第22話 風邪を治さないとね

そう言えば思い出した。

りーちゃんは何か知らないがとても風邪を引きやすかったな、と。

俺は考えながらりーちゃんの身体を困惑の中でなんとか拭いてから。

そのままりーちゃんを布団に寝かせる。

因みにりーちゃんには風邪薬を飲ませた。


「これで熱は下がると思うけど。大丈夫か。りーちゃん」


「.....うん。馬鹿だよね。私って。.....こんな大切な今に風邪を引くなんて」


「.....そういう事もあると思う。.....でも決して無理は決してしないでほしい」


「そだね。えへへ」


するとインターフォン無しでドアが開いた。

それから、大丈夫!?、と.....瀬奈と凛子が入って来る。

俺はその姿に人差し指で口元に手を添える。

そして2人を落ち着かせてから。

2人の大荷物を目を丸くして見る。


「.....あ、ゴメンなさい。風邪って聞いたから.....風邪薬買ってきたよ」


「瀬奈さんとはドラッグストアで会ったの。お兄ちゃん」


「ああ。そうなんだな。.....2人とも有難うな。.....今りーちゃんは寝ているから」


「.....じゃあ邪魔にならない様に私と凛子で横の部屋を片してくるね」


「それ良いですね。.....お兄ちゃんにお姉ちゃんの具合任せます」


「.....ああ」


それから2人はそれぞれ横の部屋に向かった。

俺はその姿を見送りながらりーちゃんの横に腰掛ける。

すると.....りーちゃんが夢を見ながらだろうけど。

グスッと泣き出した。

俺は?を浮かべてその姿を見る。


「.....さーちゃんが.....離れていく.....もう1人は嫌.....」


寝言を言いながら。

グスグスと涙を流すりーちゃん。

俺は咄嗟というか。

りーちゃんの手を優しく握ってやった。

それから俺はりーちゃんの横に寝転がる。


「大丈夫だ。りーちゃん。今はみんなが居るからな。お前だけじゃ無いから」


俺は優しくりーちゃんの髪の毛を撫でた。

それからそのまま俺はりーちゃんのお腹辺りを叩いてやる。

優しく、だ。


ポンポンする感じで.....ってまるでこれじゃ赤子の様だな。

俺は苦笑しながらりーちゃんを見る。

りーちゃんは涙を流すのを止めてスヤスヤと寝ていた。


「.....全くな。子供の様だ」


俺は起き上がりながら。

そのまま横の部屋を伺う為に部屋から出る。

それから.....横の部屋を覗くと。

そこでは段ボール箱からお皿を出したりしていた。


「.....綺麗な部屋だな」


「.....そうだね。綺麗な部屋だと思う」


「.....なあ。瀬奈」


「何?」


「お前の母親って亡くなってから.....5周忌だよな?」


あ、そうだね、と答えながら瀬奈は悲しげな複雑な顔をする。

今度お花を添えに行こうか、と提案していると。

その言葉に凛子が反応した。

え?お母様って亡くなってらっしゃるんですか?、と。

俺達は顔を見合わせる。


「ああ。だから瀬奈は一応.....聞いた限りでは親とのいざこざが酷くてな。親父さんの手で育てられたからな」


「.....お父さんは嫌いなんだ。私」


「.....そうだったんですね」


「何も分かってくれないし.....ケチだしね。だから私は実際は半分の人生はお姉ちゃんに育てられた感じだよ」


「.....」


顎に手を添える凛子。

それから、私も5周忌の時にお墓に伺っても良いですか、と言ってくる。

俺達は顔を見合わせてからクスッと笑う。

そうだな。歓迎だ、と言いながら。

でも珍しいなお前がそんな事を言うなんて、とも言う。


「私をなんだと思っているんですか?お兄ちゃん」


「.....いや。瀬奈とはライバル同士かと思っていたからな」


「.....幾らそうでも今の状況では話が別ですよ」


「有難うな。凛子」


俺は凛子の頭を撫でる。

すると凛子は、子供扱いは止めて下さい、と俺の手を跳ね除けた。

だがその顔は嬉しそうな顔をしている。

俺は苦笑しながらその顔を見つつ。

じゃありーちゃんの元に戻るから、と2人をそのまま見る。


「はい」


「.....すいませんがお願いします」


「ああ。気にすんな」


それから俺は横の部屋に戻った。

そして部屋を覗くと。

りーちゃんが冷えピタを張り替えていた。

俺を見てから、あ。お帰り、と話してくる。


「りーちゃん。ちゃんと寝てないと駄目だぞ」


「.....そうだね。でも冷えピタがもう使えないから」


「そうか。.....それはすまん」


「ううん。気にしないで」


それから冷えピタを張り替えてから。

そのまま横になるりーちゃん。

すると赤くなった。

何だ?、と思っていると。

えっと実は.....この布団ってさーちゃんの香りがするから.....何だか寝付けないから、と言葉を発してくる。


「お、おう。そうか」


「そ、そう。だから寝られない」


「.....俺ってそんな良い香りじゃ無いけどな」


「いや。私にとっては好きな香りだから」


「そ、そうか」


よくよく考えてみたら。

りーちゃんがこの部屋に居る事自体が.....良くないか。

だってそうだろ。

交際もしてない男女でしかもまだ若い男と女が.....って感じだ。

いや今更だけど!


「ねえ。さーちゃん。お部屋片付いてる?」


「あ、ああ。そうだな。片付いてるよ」


「ふふ。じゃあ片付いたら.....一緒にバースデーのお祝いをしようね」


「.....その前には絶対に風邪を治せよ。お前」


「だね。うふふ。楽しみだな」


それからじゃあしっかり寝ないとね、と言いながらそのまま瞼を落とす。

俺は笑みを浮かべながら、ああ。お休み、と言いながら。

そのまま窓から空を見上げる。


5周忌か。

早いもんだな。

あの人にはかなり救われた。

しっかりお祈りをしないとな。

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