第16話 おっちゃんのうっとり顔は

 「はい、実はパンプキを使ってスープを作ろうかと思ったんですがバターやミルクがなくて」


 とカーゴシェフに説明する。


「おい、デレク。てめえ材料準備せずに料理をはじめちまったのか!? それでなくても飢饉で材料がないって言うのに何考えてやがんだ!!」


 こっわあああああ!


「すみません、シェフ。シャーナ様がいきなり始めてしまって」


 あ、ばか! この手の人に言い訳は逆効果だ。

 イケメンなのに知らないのか?


「うるせえ。言い訳すんな!」


 ほらね。


「はい。すみません」


 イケメンしょんぼり。

 悪かったなあ、ごめんね、デレクさん。


「シェフ。申し訳ありません。いろいろ野菜を見せてもらったので、よし作っちゃえってなっちゃいまして。ごめんなさい」


 私は素直に謝れる。セーフ!!

 そこの残念イケメンとは違うのだよ。


「あ、ああ、いや、お嬢ちゃんが謝るこっちゃねえ。食材を管理するのは俺らの仕事だ。うちのバカが管理を怠ったのが悪い。それに俺もな、久しぶりになんだかうまそうな匂いに釣られてきたんだ。すまなかったな」


 おお、シェフ。いい人じゃないか!

 やっぱり料理人には気遣いが必要よね!

 ってことで。


 ニコッ


 あれ?

 今度は大丈夫だったみたい。


 カーゴシェフの頬が少し緩んだような気がする。そして、私の肩に乗っているアンドリューがシェフに向かって、


「リーフ!」


 と声を出した。


 うん?


 もしかしてシェフにもご飯のお誘い?

 さすがアンドリュー!

 わかってるぅ〜。


 シェフが目を丸くしてアンドリューを見ている。

 そういえばアンドリューのこと紹介するの忘れてた!


「シェフ、この子はアンドリューです。今回の畑の事件は彼の力なんですよ~」


「ん? …………!! おい、お嬢ちゃん、こいつはもしかすると精霊様じゃねえのか!?」


「ええ、そうですねえ。レオシュ様もそんなことを言ってましたけど、よくわかんないんですよねえ」


「そ、そうなのか、驚いた。あ、ああ、そうだ。お嬢ちゃん、いやシャーナ様よ、バターとミルクって言ったか。あるぞ」


「え? あるの?!」

「おう。たまたまさっき手に入れたところだ。だがな、これは今日からのレオシュ様の食事に出されるものだからな。簡単には使えね」


 ポットを奪い取った私はミルクをフライパンに注いでいく


「おおおおおおい! お嬢ちゃん! そりゃあダメだ!」


 カーゴさんが不安そうに見てくる。


「気にしない気にしない! レオシュ様には何使ってもいいって許可とってあるんだから!」



 するとフライパンからうっすらと湯気が立ち上り


「なんてすばらしい香りなんだ」


 カーゴさんとデレクさんがうっとりしてる。

 あ、アンドリューも。


 イケメンはまだしもおっちゃんのうっとり顔は遠慮したい。


 それよりも!!


 そ・れ・よ・り・も!!!!


 なんだこの甘い香りわ!!!!!

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