第56話 熱いけど大丈夫よ!

「村長さーん!」


 どっせい!


 村長さんの部屋の扉を開く。


「おお! シャーナ様、どうされましたかな?」


「実は、大事なことを聞き忘れていたんです」


「ほう、なんでしょう?」


「村で、何か特産物はありますか?」


「ええ、もちろんございますよ。 うちで育てているナパという野菜ですなあ」


「ナパ?」


「ええ、菜葉のような見た目をしているのですが、味は甘みがありとても食べやすいものです。収穫時期になると、真っ白になりそれは綺麗なものですよ!」


「おお! いいじゃないですか! ぜひ、それをください!」


「ええ、お渡ししたいのはやまやまなのですが… 飢饉で全く収穫ができておらんのです… 申し訳ございません」


「え? そうなんですか!?」


「はい…… 今は、村人たち全員で狩りをして飢えをしのいでおりますが、このままでは冬が越せなくなってしまいます」


「そうだったんですね。 わかりました。 とりあえず、今日はミノタウルスの肉があるのでこれを使って美味しいものを作りましょう!」


「ええ?! ミノタウルスの肉ですか!!」


「ええ、大丈夫ですよ。 私たちが倒して解体しましたから」


「ええええ!!!」


村長は驚きすぎて、声が出なくなってしまったようだ。

そりゃあ驚く


「あの…… シャーナ様たちは一体何者なんでしょうか?」


「うーん、そうですねえ。 ただのお使いで、たまたま強い仲間がいただけですよ。

 あはははは」


「そ、そうですか……」


村長さんは苦笑いをしていた。


私たちは、台所に戻る。


さて、できてるか?!


デレク! まだなのかよ!

ん? 待ってた? なんで?

全集見ろ?

載ってねえよ、野菜全集だよ!!

この本は野菜の本!!



そして、お肉を切って行く。

今回はミノタウルスのステーキを作ることにした。

お肉はレアで焼くのが一番おいしいからね!


「セアラ、アンドリューたちを呼んできてくれる?」


「はい。 わかりました」


アンドリューたちも台所に来ていた。


「アンドリュー、ピアラちゃん、ちょっと手伝ってくれるかな?」


「リーフ!」

「ピーピ!」


アンドリューとピアラは元気


「よし、じゃあ始めるよ!」


まずは、塩胡椒を振る。次に、小麦粉をまぶす。

これで下準備は完了。

次はいよいよ、調理開始!

フライパンに油を引き、強めの火で熱する。

そのフライパンにミノタウルスのお肉を乗せる。


「アンドリュー、ピアラ、そこにあるナイフでこのお肉を一口サイズに切ってくれる?」


「リーッフ!」

「ピーッピ!」


ジュウウ!

焼ける音が鳴り響く。


「アンドリュー、できたわ! こっちに置いてちょうだい」


「リフ!」


アンドリューとピアラが切った一口サイズのミノタウルスのステーキをお皿の上に乗せる。


「セアラ、そこにあるフォークでこれを刺してみて」


「え? いいのですか?」


「いいから早く!」


「は、はい!」


セアラは言われた通りにフォークで肉を刺す。


「熱いけど大丈夫よ! はいどうぞ!」


そう言って私はセアラにミノタウルスのステーキを差し出す。


「いただきまーす!」


パクッ!!


「あつっ! あ~… おいし〜!」


セアラは満面の笑みを浮かべる。

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