第38話 淀君

一同は一斉にひれ伏した。


辛うじて、踏みとどまった津久見も、皆にならいひれ伏す。


間違いない。



淀君と、秀頼である。


淀君と秀頼は上座に座る。


「みんな~おもってを上げよ!!」


甲高い声が響く。


「え????」


「ははは~」


一同顔を上げる。


「戦大変だったね!大丈夫だった?」


淀君が聞くと、島津義弘が答える。


「淀様。此度の戦、一進一退でございましたが、治部殿のお蔭で、皆無事にござるよ。はははは。」


と、豪快に笑う。


「そうだったんですね~。良かった~。治部さん。あ☆り☆が☆と☆ね☆」


(え~~~~~~淀君軽る~~~~~~!!!!)


「これ、秀頼様からもお礼を言いなさい☆」


と、淀君は秀頼に向かって言う。


7歳か8歳くらいの男の子は、そんな母に少し引いている様子であったが、きちんと正座をして、


「皆さま。此度の戦、我豊臣家の為にご尽力頂き誠にありがとうございました。」


(この子本当に子供かよ???しっかりしてるなあ。全盛期の鈴〇福君並みにしっかりしてるよ…)


「ははは~」


一同秀頼の言葉に返答しながらひれ伏す。


「で、治部さん、この後はどうするの?」


淀君が聞いて来る。


「は、はい。家康公とは休戦し、天竜川を境に東軍西軍別れて、日の本を統治していく事となりました。故に、天竜川以西は、豊臣家を中心に統治していく予定にございます。」


「え、本当!!!???」


「はい…。」


「じゃあ、じゃあ私たちは…。」


急に声のトーンが下がる。


「生き残れる…この子も…。」


淀君は涙を隠すように顔を覆った。


(きっとこの方も、心底では怖かったんだろうな…)


津久見は少し同情した。


「はい。もう、戦で人が死ぬ世の中は終わりにします。」


「ほんに…。そんな事はできるの?」


「ここにいる皆で力を合わせれば…きっと!」


「そうなのね…お願いします…。」


まだ感傷に淀君は更けている。


「して、今後はいかにいたすか、治部殿。」


と、毛利輝元が少し分の悪そうな顔で言った。


「問題が山積みで、細かく考えられていません。ただ早急に行わねばならない事は、

天竜川以西にいる、東軍の処置です。特に豊前の黒田さん…。」


「官兵衛殿か…。」


輝元は顔を歪めながら言った。


「なので、私黒田さんに直接会って来ようと思います!」


「何?治部殿が?」


「はい。誰だって話せばわかるはずです。」


「そんな楽観的な…。」


「無謀かもしれませんが、私にはそれしかできません。戦の無い世を作るには!」


津久見は続ける


「領土の件ですが、徐々に話を詰めていきますので、それまで兵士の皆さんは国元に戻ってもらって、代表の方だけ、大阪城に残って下さい。」


「え、1カ月はここにいろと?」


と、宇喜多が言った。


「え、新幹線さくらに乗って行けば…。」


(あ、今安土桃山時代だった…。………。一カ月もかかるの?…。)


津久見はその事実を受け入れると、白目を剥いて、泡を吹いて倒れた。


第38話 淀君 完

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