第41話 妻達
告白から二週間が経過した。
元々家族がいない俺達は、本妻であるユーリが見守る中、ミレイアさんと数人の仲間達が見守れ、二度目の結婚式を行った。
中でもクルナの結婚に大喜びして大泣きしたセリスさんと、娘のミーシャの結婚に大喜びして大泣きしたミレイアさんが微笑ましかった。
更に二週間が経過して、俺達の結婚により、色々変わった事がある。
まず、ユーリ。
彼女は魔法ギルド内でも実力が高く、今では正義の象徴の一角でもあり、英雄辺境伯様の娘として有名となり、美人さも相まって王国民や仲間達からとても慕われる存在となった。
心の拠り所だった母は、辺境伯様と共に地方に行って、心配にはなったが、俺の傍ならと張り切りすぎて心配になるほどだ。
魔法ギルド内では、ギルドマスターが定年引退となったため、ギルドマスター及びサブマスターの総入れ替えが行われた。
ギルドマスターに真っ先に名があがったのはユーリだったが、ユーリはまだ自分には早いと辞退して、サブマスターだった者がギルドマスターとなり、空いたサブマスターの席にユーリが座る事となった。
これもほぼ形だけなので、数年間サブマスターを経験したユーリがギルドマスターとなるのも時間の問題となった。
次はクルナ。
俺としては、彼女がどんな仕事を選んでも応援するつもりだったが、彼女は旦那様がいるのに、他の男性に抱かれるのは違うと、娼婦を卒業。借金もないので未練は全くないそうだ。
元々明るい彼女でもあるので、これから仲間達をよく誘って食事会は欠かさないと言っていた。
そんな彼女が次に選んだ仕事は、俺の資金管理者である。
現在、俺の収入といえば、多数の貸家や貸店舗による家賃収入だ。
その額は毎月とんでもない額が入ってくるため、その資金の運用に困っていた。
それを相談した時、クルナがぜひやってみたいと手を挙げたので、やって貰う事になった。
意外にも商才があるようで、俺よりはテキパキと物事を決めて進めている。
中でも気にしていた『奴隷』を商業化したいとの事で、王国内の多くの奴隷を購入を続けて、その奴隷達を各お店に貸し出したり、他の仕事を与えたりしている。
さらに意外だったのは、『奴隷』を購入するのはそれなりの額が必要なのだが、長い目で見れば、ほぼ黒字が確定していた。資金を余していてもったいないと思っていたのだが、それが意外な形で『投資』という形になったのは、嬉しい誤算というか、クルナの商才なのかも知れない。
最後にミーシャ。
クルナの事業により、ミレイアさんのお店の働き手が不足する事なく、周りから愛されたお店となったので、ミーシャはもう働かない事となった。
次にミーシャが選んだ仕事は、母と同じく料理の道だった。
始めは趣味というか、家庭内だけの料理をするのかなと思ったら、意外にも彼女は貧困に苦しんでいる人々に無償で炊き出しをしたいと申し出てくれた。
クルナとも相談の上、無理のない範囲で余った資金をミーシャに回して炊き出しを予定して、最初の炊き出しを行ったところ、その美味しさも相まって大好評だった。
ただ、ミーシャとしては評価を貰うためにやっているのではないので、評価など気にせず、ほぼ毎日色んな場所に炊き出しに出向いていた。
その事で凄い事が起きる。
ミーシャの行いに感銘を受けた心優しい貴族や商人が色んな支援をしてくれるようになった。
特に商人は、売れ残って捨てるしかない食材を、限界まで売ろうとはせず、ある程度新鮮さが保って売れ残ったモノを全て提供してくれるようになった。
それによって、新鮮な食材が手に入り、買うお金がどんどん掛からなくなり、しまいには貴族から支援で寧ろお金が余る事案が発生。
ミーシャはそれならばと、余ったお金は全て貧困層のために清掃員を雇ってはスラム街を清掃させたり、教師を雇っては学べない子供達に勉強を教えたりと、気が付けば聖女ミーシャ様と崇められるようにまでなった。
そして、王国に一つ噂が回るようになった。
王国英雄の娘と、奴隷の解放者と、王国の聖女が一人の男の妻となっていると。
彼が誰なのか、王国民は誰一人知らない。
その人は謎は包まれ、いつしか一つの噂となり、王国民は彼をこう呼ぶ。
――――――『救世主』と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます