181.(幕間)逃げ出せぬ地獄

 祖国ヴィンターが滅んで、すぐに兄弟姉妹はバラバラになった。嫁いだり下賜された姉達を気の毒に思っていたけど、それ以上にひどい環境へ放り出される。


 すぐ下の妹は競売に掛けられ、祖父と呼ぶ老齢の男に買われた。男女関係なく、次々と奴隷に堕とされていく。何人か行方不明も出たし、一族はバラバラだった。


 元から仲の良い子は限られている。その子達さえ無事なら、そう思った。逃げて捕まり、王族は罪を償うべきだと言われる。豪華な生活の裏に、民の不遇があったのだと。私の生活のどこに、豪華や絢爛があったのか。


 食事だけは与えられたが、代わりに男であれば誰であれ、断ることなく足を開くよう命じられた。客人ならマシだ。二度と会うことはないから。ハレムは本来、皇帝のための花園なのに。いつからか、金を積めば男も出入り自由の娼館になっていた。


 捕まり犯された後、それが兄だと知った日もある。廊下まで響く悲鳴に、覗いた部屋で行われた蛮行に目を覆った日も。第21王女、その肩書きは奴隷の記号と同じだった。まだ初潮も迎えていない異母妹が、廊下や庭で犯される。女だけじゃなく、男でも安心できなかった。


 幼子の尻に精を吐き出し、血塗れの異母弟を放置する貴族。鞭打ち泣き叫ぶ姿を楽しむ嗜虐趣味の商人。襲われたくなければ、死ぬしかない。いえ、死んだとしても犯されるだろう。


 これが日常だった。王子王女だけでなく、皇帝の愛妾や妃達も自由に抱ける。生まれてくる子が、誰の子か。判断する術はなかった。民が怒って、反逆の狼煙を上げるのも当然だ。こんな爛れた王族を支えるために、働いているのではない。その気持ちも理解できた。


 囚われて売られる。最初の飼い主は変態だった。私を鎖で繋ぎ、獣に犯させる。それを見て興奮するだけ。少しすると「新鮮さに欠ける」と売りに出された。二度目の飼い主も、頭がおかしい。食べ物を私の体に塗りたくり、穴に詰め込むのが大好きな男だった。最後に舐めて食べ尽くす。でっぷり太った体は、女を抱けないらしい。


 そんな変態から私を買い取ったのは、最後の飼い主だった。数回普通に抱かれて、拍子抜けする。着飾らせて満足げに微笑み、魅力的な言葉を投げかけた。


「なあ、売られた兄弟姉妹を助けたくないか? 王族らしく、せめて人間らしい生活をしたくないか」


 したいに決まっている。誰が好んで奴隷生活を続けたいものか。王族らしいの定義は分からない。飼い主は強国の貴族だと言った。協力するし金も出すから、シュトルンツ国に囚われた同族を救い出せと。










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23:40頃、この続きをもう一話更新します_( _*´ ꒳ `*)_

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