228.(幕間)ばっかじゃないの!
「待ってよ! なんでアウグスト様が悪いの? その人が勝手に間に入ったんじゃない!」
宣戦布告だの謝罪だの、この女おかしいんじゃないの? 金髪美女だからって何でも許されると思わないでよ! そもそも赤ワインを被るのはいけ好かない悪役令嬢のはずだった。割り込んだくせに文句を言うなんて! 頭にきて叫んだ私に、金髪イケメンが口を挟んだ。
「勝手に? この夜会に招待されたシュトルンツの王族に対し、なんたる無礼な物言いですか。軽い口を開く前に、よく考えなさい」
女性っぽくないのに綺麗な顔が、嫌悪に歪む。全部、金髪女のせい! 睨もうとして気づいた。きっとか弱い女を演じたら、私の味方をするはず。今まで第二皇子や取り巻きはそうだった。私が強気で叫んだから、嫌な顔をしたんだ!
あんたから、そのイケメンを奪ってやる。
「なんでぇ、そんな酷いこと言うんですかぁ……私はぁ、被害者なんですぅ」
語尾を伸ばして甘えるように上目遣いで見上げる。男はこれに弱いのよ。知ってるんだから。助けたくなるでしょう? 隣で第二皇子が睨むけど、無視。だって顔は断然金髪イケメンのが上だもん。お金持ってるから第二皇子と結婚するけど、美形との愛も欲しい。
皇帝陛下のおじさんが何か言ったけど、青ざめて黙った。金髪女は私に「非常識」だの「立場を弁えろ」と命じる嫌な口調で捲し立てた。お気に入りのイケメンを取られそうで焦ってるんでしょ。いくら美人だって、私の異世界チートの方が上だし。
金髪女に赤ワイン、今考えると良かったかも。ただイケメンに掛かったのは惜しいな。でも拭いてあげると誘って、そのままワインの香りに酔ったフリで口説いちゃえばいっか。
そもそも何を喚いてるのよ、この女。王族と皇族なら「皇族」の方が偉いの。ただの王族に過ぎない女が、未来の皇妃になる私に対して無礼じゃない。そう言い放った途端、周囲がざわりと揺れた。
男爵令嬢がこんな複雑な話をするから、感心しちゃった? 結構頭いいと思うよ。日本でも天皇陛下はエンペラーで、王様のキングより上だと聞いた。物語でも「隣国」なんて一言で片づけられる程度の国が、私に歯向かうのは100年早い。
当たり前すぎる事実を話すと、淡々としちゃうわよね。馬鹿相手に話すんだもん、疲れちゃうよ。
「ほら、何も言えないじゃない! 次期皇妃の私の方が偉いのよ」
「レ、レオナ?」
変な声出さないで。でも私を皇妃にしてくれるから、第二皇子は大事にしてあげる。目の前で固まった金髪女は反論もない。なぜか味方のはずの貴族や皇帝も崩れ落ちてるけど。
「我がシュトルンツは、このルピナス帝国の5倍以上の領土を誇る大国です。皇族が上などと愚かな発言を取り消していただきたい。大使として正式に抗議いたします。もし撤回されない場合、ルピナス帝国は地図から消えることになるでしょう」
冷めた口調と眼差しが痛い。イケメンは私の言葉を全否定した。当然のごとく守られる金髪女は、扇を広げて顔を半分隠す。すごく厭味ったらしい仕草で腹が立つわ。
ルピナス帝国の名前をいつまで耳に出来るか? どういう意味なの。眉を寄せた私の耳に、崩壊の予言だの亡命と言った物騒な言葉が届く。これだけの大国が滅ぼせるわけないでしょ! ばっかじゃないの!
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