第2話 見下ろす

 物を作るのが、買うのが 経済が、地球を痛めつける。発明もほぼ敵だ。人は欲しがらなければ地球を大事にできる。人々の見栄や余分な欲求で、余分なゴミが増える。購買意欲は地球の敵だ。

 慎ましいつもりでもね、家もお金も自分に合った人も、時間も知識も、気持ちの良さも、心地よい睡眠も、美味しい食事も、いい匂いも、ちょっとでもあると嬉しい。やっぱり欲しい。それは【人々の中】にいるからだ。

 今やもう食べ飽きたものの、苦しい運動や苦悩、我慢アドレナリンは、満ち引きの波も起たない深海の底にある。人間関係においてしかないような悩みを欲する熱水泉がある。欲しがってる。生きること以外に欲しがっている。


 オシャレな服は着たい。車両に傷が入るとそんなにだめなの?靴はこだわるわ。でも宝石には興味がないな。エコでオール電化にしたら、電力足りないらしいよ、節電でポイント貯まるらしい、確かに地球びエコだから疑わずに進んで!いやいや少しでも!なんだから。

 それ、本当にエコなの?電力にも色々と掛かってるじゃない?原発どうよ。

でもね、後戻りはできない。いやこれは地球の運命です。

地球の在り方生き方で、否定すべきことでないかもしれない。このまま流れるというか事象は進む。毎日どれだけのゴミができてるのか。買うために、作るために、生きるためのだけでないゴミが。


 やっぱり本当の両親でないと伝えられ、浴室で何度も髪の毛を洗った。どれくらい時間が経っただろう。頭は軽くなった。風呂から上がると鏡の向こうには脂気のない私が見える。この先が不安でたまらず、友達や彼氏を遮断した。電話口で彼氏がボロボロに泣くから、私もボロボロに泣いた、泣きながら眠る。


 体が動かなくなった。目は覚めた、体は眠っている。

頭の上に黄緑色の発光を纏うぼさぼさの長髪の人影がいるのがわかる。ジャニスのシルエット?はたまたジーザスクライスト。ググっと私は引き寄せられた、私から抜けた私は、抜けた速度で空に放られた。無重力ベイベー。その人影は見ていただけ。消えた。


 上空で強風を感じているが、重力や風力への抵抗を感じない。私は落ちない。イリュージョンを読んでも床は泳げなっかたが、この意識は今と繋がっていることがわかる。この意識は在る、とても軽々しく在る。


 見下ろした。見える、近所の公園と学校が分かる。夜中で真っ暗な空のはずなのに、明け方の薄暗く光の届いているよう上空を私は感じている。地上から見るより明るい。飛行機に近い高さまできたのかも、少し怖くて帰りたくなった。

 いや、一人では飽きた。感動はそう長くは保てないから人間は良い人のままでいれない。でも忘れると良い人に戻れたりする。

誰かと感動を共有できたら、もう少し滞在できたかも。矛盾してるな。 

 方向転換できる。帰れる、降りる。私の部屋のバルコニーを探す。目印がある、あった、トックリヤシに結んでかぶせた獅子舞の帽子。

 

 もうすぐこれらにもお別れだ。家を売ることになったから。

 父の会社の倒産と養子宣告のダブルリアライズか。

 そして私は、横たわっている脂気のない泣きはらした自分を見下ろした。

 なんだ、小っさいことやわ、泣くな、目覚めろ。

 

 


 


 

 

 

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