第5話 「明日香の意図」
「本気のつもりなんだが……。すまん。今の発言は取り消してくれ。疲労で頭がどうかしてるみたいだ」
転生五日目、遂に祐利が私との結婚を認めたかに思えたが、正気に戻ってしまったようで結局祐利と結婚することはできなかった。
なんでこんなに慎重なのよ……。
別にノリと勢いで結婚するって言ってしまってもおかしくないような状況だと思うんだけど……。
まあ慎重なところも祐利らしいけど。
『あなた名前は?』
『……祐利だ』
『--祐利?』
隣の牢屋から声が聞こえてきて、その声の主に名前を聞いたときは正直驚いた。
私が元いた世界の幼馴染と同じ名前だったのだ。
転生して声こそ変わっているものの、祐利という名前の男性は中々いない。
私と同じようなタイミングでこの世界に転生されたとなれば、恐らく隣の牢屋にいる祐利と名乗った男性は私の幼馴染の祐利で間違いないのだろう。
壁越しとはいえ、祐利とこうして会話をするのは久しぶりだった。
私がイジメの標的にされるようになってから、私の方から祐利と距離を置いていたからだ。
祐利は私が自ら祐利と距離を取っていることは気付いていないだろうが、私の自分勝手な行動に祐利まで巻き込むわけにはいかないと私の方から距離を取った。
祐利のことだから何もしてあげられなかったと責任を感じているかもしれないが、私は祐利が私に気付かれないように、私が助けようとしていたイジメの標的になっていた生徒を助けていたことを知っている。
誰にも気付かれないようにイジメられている生徒とイジメっ子の距離を取ろうとしたり、隠されていたシューズを探し出してイジメられている生徒の下駄箱に戻したり。
そんな優しい祐利だから、私は結婚したいと考えている。
しかし、現実世界の現状では私たちが結婚をするのは難しい状況だ。
だからこそ今ここで、この世界で私は祐利と結婚しておく必要があるのだ。
それなのに、祐利ときたら全然結婚することに同意してくれないし……。
いや、私も理解してるよ? 祐利が私と結婚しようって言ってくれないのは私を牢屋から逃がすためだって言うのは理解してるんだけどね?
でももう真っ暗な牢屋に閉じ込められて五日目なんだからそろそろ結婚に同意してくれてもいいころだと思うんだけどなぁ。
はぁ……。
祐利が私との結婚に同意さえしてくれれば、今すぐに牢屋の外にでられるっていうのに……。
こうなったら私の方から奥の手を仕掛けるしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます