはいけないと自分に戒め続けていた言葉なのだろう。言ったら本当になってしまう。言ったら認めなくてはいけなくなってしまう。言ったら終焉から目を逸らせなくなってしまう。カズラにも覚えのある普遍的な現実逃避の有り様だった。ここでガーネがそれを言わないでいたら、カズラは口を噤んでいられただろうか。


『ここから出て男を探しに行こうとは思わないの?』


 無神経な一言にガーネは眦を吊り上げた。唇を覆っていた両手を力加減なしに地面へ叩きつける。


『簡単に言わないでください! 外の海を知らず、歌を失ったわたしたちが、どこにいるかも分からない男たちを探すことがどれほど難しいか……! おまえたち人間のせいでわたしたちの』


 言葉は最後まで続かなかった。ガーネの激高は始まりと同じように突然終わりを迎えたらしい。今やガーネは小刻みに身体を震わせたまま顔を伏せている。どんな表情をしているのか、やはりカズラには想像するのが難しい。ここまで追い詰めるつもりはなかったと弁明したところで、何の意味があるのだろう。どこまでも無責任な男の言葉に意味も価値もありはしない。

 カズラは苦笑いを浮かべて両手を掲げた。伝わるかどうかは謎だが手のひらをガーネへ向けて敵意のないことを示す。


『確かにそうだね。君たちがそういう生き方を選んできたのにもきっと理由があるんだろう。部外者の僕が口を出すことじゃない。悪かった』


 口早に言って、カズラは自ら蔓を切断した。戸惑うガーネを尻目に立ち上がる。


「また明日」


 と人間の言葉で言い残してカズラは洞窟から立ち去った。


◆◆◆


 二十七日目。もしかしたらもう二度と会えないかもしれないというカズラの不安は当のガーネによって解消された。カズラが常にはない緊張感と戦いながら洞窟で待っていると、朝焼けと共にガーネは姿を現した。

 浅海からガーネが上がってきて、鱗に覆われた下半身をカズラの隣に横たえる。それでもまだカズラはガーネにかける言葉が見つけられずにいた。やあと頭を空っぽにして呼びかけることすら困難だ。形容しがたい何かがカズラの唇を縫い付けていた。


『…………』

『…………』


 洞窟の外は満遍なく太陽の光に照らされている。二人は魔法の蔓で繋がって、しかし言葉を交わすことのないまま無為に窮屈な空間を共有していた。波音が、魚が海上へ飛び跳ねる音が、海鳥の鳴き声が、ありとあらゆる音がカズラから遠ざかる。そうして限りなくしじまに近付いていくのを阻止したのはガーネの素朴な呟きだった。


『……わたし』

『……うん』


 恐る恐る言葉を返す。これまでの碌でもない記憶をかき集めたところで優しい相槌なんて打てはしないけれど。ガーネは魔法の蔓を少し見て、そしてカズラを見据えた。薄暗い洞窟の只中にあっても黄金色の瞳はその輝きをもってカズラを射殺すようだ。己の、あるいは他者の一生を左右する決断を下した者のする目つきでもあった。


『恋がしたいです。子どもだってほしい。歌を失って……人間や、魔物に狙われてじきに滅びてしまうのだとしても、わたしはわたしたちを終わらせたくない。仲間たちはもう諦めてしまっているけれど、わたしは……わたしはこんな……終わり方は嫌です』

『そうだね』


 ガーネは一言一言を明瞭に発話した。カズラに許されたのはそれを聞き届けて頷くことだけ。


『男たちを探しに行きたい。でも、どこにいるかも分かりません。男たちに出会う前に死んでしまうかもしれません。ここを離れた途端に死ぬ可能性だって十分にあります。人間に捕まって、死ぬまで海に戻れないことだって……わたしは怖いです。何もしないことも、何かをすることも、どちらも恐ろしくて仕方がありません』


 そこまで言い終わると、ガーネは口を閉じてカズラを食い入るように見つめた。返事を期待されているのはさすがにカズラでも分かる。 


『……そうか』


 短いが、確かに返事ではあるはずだ。もちろんガーネの期待には沿えなかったが。


『…………それだけですか?』

『この期に及んで無責任なことは言えないよ』

『無責任でもいいです。何か言ってください』


 縋るようではなく、挑むように請われる。責任を負わされることには(そしてその責任から逃れることにも)慣れていた。しかし、無責任でもいいと焚き付けられたのは初めてだったので。カズラはかえって真剣な面持ちになった。内容がそれに伴っているかは別として。


『危ない目にもたくさん遭うけどさ、知らない世界を巡るのは楽しいよ。雪も見れるかも』

『本当に無責任ですね』


 ガーネが無邪気に笑う。対してカズラは珍しくしかめ面をした。


『何か言えって強いたのは君だろ』


 年甲斐もなく拗ねたカズラにガーネはますます笑った。カズラの耳をくすくすと甘く擽る。魅了の歌声の名残だろうか。惚けたようにガーネの顔を眺めた。


『ふふ、そうですね。あなたみたいな人間は他にもいるのでしょうか?』


 と訊ねられて、カズラは顎を引いた。やっと自信を持って答えられる質問をされたことに浮かれていた。


『もちろん。ごろごろいるよ』

『いえ……あんまり大勢いられても困るのですけど……』


 カズラの意気に反してガーネは言葉を濁した。苦笑いを通り越して苦渋の表情になっている。そこは喜ぶところなのではと指摘をするか否か。カズラは決めかねていた。

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