第28話 姉妹の以心伝心
なーちゃんが下した決断。
それは.....りーちゃんもこの場に呼ぶ、という事だった。
一体どういう事なのか、と思いながらなーちゃんを見る。
なーちゃんはりーちゃんへの電話を済ませて、私だけの参加じゃ裏切る事になるから、と言って女性スタッフを見つめる。
それから頭を下げた。
そして必死に頼む。
すいません。事情があって花嫁がもう1人居ます。参加させても良いでしょうか、と、である。
女性スタッフはその必死な姿に心打たれた様に。
「分かりました。何か大きな事情が有る様なので今回だけは特別に」
と笑みを浮かべた。
それから、キスはどうなされますか、と聞いてくる女性スタッフ。
その言葉に顎に手を添える。
そして顔を見上げてくる。
俺はドキッとしながらその顔を見る。
「.....キスしようか。さーくん」
「.....」
「.....!?.....お前マジか?」
「うん。私はマジな事しか言ってないよ。それに.....君はもうキスをしたでしょ?私の妹に」
「.....そ、それはかなり昔の.....!?」
いきなり唇が塞がれた。
それもなーちゃんに、だ。
抱き締められる形で、である。
俺は真っ赤になりながら、ほあ!?、と反応する。
なーちゃんは唇を離してから、大丈夫、と言ってくる。
「.....後でまた凜花もキスをする様にするから」
「馬鹿な!?」
「だって姉妹に隠し事は出来ないからねぇ」
「.....!嘘だろ.....」
「冗談で言うかな?私が。アハハ」
「.....!」
何年もこうしたいって思ってた。
だから遂に夢が叶った形だね。
良かったって思う。
だけど凜花には隠し事は無しでいきたいから。
この事は報告するけどね、と言ってくるなーちゃん。
人差し指を唇に当てながら、だ。
「.....お前という奴は.....」
「.....えへへ。愛してるよ。さーくん」
するとスタッフの女性の方が、では室内に案内致しますね、と笑顔を浮かべた。
それからそのまま俺達は通される。
そして天井を見上げると。
そこにはステンドグラスやらが見えた。
かなり美しい感じだ。
「ほえー。やっぱり凄いね」
「.....まあそりゃそうかな。教会だしな此処」
「だね。さーくん」
「.....で?りーちゃんは何時来るんだ」
「凜花ならあと少しで着くって」
「ああ.....そうなのか」
「どうしたの?」
いや女子とキスをしなくてはいけないこの重圧感が.....、と言いながら赤面する。
そうかな?私はそんなに重圧感は感じないよ?、と向いてくる。
俺は、それはお前だからだろうけどな、と苦笑する。
それからステンドグラスを見つめていると。
「もう一人の女性の方が見えました」
「.....!.....りーちゃん」
「もー.....なんなの?いきなり」
おめかしして少しだけ不愉快そうな眼差しになーちゃんは、凜花、と向く。
りーちゃんは、何?お姉ちゃん、と見る。
そして、さーくんとキスして、と言う.....ほあ!?
早速かよ!!!!?
「.....ふぇ?そんな事!?今ここで!?」
「因みに私はキスった」
「.....何その造語.....」
「私はさーくんとキスした」
だから次は凜花の番、と向くなーちゃん。
俺達は顔を見合わせてボッと赤面する。
まさかの展開に周りを見渡すが。
周りの参加者や関係者は見守っていた。
逃げれそうにない。
「.....その.....えっと。恥ずかしい.....んだけど」
「逃げちゃ駄目。凜花。私はした。貴方の番だよ」
「.....その.....」
「.....」
これめっちゃ恥ずかしいんだけど。
俺は思いながら赤面する。
そうしていると、じゃ、じゃあ、と声がした。
そしてそのまま覚悟して見ていると。
「.....さーちゃん。しゃがんで」
「お、おう。こうか」
「じゃあするね」
「.....お、おう」
「ファーストキスだからしっかり味わう様に」
「エロいんですけど」
と言ったが。
そのまま唇を重ねてきた。
俺はボッと.....あ、あれ.....?
そもそも何でこんなに恥ずかしいんだ?
さっきのなーちゃんより恥ずかしい気がする.....。
「.....やっぱりね」
「.....え?どういう事だ。なーちゃん」
「.....さーくん。ゴメン。試す様な感じで.....」
「.....???」
なーちゃんは柔和.....というか。
ちょっとだけ悲しげな笑みを浮かべてから。
そのまま俺を見てくる。
真っ直ぐに見つめてくる。
「さーくん。凜花」
「.....はい?」
「な、何?」
「.....おめでとう。私は選ばれなかったんだと思う」
「.....へ?」
俺達は顔を見合わせる。
そしてボッとまた赤面してからそのまま汗を流す。
まさか.....、と思いながら。
そのままなーちゃんを見る。
「.....どっちが好きか試したのか!?」
「.....そうだね。でも勝敗は少し前から決まっていたよ。.....君はきっと.....凜花が好きだなって思ったの。途中から」
「.....お前.....」
「.....お姉ちゃん.....」
きっとそうだなって。
だから私は.....、と少しだけ涙を浮かべる。
それから堪えてからそのまま俺達を見てくる。
確かにそうなのかもしれない。
俺は凜花が好きだと.....そう。
思える。
「.....これからどうするんだお前は」
「負けない」
「.....え?」
「.....私はこれで決まったとは思ってないし。まだ負けない。.....だから覚悟して。さーくん。私は君を誘惑するから」
「.....お姉ちゃん!?」
「だから写真撮るよ。みんなで」
言いながら笑顔を浮かべるなーちゃん。
それから俺達を見る。
俺はその姿に、そうか。これも計画のうちだったのか、と思い。
そのまま、撮るか、と苦笑した。
「お姉ちゃん。本当にこれで良いの。貴方は.....本当に」
「良いに決まっている。.....それにまだ負けた訳じゃないから。付き合い始めても狙うよ。さーくんを」
「.....やれやれ」
俺はそう思いながらも。
なーちゃんの配慮には.....感謝しか無かった。
取り合えず今は.....この事を受け入れたいと思う。
思いながら俺はステンドグラスの天使を見た。
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