第29話 告白そして……
最近の一番の変化と言えば、娼婦館からの利益――――詳しくいうなら、俺が『性域』を設置しておく事が前提で、その日の売り上げの何割かを貰うという契約だ――――が爆増した事。
これには理由があって、俺はあの力を使い、娼婦館をより広める事に成功した。
その立役者となったのが、ユーリと同じ日に俺を訪れたゲラルド。
彼はなんと王都の衛兵長だそうだ。
衛兵長は、騎士団長の次に偉い人らしく、その強さも凄まじいそうだ。
ゲラルドがうちの店を利用した理由は、用心棒をしているギアンさんをスカウトするために通ったそうなんだが、以前入口の前に『性域』を設置して色々試した頃にその餌食となって、お店を利用した事から始まったそうだ。
そんなゲラルド達に俺が命じたのは、あの店をとにかく広める事。特に王城内に。
そもそもうちの店は普通の娼婦館と比べて倍は高いし、中でもナンバーワンのセリスさんその数倍に跳ね上がる。
それでもセリスさんの予約が途切れる事はないほどに、うちの店は今では完全予約制で毎日満室が続いているのだ。
そして、その事で起きた大きな出来事がもう一つある。
収入が増えているという事は、それだけ客が多いという事だ。
つまり、俺の『性域』を利用している人が毎日際限なく増えているという事。
それで俺に一番のメリットは、収入よりも、自分のスキルのレベルが上がりやすくなったことだ。
最近ではレベル3から5に上がるまでの期間が極端に短くなっているのが、この『性域』が毎日大勢の人が利用しているからだ。
そして、その日、俺のスキル『性欲』のレベルが5から6に上昇した。
その日の夜、ユーリに新しいスキルを色々試してスキルの使い方を練習する。
本人にも伝えて、快く受けてくれた。
「うむ。これならしっかりと使えそうだ。ありがとう。ユーリ」
「ううん! い、いつでもいいですからね!」
そんなユーリが愛おしくなり、髪を撫でてあげると、笑みを浮かべて目を瞑る。
一度キスを交わしたユーリが、困った表情を見せる。
「ユーリ? 今日は何か困った事でもあるのか?」
やる前からあまり元気がない様子。
やってる最中は性欲値を上げたりしていたので、気にならなかったが、現在は50%に落としている。
「えっと…………ベリアルさん」
「ん?」
「…………私の事、どう思ってますか?」
「妻にしたい」
「っ!?」
「何を驚く。俺はずっと君を待っているのだぞ?」
「ほ、本当に私なんかでいいんですか?」
もう一度彼女を引き寄せて、唇を重ねる。
最近色んな人とやるようになって、中でも娼婦館の仲間達とやるとき、色々勉強になるのだ。
自分が持っている全てのテクニックを使い、彼女の唇に伝える。
「本当に私の事…………」
すると、彼女の目に涙が浮かび上がる。
「ベリアルさん……私、ベリアルさんの事、大好きなんです。でも…………」
「でも?」
「…………こんな私に家から縁談が来たと……地方の子爵様から…………飾り妻として……」
「そうか」
大きな涙を流しながらそう話す彼女は、ここ最近ずっと心を痛めていたのだろう。
「心配しなくていい。全ては俺に任せておけ」
「ベリアルさんに……?」
「ああ。だから、その件が片付いたら俺の妻となってくれ」
「っ!? ほ、本当に?」
「もう一度欲しいか?」
彼女は嬉しそうに頷いた。
そこから第四戦目に突入した。
◇
次の日。
ユーリが真っすぐ魔法ギルドに出勤した直後にそれらはやってきた。
「ご主人様。スタン様という方が訪れて来ました」
「やっと来たか。全員リビングに通してやれ」
「かしこまりました」
ハンナの案内で俺の元仲間5人と、見覚えがある女1人、そのメイドと思われる女1人が入ってきた。
「座るといい」
俺は腕と足を組んで、入ってきたその女に座るように促す。
隣のメイドが何かを言おうとしたけど、すぐに制止して座り込む女。
「久しぶりだな? ――――――王女様よ」
「はい。私は二度と会いたくありませんでした」
「くっくっくっ。そんな邪険になるなよ。俺は会いたくて仕方がなかったんだからさ」
「くっ…………」
悔しそうに顔を崩す王女が俺を睨んできた。
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