大切な気持ち

第26話 ジューンブライド

「そんな真実があったなんてな」


舘島は言いながらジュースパックを飲む。

ズズズと音を鳴らしながら。

俺は言葉に、だな、と言いながら見つめる。

今日は6月28日となる。

つまりもう直ぐ誕生日。


「凛花ちゃんもそうだが何だか真実を知ってから柔和になってないか?」


「そうだな。確かにな。よく分からんが柔和になった気はする」


「だな。良かったんじゃないか?」


「真実を知る事も大切なものがあるんだな」


俺は何時も愚かだ。

何が、と言えば俺は知りたく無い真実を遠回しにしているからだ。

だからこそ愚かだと言っている。

馬鹿野郎とも言えるかもしれない。

目の前のりーちゃんとなーちゃんを見ながら思う。


「なあ。舘島。俺って馬鹿だと思うか」


「お前はボケナスだろ」


「おう。テメェ殺すぞ」


「やってみやがれハゲが。マジ殺し返すぞ」


言いながら俺達は爆笑する。

そして笑い終えてから、舘島。お前と友人でマジで良かったわ、と告げる。

すると舘島は、そうだな。俺もお前が友人で良かったと思うぜ、と話す。


「佐野島」


「何だ?」


「こっから先さ。何があってもお前を助けるから。安心しろよ」


「そうか。有難うな」


俺はそう話す。

すると奥からなーちゃんがやって来た。

ちょっと外に出て良いかな。一緒に、と。

俺は頷いた。

ん?どうしたんだ?



「プレゼントね。結局ネックレスにした」


「良いんじゃないか?それは。かなり良さげだよな」


「うん。昨日のデートのお陰だね。えへへ」


「だな。明日楽しみだな」


「うん。ジューンブライド楽しみ」


言いながらなーちゃんはニコニコする。

俺はその姿に笑みを浮かべた。

そして、俺自身がお前の事が好きだったなんてな。マジですまん、と俺は複雑な顔をする。

私は覚えていたけど何も言わなかったからね、と言ってくるなーちゃん。

それから柔和な顔立ちをする。


「大丈夫だよ。覚えてないのは仕方がないと思うんだよね。だって私に好きとは言ったけどその想いは親にかき消された様な感じだから」


「そうだったっけ?」


「うん。私の告白の返事はノーだったから。覚えてないんじゃないかな」


「にしても忘れるとはな.....マジすまん」


「それに君は風邪で発熱したよね。その際に記憶に誤差が生じたのもあるんじゃないかな」


確かにな。

風邪引いて熱が出て記憶に誤差があるのは否定出来ない。

だから昔の記憶に曖昧さがあるのか。

忘れたのか。

なら教えてくれれば良かったのにな。


「丁度良いかな、って思ったから何も言わなかったんだよね。ゴメンね。私が悪いです」


「そうだな。黙っていたのは良くない。俺にキチンと言ってほしかった」


俺は、だけど、と空の彼方を見ながら答える。

今の俺は誰を好きとか無いから。

だからこそ良いと思うから。

と言いながらなーちゃんに笑みを浮かべる。

なーちゃんは驚いていた。


「なーちゃん。諦めなくて有難う。俺を」


「そんな事を言われる様な身分じゃ無いよ。私。君の記憶の誤差を悪用したしね」


「それは悪いかもしれないけど。でも俺は目の前に君が居るだけで良かったと思う。有難うな。嬉しい」


「さーくん.....」


さあ。戻るか、と提案すると。

そうだね、と涙を浮かべていたなーちゃんは涙を拭ってから笑顔を浮かべた。

それから俺達は戻ろうとする。

すると屋上の階段にりーちゃんが居た。


「?.....聞いていたのか?」


「途中から.....ごめんなさい。お姉ちゃん。さーちゃん」


「もう。全く凛花は」 

 

そう言いながらもハグをするなーちゃん。

それからりーちゃんを見る。

やっぱり姉妹だね、と思う俺。

それから共に教室に戻った。

んで放課後まで授業を受ける。



翌日になった。

ジューンブライドの日になる。

今日は取り敢えず電車での移動の為、駅で待ち合わせていた。

するとザワザワと人集りが。

何だあの可愛い子は、と聞こえる。


「あ!さーくん!」


「お、お前!?可愛いな!?」


少し遅れるから先に行ってて、となったが。

髪を結び所謂捻った感じで髪の毛を纏めている。

ついでに服はナチュラルな服で白のスカート。

薄化粧をしてギャル原型が全く無い。

つまり完全なモデルに近い。


「.....!」


「可愛いなんて嬉しいな。頑張った甲斐があったよ。今日は宜しくね?旦那様♪」


「いや。おま!?」


「え?旦那さんだから。婚約する場所に行くしね。あはは」


「いやいや!?冗談でもキツイわ!だ、旦那さんって。お前が可愛すぎるから」


ボッと赤面するなーちゃん。

俺は後頭部を掻きながら、だからその。行くよ。瀬奈、と言う。

するとなーちゃんは驚きながらも赤いまま笑顔で、うん、と明るく頷く。


それから俺達はそのままジューンブライドの会場まで向かう事にした。

全く本気で可愛いもんだな。

畜生。

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