第21話 ごきげんよう、おさようなら

 レオシュ様の部屋に行く。

 部屋に入るとクレートさんもいた。


 あれ?


 なんか深刻な雰囲気が漂っているぞ……


 レオシュ様から言われた言葉。

 それはとても衝撃的な内容だった。


 フリンザ領では代々この館の書庫に保管されている魔導書を管理しているらしい。


 それが数代前に盗まれたそうだ。


 それもかなり重要な魔導書が数冊。


 領主がそれを失ったということは、この国の損失に等しい。


 ってことで内緒にしちゃったらしいんだよね、それを。


 やるなぁ、領主。

 って、言ってる場合か


「で? それを私になぜ聞かせたんです?」


 聞きたくなかった、できれば知らずにおきたかった。

 そう思ってたら


「本当にね。できれば君にだけは知られたくなかったよ。でもね、この話をしないわけにはいかなかったんだよ。その盗まれたとされる魔導書がね、精霊の召喚魔法とその精霊の祝福を使うための魔導書なんだよ」


 え? それって?


 レオ主様の視線の先には、アンドリュー。


 お前かあ。

 なんで退屈そうにあくびしてんのよ


「あ〜、アンドリュー」


「うん。おそらく、いや確実にね」


 レオシュ様はそう言うと私に向かって


「で、ここからが本題ね。シャーナ、君を正式にこの領で雇うことにするよ。精霊魔導士としてね」


 え? ええ?

 私? わたしゃただの歴史書好きの女ですよ?


「いいかい、シャーナ。国にこのことが知られると本なんか読めなくなるよ、一生国のためにアンドリューと共に働かされる」


 くぅ!

 わかってるよ

 わかってるんだよ


 うすうす気づいてたよ…


「それにね、この飢饉を脱するには君の力が必要なんだ。もうそれくらいはわかっているだろう。いずれ君の力が国に知られる。このままではそうなったときに君を守ることができないんだ」


 うん

 そうだよね


 レオシュ様、ありがと


「わかりました。謹んで承ります」


 そう答えた。


 パンッ! と手をたたくレオシュ様


「さ、とりあえず君の処遇が決まったところであとは朝食をとりながらゆっくり話そうじゃないか。早速作ってきてくれる?」


 くっそおおおお

 これまでは一応客人扱いだったのに…


 くやしい

 釈然としない


 が、しかたないよね


「はーい」


 その時、私の後ろに冷たい視線を感じる。


 ッハ!


 いつの間にいたんだ、クレートさん!


「シャーナ様。旦那様に対してその口の聞き方は不遜ですよ。おお、そうでした。本日よりシャーナ様にはメイドと護衛が付きますのでご承知ください。ああ、それから礼儀作法の時間も必要ですかな?」


 うへぇ


 勘弁してくださいーー!


 とりあえずここは


「あ、ああ。おレオシュ様、朝食のお準備をしてまいりますわね、それではごきげんよう、おさようなら」


 急いで厨房に向かう。

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