第66話 星になるんだね

で、我々は次の目的地に向かっている。その道中、セアラがラノベさんに質問をした。

それは、なぜ私たちについてくるのかというものだった。

セアラがそう思うのも当然だろう。

普通、出会ったばかりの人にこんなことを言われたら、警戒するよね。

しかも、明らかに怪しい格好しているし……

それに、目的もよくわからない。

ラノベさんは答えてくれた。

ラノベさんはこう言った。

自分は冒険者になりたいと思っていると。


商人なのに?


そのためには、強くならないとダメだということもわかっている。

だけど、どうすればいいのかが分からなかった。


まあめっちゃ強いんだけれども…

ようわからん


まあいいか


さて、そろそろ村が見えてくるころだけど。

私はふと思い出した。この道は…

この先は…


私の生まれた村じゃないか!!


「スト――――っプ!

 とまれ!!!

 ちょっと、この先の村って…」


「はい、ご存知の通りシャーナ様が生まれた村ですね」


おいタミコ

なんだその当たり前じゃん的な答えは…


「そうだよね? やっぱそうだよね?? だからここは行かないほうがいいよね? やめよう! よし! 反転!!」


「え? え? どゆことです?」


セアラはまだわかっていないようだ。

無理もない。

この村は特殊な環境にあるからね。


私にはこの村に近づきたくない理由がある。

しかし、もう遅い。

村の門が見えた。

そこには懐かしき面々が立っている。

って、何あの集団……

なんか人数増えてるんですけど!?

そして先頭にいるのは……

母上ぇ~!!

なんでそんな嬉しそうな顔してるんだよぉ~!!

なんなんだよあれはぁ~!!

くぅ~!!


私は頭を振った。

落ち着け私!

大丈夫だ!

まだ間に合うはずだ!

私は馬車を止めて、御者のタミコに言った。

このまま引き返してくれと。


だが、タミコは首を横に振る。

タミコが言うには、村の人たちが集まっているらしい。

きっと歓迎の準備をしているのだろう…

ダメなのよ

この村の歓迎…

絶対に受けちゃいけないのよ あそこは私が生まれて育った場所だ。

だが、今は行きたくはない。


とにかく嫌なのだ。

私はもう一度タミコを説得しようとした。

すると、ラノベさんが私の肩を叩いた。


なんですか?

今忙しいんだけど。


ラノベさんは私を見て笑っていた。

何か言いたいことがあるらしい。

どうしたのだろうか?

私はラノベさんの口元に耳を寄せた。

すると、彼は小声でこう囁いたのだ。



「ここは、俺に任せてください!」


…………はい??


どういうこと??

何を言ってるの?


「実は私も村の歓迎を受けたことがあるんですよ」


いや、そうなの?

それが何か関係あるんでしょうか?


「あの時は本当に大変だったんですよ! でも、なんとかなりました! なので、今回も大丈夫ですよ!」


はい??


全然意味わかんないんですけど??

そもそも、あなたが歓迎を受けるわけじゃないでしょ??


「大丈夫です! 安心してください! 私が身代わりになります!」


まじか…

ラノベさん、ありがとう

星になるんだね…

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