第34話 潜入と屑野郎

 ミーナが屋敷の中に潜入したのを見届ける。


 高い能力があるからか、非常に身軽に木々を飛んだり、壁を走って登る。


 人間って…………壁を登れるもんなんだな…………初めて知ったよ。




 クズ共の屋敷の近くの公園に腰を据えて一時間程待った。


「そのまま聞いてください」


 後ろからミーナの声が聞こえる。


 俺は黙ってその声に集中する。


「屋敷の中ではアッスホール伯爵とクリミール子爵が会っていました。ジクレール子爵という貴族の娘にクリミール子爵が縁談を持ち掛けて、そこから玩具にする予定だそうです」


 やはりか……。


「さらに、彼女を不良品・・・に変えて、ジクレール子爵家に無理難題を付けて最終的にはジクレール子爵家が運営している商会ごと奪う作戦のようです」


 絵にかいたようなゴミというか、予想通り裏があったな。


「それとクリミール子爵は奴隷を叩くのが好きなようで、ジクレール子爵令嬢の泣き面を楽しみにしていると笑っていましたね。アッスホール伯爵三男も一緒に楽しませて欲しいと話し合っていました」


 くっくっくっ。


 泣き面・・・か。


 ああ。俺も楽しみだぞ。


 貴様らの泣き面・・・をよ。


「後は裏で禁止されている薬を売買している事が分かりました。作り手をクリミール子爵が担って、流通をアッスホール伯爵家が持っているそうです。非常に危険な薬で『エデン』と呼ばれている飲み薬です。無臭無味で10ミリくらいで効果があって、非常に依存性の強い幻覚を見せる薬です。さらに多くの玩具奴隷に悪逆非道な行いを行っています」


 『エデン』と言えば、この王国で最も危険と言われている薬だ。


 うちの店でもこの薬を盛られないように、入店する客の荷物は厳重にチェックしている。


 幸いとある魔導士が作った魔道具により、周囲に『エデン』が分布されている場合、計測出来る魔道具が開発されている。


 無臭なので、気化させて飲ませる方法が横暴していたので、あの魔道具で助かった命も非常に多いはずだ。しかも安価で販売している。


「今回の事は王国側としても黙って見過ごす事は出来ません。ですが、証拠がなければどうにも出来ません。もしベリアルさんがあの件と一緒にこちらの件も片付けてくださるなら、破格な報酬は私から確約致します。それを念頭に置いて活動してくださると嬉しいです」


 ああ。分かった。


 言葉には出せないが、それを伝えると、「それでは私は一度姫様に報告します」と去って行った。


 ふぅ…………思ったより大物が釣れた・・・な?


 では早速作戦を…………と言いたいのだが、作戦まであと3日もある。


 ただ3日も自由にはしてやれないな。


 公園から屋敷を眺めると多くの性欲値が見える。


 その中でも一人だけ俺が指定しているやつがいる。クリミール子爵だ。


 その周囲の二人も中々に高い性欲値だ。170%と150%。


 二人にもいつものマーキングだけ施す。


 さあ…………この3日間楽しんでくれ。俺からのプレゼントだ!


 ――――『挿入時、性欲を0%に変える』『抜去後、30秒後に性欲値300%に変える』『上記を10回繰り返すと『リセット』を施す』




 ◇




 ◆とある伯爵三男◆



「くっくっくっ。今日も良い奴隷が入ったな!」


 男は目の前の女奴隷に涎を垂らす。


 奴隷は不安そうに身を構える。


「おい、これを飲め」


「っ!?!?」


「ちっ」


 男は女奴隷を蹴り飛ばす。


 女奴隷は腹部を抑えて涙を流すが、そんな事など構わず、男は女奴隷に薬を飲ませる。


 次第に女奴隷の目が虚ろになり、身体を震わせる。


「くっくっくっ」


 男は欲望にまみれた笑い声をあげながら、女奴隷をベッドに放り投げる。


「あのクソ女も先にこうしてやったら良かったな。俺に恥をかかせてくれた事、絶対に後悔させてやるぞ!」


 そして男は元気な自分のモノを取り出し、いつもの調子で差し込んだ。


 直後に流れてくる快楽は一生忘れる事も出来ない。




 ――――だがしかし。




「は?」


 快楽が全くやってこない。


 むしろ――――


「は!?」


 入らないのだ。


 何故なら、自分のモノとは思えないほどにいつもの元気な姿はなく、そこには干からびた唐辛子のような人生初めて見る姿をしていた。


「な、何かの間違いだ!」


 ベッドで眠っている女性を見つめ、再度起こそうと頑張るが全く起きる気配がない。


 しかし数十秒後に、再度元気な姿を取り戻す。


「ふぅ……心配させやがって! では、もう一回!」


 男は二度目の突き攻撃を試す。


 直後。


「は?」


 下を向いた男の視線の先には、先程と同じ姿の干からびた自身のイチモツが存在感を主張していた。



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