第22話 クズの奴隷
「ここがこれから君達に働いて貰う家だ」
あまり良い反応は見られない。
まあ、奴隷堕ちしているので、あまり感情の起伏は見られなくて当然か。
それにしても少女で奴隷堕ちなんて、余程の事がないとないだろうけど…………親に売り飛ばされたのかな。
銀貨1枚もしない値段だろうに……まあ、育てていくにもお金がかかるから、それならばと売ったのかも知れないな。
中に入って早速間取りの説明をする。
「以上が間取りだが、質問はあるか?」
「「「「いいえ!」」」」
「では左の君から名前を教えてくれ」
「はい。ベラと申します! 9歳です! 得意は裁縫です!」
「クレアと申します……9歳です…………得意は……その……料理が…………好きです……」
「リアです! 得意はあまりありませんが一所懸命頑張ります!」
「ハンナと申します。家事は一通りやれます」
4人が元気に答える中、隣には相変わらず漏らしている彼女が申し訳なさそうに泣きそうな表情を見せていた。
「わ、私はステラと申します。ご、ご主人様、申し訳ございません……屋敷をすぐに汚してしまって…………」
「よい。気にしなくていい。まあ、汚れは掃除して貰う事になるけど、それは後ででもいい。クルナさん。すいませんが彼女達をお風呂に入れて貰えますか?」
「へ? う、うん! いいよ!」
「ありがとうございます。さすがに俺が入れる訳にもいきませんので。風呂場は分かりますか?」
「昼に見つけてるよ! さあ、みんなおいで!」
クルナさんに5人が付いて行く。
そんな中、酷く肩を落としたステラに一瞬のやすらぎを与える。
――――性欲値50%
ステラの頭の上に掛かれていた黒い数字
◇
「ご主人様~!」
1階でみんなの飲み物を準備して待っていると、上の階から元気よく降りて来るリアが声をあげる。
その表情は、うちに来た時とは打って変わり、明るい笑みを浮かべている。
他の3人もだが、ステラだけが真っ青な顔のままだ。
「飲み物を準備している。飲むといい。クルナさんもありがとうございます」
「いえいえ~わあ!
この家はわりと最新鋭魔道具が揃っていて、果物があれば簡単にジュースに出来るし、氷を作って置ける冷蔵庫という魔道具もあるし、その氷を粉状にすることで、冷たいジュースを作る事も簡単だ。
クルナさんが美味しく頂いてる中、リア達は何故か手に取らず、唾を飲み込みながら見つめていた。
「ん? リア達はどうした? 飲まないのか?」
「へ?」
「こちらの5つは君達の分だ」
「へ?」
5人がポカーンとしている。
「うふふ。みんな。飲んでいいわよ~ご主人様が入れてくれた飲み物を飲まないって、それこそ失礼だからね?」
「!? い、頂きます!」
恐る恐る手に取り、ジュースを飲む4人。
すぐにその両目が潤んでいく。
「すまない。口に合わなかったか?」
「い、いえ! こんなに美味しい……久しぶりに…………」
ほんの少ししか飲まないから不味いのかと思ったら、どうやら違うみたい?
「ベリアルくん」
「はい」
「奴隷って、まともな食事なんて貰えないのよ。だから、ジュースは彼女達に取って大きなご馳走なの」
「そう……なんですね。知りませんでした」
いや、知らなかった訳ではない。噂くらいは聞いている。
ただ現実的に俺とは離れている存在の奴隷の生活なんて、気にした事もないし、どこかおとぎ話のように感じていた。
「5人とも、立っていないで座ったらどうだ?」
「は、はいっ!」
その後、まさか、地べたに正座しようとする4人。
「いやいや! テーブルがあるでしょう?」
「ベリアルくん! 奴隷はテーブルには座らないんだから、ちゃんと説明してあげないと分からないんだよ?」
「え!? そ、そっか……みんな、こちらのテーブルに座ってくれ」
せっかく全員分の椅子も用意している。
恐る恐る椅子に座って、目の前にほんの少ししか飲んでないジュースを置くが、その両手はずっと握ったままという変な格好だ。
「うふふ。みんな、良いご主人様に拾われて良かったね~こちらのベリアルくんはとってもいい人だからね? ジュースもまた貰えると思うから、今持ってるモノは全部飲んでね?」
「え!? また頂けるんですか!?」
「そうよ? ねえ?」
「え? ええ。もちろんです。というか、普段から作って貰おうと思ってますけど」
「うんうん! やっぱりベリアルくんを連れて行って大正解だったよ~」
クルナさんがぱーっと笑う。
「クルナさん? そういや、頼みだあると?」
「あ~あれね~実はね~」
少し色っぽい表情になるクルナさん。
そして、衝撃的な言葉が放たれた。
「私もここで住ませて欲しいの! 家賃もちゃんと払うから!」
何故かクルナさんが一緒に住みたいとの事で、断ろうとしたが、何でも言ってくれと言った手前、断るのもなと思って、承諾した。
その日のうちに下働き奴隷達が各自の部屋とクルナさんの部屋を急いで掃除する羽目となった。
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