第3話
した後は一緒にシャワーを浴びて、そこでさらに鳴かされたりしたのはいつまでだっただろう。
結婚してすぐ、そういうお誘いが無くなった。
(付き合って最初の頃はまあまあ盛り上がってたのになあ)
身体の相性は決して悪くない。彼のモノがイイところに当たって、泣きながら悶えたことも多々ある。
前戯は正直上手くないけれど、それでも一樹とするセックスは気持ちよかったのだ。
その頃のことを思い出して悶々とするぐらいには、めっきり抱かれていない。今日もソファーに座る彼の太ももを撫でたりしてみたけど、その手を握られ、二人で並んで映画を観るだけだった。
「おやすみ」
頬にキスされて、置いて行かれた。ベッドへ向かってしまった彼にため息をつく。
困っているのは、性欲が以前よりある、ということだ。
『30代 女 性欲』
検索して、出てきたフレーズに思わず笑った。
『「30代の性欲、舐めんな」』
「ほんとその通り」
小さく呟いて、寝室の方へと目をやった。舐めんな。女にだって、性欲はある。
立ち上がってリビングの電気を消した。カーテンも閉めよう。寝室のドアはきっちり閉まっているか確認して、なにやら重大なミッションをこなしているような気持ちになってきた。
真っ暗すぎるのもなんだか苦手なので、キッチンの小さな電気だけつけておくことにする。
準備万端。
ソファーに座り、悩んだ末、ずるりと床へ腰を滑らせた。
万が一、一樹が起きてきた時に見られないように。死角へ。ソファーの足元へ寄りかかるようにして、一度、深呼吸をした。
(……えっと……どうすればいいんだろうか)
今からやろうとしていることを、私は、したことがない。
(一樹、のマネしてみればいいのかな)
Tシャツの裾から手を入れてみた。サワサワと撫でてみるけれど、驚くほどなにも感じない。
目を閉じて一樹を思い浮かべようとしたけれど、そういうことがご無沙汰なせいで浮かんでこない。
いやそれもどうなの?と焦れば焦るほど、どんなふうに抱かれていたか思い出せなくて焦った。
「……だめだ」
セックスしたい、って気持ちだけだと、ひとりエッチはできないらしい。
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