第6話
「あれ?さっきの人じゃない……」
通知から飛んでみると、私宛にコメントをしてきている人がいた。青空のアイコン、プロフィールには『レスで悩んでいます』の文字。お仲間らしい。が、想像と違ったのは……。
「男、の人、だよねこれ」
過去の投稿を遡ってみると、セックスレスの辛さが書いてあるがそれは夫側から見た妻への不満だった。そういうパターンもあるのか。
正直、そっちは考えたことがなかった。私みたいにセックスしたい、って思わない奥さんもいるのか。
私宛の文には『寂しいですよね。気持ち、分かります』と書いてあった。
わかってくれる人と繋がれた!!
私は嬉しくなって、すぐに返信した。
『こういう話って出来る友達がいないので、わかってもらえて嬉しいです』
すると、またすぐに返信がきて、LINEでもしているかのような、そんな気持ちになった。完全に親近感を持っている。
と、その彼からDMがきた。
『いきなりこちらに移行してすみません。たくさんお話したくて。ゆずさん、て呼んで良いですか?』
ゆずはとっさにつけたアカウント名。呼ばれることに照れを覚える。
『男の僕とセックスの話するの、抵抗あったら遠慮なく言ってくださいね』
そんな気遣いまでしてきてくれた。
『悩んでいるので愚痴を言い合えるだけでも嬉しいです』
そう送ると、彼からは『早速ですけどひとりエッチとかしてます?』と返信が来た。
「……え、直球……っていうかそんなこと聞いてくる?」
思わず独り言が漏れる。なんて返すのが良いんだろう。悩んでいると、彼からはもう次のメッセージが届いていた。
『よかったら今、通話しません?今、嫁いないんです。ゆずさんと、お話ししたいな』
「いやいきなり距離詰め過ぎやろ」
関西人でもないのに関西弁が出てしまうぐらい驚いて、なんなら鳥肌がたった。これは……よくない気がする。
『ごめんなさい、こっちは隣に主人が寝てるので……』
『そうか、なんだかがっついてごめんなさい。僕もレスの話ができる人となかなか出会えないから』
『そうだったんですね。このままメッセージのやり取りでしたら、もう少し続けられますよ』
『ほんと?嬉しいな』
ちょっとずつ、口調が砕けてきた。慣れてるなこの人、と思うと同時にさっきまでの高揚感が消えた。
『女性もひとりエッチするでしょ?僕の嫁は全く、そういうのも無し。性欲ないんだと思う(苦笑)ゆずさんはどう?』
『どう、って?』
なんて答えたら良いのかわからなくて、はぐらかした。
『一人で、触ったりする?』
(あ、この人に聞いてみればいいのか、やり方!会ったことない人だし、聞くの、恥ずかしくない、よね?)
勇気を振り絞って、文字を送った。
『したい、とは思うんだけど、やり方がわからなくて(苦笑)』
真似して(苦笑)をつけてみた。これで困っている感じが伝わるだろうか。
『やり方?おもちゃとか持ってないの?旦那さん、セックスの時使ってきたりしない?』
『おもちゃ?』
『おおっと、ゆずさん、もしかしてめちゃくちゃ健全な人?』
返信に困っていると、すぐに続きが送られてきた。
『こういうの、持ってないの?』
写真が添付されていて、そこにはピンク色のモノが写っていた。
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