第4話
検索してみたら、どうやらセックスレスの人は男女問わず結構いて、それぞれ愚痴を言ったり対処方法を模索していたり。読む専のアカウントを持っているSNSで『レス』と入れるとそれだけでかなり引っかかった。
「この人……」
目に止まったのは『結婚2年目、セックスレス。』とプロフィールに書いてあるアカウントで、アイコンは何やら可愛らしい鳥のキャラクター。
固定された文面には、『彼のことが今も変わらず大好きだけど、ここのところお誘いしてもしてくれません。寂しい30代女性。フォローお気軽に。』と書いてあった。
「いるんだ、おんなじような人」
その人は毎日、彼と同じ布団に入る辛さ、自分から誘って断られる辛さを書いている。これは、よく分かる。
「ねえ」
「……ん?」
隣に潜り込んで、甘えるように身体に手を巻きつける。耳のそばに口を寄せ、恥を偲んで濡れたような声で小さく言う。
「今日、したい、な」
彼はゆっくりとこちらを向いて、困ったように笑うのだ。
「ごめん、明日仕事早いんだ」
ちゅっと音を立てて唇を頬に当てられる。そして彼は眠そうに私に背を向ける。
この時の胸に走る痛みは、なんて言葉にすればいいのだろう。ぎゅうっと締め付けれるような、胸を掻きむしりたくなるような、大声で叫びたくなるような。
私はイイ子でいたいので、その背中に「私こそごめんね」と小さく呟いて、目を瞑る。泣きたいのを押し殺して。
こういうことが続いて、誘うのが怖くなった。
たまに求められてするけど、ちょっと触られて、挿入されて、彼がすぐイって終わり。
セックスって、愛を確かめあったりするんじゃないの?
この人に話しかけてみたい、と思ったけれど自分のアカウントでする勇気がなく、しばし悩んだ結果、このために別アカウントを作ることにした。
アイコンはどうしよう。
可愛い女性の写真とかイラストが多いのね。意趣返しに、彼が褒めてくれる耳の写真にしてみようか。慣れない自撮りをして、顔が見えないようにモザイクをかけると、何やら卑猥な雰囲気になってひとしきり笑った。
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