第3話 恐竜のような生き物

夜……






「うぃ〜〜〜、もう一軒行くぞ〜〜〜」

先輩せんぱい、飲み過ぎですよ〜〜」

人気ひとけのない路地裏ろじうらで2人組の男性が歩いていた。

「店はぁ〜〜お、人々の声が聞こえるぞ〜〜店はあの角を曲がったところだな」

「え、あんなところに店なんてありましたっけ〜〜?」

「きっと新しくできたんだよ。早速行こう〜〜」

1人が走っていった。

「ちょっと、待ってください〜〜〜」

もう1人は慌てて追いかけていった。



しかし、角を曲がったが、なんとそこには林があるだけだった。店なんてものは微塵もない。

「あれ?人々の声が聞こえたから店かと思ったんだが……」

「ゼェハァゼェハァ……ってあれ?店は?何もありませんけど……」

2人がキョロキョロしていると、急に林の木が揺れた。

すると、恐竜が出てきた。体色は緑色をしていたが、やがて灰色に変わった。

「⁉︎な、なんだこいつ!」

恐竜は人々の声の音を鳴らした。

「もしかして音源はこいつか⁉︎」

「逃げましょ先輩!」

流石の2人も酔いが覚めたのか、一目散に走った。

「グオンッッグオオオオオオオオオオン」

恐竜は2人を追いかけた。

「ゼェハァゼェハァ…ん?」

1人の背後にはもうすでに恐竜のような生き物がいた。

「は、速⁉︎」

そう言った瞬間、1人は恐竜に巨大な手で掴まれた。

「せ、先輩!」

「おい!お前は先に行け!」

「で、でも………」

「いいから早く!!!!!!!!!!!!」

「…………はい!」

掴まれた人は自身の周囲に針を出現させた。

「喰らえ!」

針は恐竜の体に突き刺さった。が、なんと器用に巨大な手で抜かれてしまった。

「ヤバい!」

しかも、傷もすぐに治ってしまった。

「ゼェハァゼェハァゼェハァゼェハァ」

もう1人は必死になって逃げていた。後ろから恐竜が追いかけてくる。

恐竜は口を開けると、長い舌を伸ばして逃げていたもう1人を捕まえてしまった。

「あ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

もう1人を口に咥えると、そのまま投げ飛ばした。

「……そんな……、やめてくれ!やめてください!お願い!!!!!!」

残された1人は願った。しかし、そんな願いも叶わず、地面に叩きつけられてしまった。

恐竜は雄叫びを上げると、のしのしと歩いていった。






「朝のニュースです」

高島と姉の高島清香たかしまさやかがパンを食べながらニュースを見ていた。

「昨日夜、東京都目黒区荒川河川敷で男性が倒れているところを発見されました。男性は呼吸困難になっていましたが、通行人によって発見され、病院に搬送はんそうされましたが、その後死亡しました」

「全く、犯人はどんな顔なんだか……」

清香がオレンジジュースを飲んで言った。

「ってか、あんた友達とハム園に行くんじゃないの?」

「あ、そうだった。まずい!準備してない!」

高島はパンを咥えながら支度をした。

「行ってきまぁす」

高島が出ていったあと、清香はテレビを見た。

「東京都世田谷区下北沢で地面に倒れている男性が発見されました。意識不明の重体です」

「相変わらず、野蛮な世界だなぁ……」

清香はそう言うと、テレビを消して、バッグを持って出かけていった。



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