空を見上げて

@bunngakumaru

第1話 夢想家の心算

 地球のことは曲がりなりにも大事に思っている。わりかた慎ましく予防に努めている。快晴の日はブランコを思いっきり漕いで仰ぐ空が、日々の疎ましさを剥がしてくれるような光で包んでくれる。雪が降る日の空は、回転して遠いところに吸い込んで連れて行ってくれる。台風の目に入った夜の空は、風の群雄割拠に身を翻弄されながら汚れた感情を拭き取ってくれる。でも人生が在るよと教えてくれるような風の音と拭う風は時間と空間をも現して、夜空に怖れも感じる。土砂降りの雨の空は、洗い流しはしてくれない、もっともっと惨めさをなすり込んでくれる。こんな風に、いつも夢想して現実を閉じるから、この世が意外に好きなのだ。

  

 昨日ママンが死んだ、ではなく今日本当の母じゃないことを知った、そんな人は沢山いる。子供時代は父が母に暴力をふるうから、家で安心して眠れる日は少なかった、そんな人も沢山いる。父が女に騙されて倒れるまで3年半、車での生活が多かった、これはそんなにいないかな。昼間はお金持ちの私立の学校に通う、夜は暴力を逃れてもクラブやスナックに父を探しに行く。「お父さんきていませんか?」何件も何件も。見つけたら母が乗り込んで、女の前で通帳やお金、宝石を取り返す。夜中に幾度も交番にお世話になる。こんな感じの人は沢山いるかな。

 社長である父に来客がある日や従業員支払日は私は思う存分自宅でテレビが見れた。

 家にあるカラオケで演歌を歌うと、給料をもらいたての従業員の方々から社長令嬢は沢山おひねりを頂いた。これは奇特な経験かな。


 その陰陽生活では二重人格と云わず、人格そのものが形成されなかった。私は自分のない人間だ。誰にでも気を遣ってしまう。自分を忘れて目の前のひとの心を大事にしてしまう。他人の人格が自分。

だから、空を見る。空に溶けてカタチのない私が泳いでいるのを見てる。それでいい。

 

 父と母は、親戚の伯父さん伯母さんだった。知っていた。気が付いてた。幼少期から3回ほど他人が口を滑らした。その都度確認して否定された。

 そして今日、改めて知った、やっぱり。だから私にそんなこと求めてる?

倒産するまでは何でも買い与え、なんで全てをさせてくれた、なんの行動制限もなかった。その所以でか今際の際、私にすべて依存しようとしている。波乱の中でも両親は、真から私と情を交わし、優しい時間が沢山あった。そんな場面の切り抜きも、一瞬で足かせの重たい鎖に変わった。絆は依存の鎖に視える。本当の親子でないから捨てれない。感謝ができて自分の人生と線引きをしながら、大事にしたい人を大事にできるようになるには、私は若すぎた。


 ちょうど来年二十歳。私が何とかしなければいけない。すると、

知識の底からうねり出てきた人格が集まって混ざり合って何とも言えない自分が形成された。


 この日から、私は空を飛べるようになった。


 

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