第73話 醤油と味噌

 カウンターには若い女性の姿があり、彼女は私達に笑顔を向けた。

 その女性を見た瞬間、私は目を見開いてしまう。彼女の容姿があまりにも美しかったからだ。髪は茶色で肩までの長さ。瞳は綺麗な青色をしている。

 肌は白く、スタイルも抜群だ。年齢は20代前半くらいに見えるけど、落ち着いた雰囲気のせいかもう少し年上にも見える。


 胸も大きいな。

 セアラと同じくらいかな?

 別に悔しくなどない。


 とにかく美人さんだ。


 そんなことを考えながら彼女を見ていると、その女性が口を開く。

 どうも彼女が店主のようだ。名前はサラというらしい。私達は彼女に促されるままテーブルについた。

 そしてサラさんは私達の前にある椅子に座ると、真剣な表情で語り始めた。

 どうやら彼女もこの領を豊かにする為にいろいろ考えているようだ。

 屋台で売っている串焼きだが、現在は塩などの香辛料を振りかけているが、本当はというものを使って焼いているものなのだとのこと。

 そしてそのを作る為に必要なものが今この領にはないそうだ。

 なので、それをなんとか手に入れたいと考えているみたいだけど……


 そこで私はあることを思いつく。

 全集に載っている醤油ってのがあれば作れそうな気がする。大豆があるかどうかわからないけど、一応聞いてみよう。


「あの…… 大豆っていう豆みたいなものはありませんか?」

「え!? そ、それが何かはわかりませんが、豆ならいろいろありますが?」

「本当ですか!?」

「え、えぇ……」

「じゃあ……作れるかもしれませんね!」

「ほ、本当に!?」


 私は笑顔で大きくうなずく。そして、早速調味料作りを始めることにした。

 大豆はサラさんが準備してくれたいろんな種類の豆から選別したよ。飢饉の前から豆は押しなべてすべて「豆」で種類なんて気にしてなかったんだって。


 まずは醤油と味噌を作ってみることにする。この二つの作り方について説明し、実際に作業を行った。私がやったのは麹菌の培養と大豆を蒸すところ。

 麹菌は以前作った時に種菌があったから簡単にできた。

 蒸しあがった大豆と水を合わせ、かき混ぜていく。

 

 これで大豆は完成!

 

 次は醤油の元になる液を作り始める。

 ここで大事なのは温度管理だ。麹菌は高温に弱いので、65度以上にならないように注意しなければならない。その温度を一定に保つために、鍋の下に火属性魔法陣を敷き、その上に大きな鉄の板を用意した。そこに鍋を乗せる。その状態で魔道具のコンロを使い、加熱していく。すると徐々に熱を帯びていき、やがて70度程度になった。


 これぐらいの温度が丁度いいのだ。

 ここまできたらあとは待つだけ。


 待っている間に他の材料の準備に取り掛かる。

 味噌の方はまず麦の脱穀を行う。これはセアラがやってくれた。

 で、麦の穂の中身である大粒の実を取り出す。

 この実を潰して乾燥させ、さらに細かく砕いて粉にした。次にその粉に水を加えて練り上げ、生地の状態にする。

 その生地を団子状に丸めて寝かせる。

 この時、寝かせている間は火属性魔法の炎で温めておく。

 この作業はセアラがやってくれた。

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