178.それは神のみぞ知る未来
第一皇子ユルゲンに関しては、将来的に傀儡として使う予定もないので幽閉とする。痺れ薬の代償としては、安い方だと思うわ。もし私の肌に触れていたら、手首から先は磨り下ろされたでしょうし。五体満足で自由を制限される程度なら、罰としては軽い。
第二皇子アウグストとその愛人レオナは、混乱の責任をとって断首刑となった。刑罰としては妥当かしら。エンゲルブレヒト侯爵令嬢との婚約破棄で、皇室の威信を地に落とした。それも愛人との浮気で……貴族より国民の方が怒りに湧き立っている。
クリスティーネは外交が得意なだけあり、婚約者の不貞に気づいてから地盤作りをした。一方的に悪者にされないよう、行動は常に他の貴族令嬢と共にする。王都の屋敷に戻れば、帝国民の不満をよく吸い上げて手助けした。
悪役令嬢なのに、前世の記憶があるお陰で聖女様扱いよ。婚約者を変えるのではなく、周囲を手なづける手法は参考になるわ。有能な外交官である父親の影響ね。転生者はこの世界に馴染むための時間が長い。事前に手を打ってくるのは、当然だった。
いいように婚約破棄されて、物語の通りに終わるような方々なら、私が欲しいと思うはずがない。有能で誇り高く美しい、だから手に入れたいんだもの。
聖女と崇める美しい侯爵令嬢を貶めた皇子と愛人、帝国民の怒りを解消するために石投げ刑も検討された。死ぬまで石を投げつける刑罰だけど、魅了が使えるレオナを民の前に置くのは危険だわ。万が一にも魅了されて、盤がひっくり返る可能性がある。
一瞬で首を落とす断首は確実で、安全だった。生き残れる希望を残すほど、親切じゃないわ。ここで皇族の処刑は終わり。
皇帝陛下は、すごく軽い罰を用意したわ。皇族が所有する別荘への追放よ。すごく温情溢れる采配でしょう? きっと民はこう考える。皇帝陛下は息子達の愚行に巻き込まれただけ。だからシュトルンツや新皇帝も厳しい罰を与えなかった。
ええ、そうよ。彼は何も償う必要なんてない。ただ邪魔なだけだもの。ならば邪魔されない遠方へ投棄したらいいわ。捨てる道中で、何か事故が起きても……私達は関知しないけれど。
盗賊、崖崩れ、橋が落ちたり、病だってある。世の中は危険がいっぱいで、宮殿を出た皇帝がどうなるかなんて……私が知るはずないでしょう? 知ってるとしたら神くらいだわ。
皇妃や側妃、皇子妃は実家へ帰すことになる。離宮に残られたら、獅子身中の虫になる可能性が高かった。アンジェラやエトムントに、余計なちょっかいを出すかも知れない。皇女はいないから、これで宮殿の掃除は終わりね。
さらさらと記した予定を、クリスティーネに差し出す。エレオノールと一緒に覗き込み、仲良く二人で目を通した。あとでユリアにも知らせておきましょう。手元の紅茶を引き寄せて、銀匙を差し込む。いつもと同じ香りの紅茶を一口、ソーサーへカップを戻した。
やっぱりテオドールのお茶が一番美味しいわ。早く戻って来なさい。
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