第33話 クズの偵察
とある一団が王都に入って行く。
「あれが例の連中だな?」
「はっ」
「ありがとう。褒美を遣わす」
「あ、ありがたき幸せ!」
「今日の3時枠の取ってあるので、今夜行くといい」
「やったああ!」
城壁に案内してくれた兵士が喜びの声をあげる。
俺が見降ろすのは、地方貴族のクリミール子爵一行だ。
縁談のため遥々王都まで来たという事だが、3日も前から乗り込むのに怪しさしか感じない。
まあ、貴族なので王都に来たから知人を訪ねるのかも知れないけれど……。
さて、姿は見えないが既に性欲レベル6ともなると、あんな馬車の壁くらいで見えなくても性欲値が見えるほどにはなっている。
何なら、家の壁くらいなら貫通して見えるようになっている。
これは恐らく基本的な『視界に映る人の性欲値を見れる』という部分がレベルと共に成長していると思われる。
その根拠として、レベル6で覚えたスキルで対象を指定する事で『マーキング』状態に出来て、心の中の地図でいつでも見れるようになったときに、『マーキング』がなくても視界の範囲なら全て貫通して見通せるようになっている。
それともう一つ変わつたのは、性欲値は基本的に変化しないし、薬やお守りを使って追加で増やす事が出来るが、性欲値変更で数字を決めるとその類のモノが一切効かなくなると知った。
さらに、面白い変化点としては、現在性欲を
さらに性欲値の後ろに他の不思議なマークも表記されるようになった。
マークの種類は『ピンク色のハート』『緑色のクローバー』『赤色のスペード』『青色のスペード』『紫色のダイヤ』の5種類。ピンク色のハートだけはあれの場合のみなので出たり消えたりしているが、他の4つが映っている人は消えないで残り続けている。
どれがどんな状態を映しているのかは分からないので、これから要検証だ。
さて、クリミール子爵は性欲値180%と高い上に、赤色のスペードのマークが付いている。
実際赤でも青でもスペードのマークが付いている人はごくわずかなのだが、この子爵にはしっかり付いているんだな。
早速子爵に『指定』を使い、『100歳になった時、性欲値300%に変更』を設定する。
これは俺が考えたマーキングを効率的に付けておくための簡易な設定だ。特に深い意味はない。
子爵をマーキングしたので、この街のどこに向かうのかが丸わかりだ。
その日の夜。
窓が開く。
「来たか」
「…………こういう事で呼ばないで貰いたいんですが」
「いいじゃねぇか。持ちつもたれずというやつだ」
「くっ……私達は貴方に一方的に使われているだけだと思いますが」
「そんな事はないだろう。俺のおかげでお前さんの想いが伝わったのではないか?」
「くっ…………こんな形で知られたくは…………」
「そんなつれない事は言わないでくれ。俺はお前さんには仲間意識があるのだから。俺は仲間には優しいぞ?」
「くっ! それならエリを早く治してください!」
「ふ~ん。いいけど、代わりにお前さんが俺の手駒となってくれるんならな」
「っ!」
「でもまだもう少し待ってくれ。あの王女様にはもう少し役に立って欲しいのだから」
「…………」
「もし今日の作戦を達成してくれたら、条件を少し緩くしてやろう。同性の裸という部分を、お前さん達の裸にしてやるよ」
「…………分かりました。それならまだひと安心です」
最初に会った時に高い性欲値に目が行きがちだったが、やはり
服装はあまり見かけない服装で黒ずくめの衣装に、顔にも覆面を被っていて目の部分しか見えない。
豊満なモノにより女性なのは見るからに分かるが…………これはこれである意味そそられる人も多そうだ。
「それで、私は何をすればいいのですか?」
「今日この街にクリミール子爵とやらが入って来た」
「クリミール子爵…………地方の
「ん? 知っているのか?」
「…………私達がマークしている人物の一人です。地方では様々な悪徳商法を繰り返し、権力で物言わせ何でも手に入れる。その中でも
な……るほど。
これはますますユーリを渡すわけにはいかないな。
というか、これでほぼ明らかになった。あの貴族め…………ユーリをそういう目的のためになんだな。
ただ不思議なのは、そういう目的だったとしても、会った事もないのに指名する所だ。
「あのクズの居場所は常に把握している。今はとある貴族の館に向かっているので、その館で言質を取って来てくれ」
「分かりました」
「ここは…………」
「知ってるのか?」
「ええ。私達の注意人物の中でも最も危険とされている――――――アッスホール伯爵家の屋敷です」
これで何もかも理由が分かった。
アッスホール伯爵家の三男、ベーレンティはユーリに侮辱されたと怒った、元許嫁の人だ。
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