第5話 秘する花を知り、分け目の花が咲いたとて
悲しみや惨めさを隠して明るい人は魅力的かな。
野心や復讐心を隠して優しい人は魅力的かな。
慢心や気位を隠して上品な人は魅力的かな。
ツンデレは魅力的。
大体、半分本心、半分遠慮。これは分け目ではないかな。
演じている時は【意識してない】がよいとのことで、【演じていない】ことになる。
【演じていない】ことを演じるわけで、
【演じていない自分】は【演じている自分】を切り離し置き去りに捨て置くわけで、
ゾーンに入ることか、悦に入るというのか、
自分ではない、違う【もの】になっていることなのか。
そして
分け目は、
隠しているもの。誰にも悟られない、が美しい。
否、悟られたい人にだけ、別けて魅せる。
見破られたい美しさ、
探してほしい本音と本性、わかってもらえるかもしれない人に
期待を募らせチョイ魅せる、秘密の分け目。
そして、秘密を魅せる度、その奥にまた新しい分け目で阻みて奥行きを伸展する。
賢者に伝道された理性は本性を隠し調和を保つ。
狂気を以って狂気を操ることができる。
天真爛漫なのに節度もある、中道中立で何にも寄らない、拠らない、依らない、由らない。そんな立派な人道に心を馳せて努める人も、虎になる機会がいつ起こるかわからないほど人は脆い。脆くて不安で常に半身を求めている。
また、半身に出会っても花が散ることを知っており、その不安が花の美しさをより濃く魅せることで花の老化は加速する。
どうやっても本末転倒となる。この世は矛盾が摂理。
孔子やブッタは半身探しに、一気に本性が老衰できたんだろうかと思う、うらやましい。矛盾の摂理が成熟して枯れて、新しい種は内側にではなく、外側に、自分以外に確りと芽を吹いたようで、自我は外にある。うらやましい。
私は煩わしいことが気になることを隠すために、まだまだ本当に苦労している。
引っ越しが終わった夜は飛べなかった。大きな屋敷の物は、小さな借家には入りきれずに沢山捨てた。私は母が捨てたくないといったものの価値が分からなかった。足踏みミシン、鰹節削り箱、衝立も巻物も興味なかった。鍋も焼き物も壺もグラスも、服も靴も布団も盆栽も時計も捨てた。
私も数えきれないほどあった、習い事のトロフィを全て捨てた。
その夜は、もうすぐ失うだろう十数個の宝石だけを握って
母が泣き続けた。
父は一升瓶を抱えたまま4~5人に抱えられて新居に後から連れられてきた。
「俺は動かん」と朝に一言話したきり無言で、数人の男達に抱えられたり支えられたりして連れてこられ、ずっと酒を呑んでいる。
昭和一桁万歳。
大事に隠している心まで本日の疲れが侵食した。
空気清浄機のフィルター交換警告ランプ。
自分のことで泣いて浄化ができない時は、他人を傷つける。
でないと、壊れるから私。
既に壊れている部分は隠してる、治したい。これはチョイ魅せもしない。
治してくれるかもしれない半身を探すと、治してほしい部位の反対側をチョイ魅せして、そちら側は決して見せない。そして試す。反対側に気が付いてくれるかを。
そして、気付かない、私を丸ごと包めない、その同情だけでは足りない力量不足をコッソリ責める。そしてまた他人に希望を失い離れる。繰り返すうちにまた壊れる。
もうそろ、希望の泉も尽きる。だから、他人を傷つける。
愛せなくてごめん。
何とも不健全で不完全なフィルター交換の仕方。その犠牲になる半身の言葉や感情・思い出などから当人を抜き取るときに、私の穢れも抜き取る。
そしてもっと複雑で目の細かいフィルターに仕上がる。
狭き門は、分け目を知ることに加担して
孤独は深まる。
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