第20話 矢那VS凛子
キスを.....してしまった。
それも瀬奈とも、だ。
俺は真っ赤になりながら.....家に帰るまで悶々としていた。
ヤバい.....。
りーちゃんは桃の味がしたが。
瀬奈は柑橘系の味がした。
って言うかマジに何やってんの俺!?
付き合ってない.....と言うか一応に彼女では無い女子2人にキスって俺!?
アカン一線を超えている!
「.....クソッタレ.....」
俺は高鳴る心臓を抑えながら。
2人と別れてからアパートに帰って来た。
すると富子さんが、おや?帰って来たのかい、と掃除しながら顔を向けてくる。
俺は、はい、と返事しながら富子さんを見る。
すると、そうかいアハハ。ああ、そう言えば凛子ちゃんが来てたよ、と言ってくる。
俺は目を丸くしながら、凛子は帰ったんですか?、と聞いてみる。
そうすると、いや。隣の部屋の事が知りたいってまだ居るかもしれないねぇ、と言ってくる富子さん。
そうなのか、と思いながら俺は富子さんに頭を下げる。
それから階段を登って行くと。
「あ」
「.....凛子。お前来てたんだな」
「そうですね。.....遂にお姉ちゃんとキスしたんですよね」
「.....そうだな.....何でそれを知ってんの!?」
「エヘヘ。実はですね。.....お兄ちゃんのご友人様から送られてきました。2人がキスしたぞって」
あのクソ野郎は殴って良いかな?
と、俺は一瞬だけ殺意が湧いたが。
首を振りながら、凛子。取り敢えず恥ずかしいから、と宥める。
すると凛子は、はい。別に誰にも言いませんよ、と笑顔になった。
「そんな恥ずかしい事を言う訳ないでしょう。全く。.....私を何だと思っているんですか?軽い女とでも?」
「思ってないけどな。一応言い聞かせた」
「ですか」
そんな会話をする中で。
俺は、そういやお前部屋を見に来たんだってな、と言ってみる。
そうですね、と凛子は顎に手を添える。
それから入居予定の部屋を見た。
「良い部屋ですね」
「.....ああ。まあな。富子さんが大切にしているからな」
「そうなんですね。.....富子さんも良い方ですし安心ですね」
「.....そうだな」
俺は笑みを浮かべる。
後はお兄ちゃんが獣にならなければ、と言ってくる。
オイ。俺を何だと思ってんだ。
思いながらジト目をする。
「あはは。冗談です」
「全くお前は」
「.....でも本当に安心です。お姉ちゃんが」
「.....そうだな。周りは良い奴らばっかりだしな」
「そうですね。本当に.....幸せでしょう。お姉ちゃんも」
そんな感じで話していると。
背後から、貴様の部屋はここで間違いなさそうだな、と声が.....。
おあ!!!!?、と思いながら背後を見る。
長いポニテをした矢那先輩が立っていた。
何をしているのだ!?
「貴様の部屋を一度だけでも拝見しておこうと思ってな。差し入れも持って来た。そこら辺の茶菓子ですまんが」
「誰から聞いたんですか!?この場所!?」
うむ。それは勿論、瀬奈からだ、と答える矢那先輩。
俺は盛大に溜息を吐いた。
すると目の前の凛子がジト目をしている。
俺は?を浮かべて凛子を見る。
「.....生徒会長さんとお知り合いなんですねぇ?」
「そ、そうだな。瀬奈のお姉さんだ」
「.....ほう.....それはまた.....」
「.....」
冷や汗が出てきた。
すると矢那先輩はギロリと凛子に睨みを効かせた。
時に貴様は確か.....桜田の妹だったな、と。
俺は額に手を添える。
桜田凛花はお姉ちゃんです、と答える凛子。
「.....ほう。.....礼儀正しいではないか」
「それはそうでしょうね。お兄ちゃんの婚約者様のお知り合いなら当然です」
「ほう?それはつまり私に、私の妹に対する宣戦布告と受け取って宜しいかな?」
「喧嘩すな!?」
慌てる俺。
犬猿の仲かな?
俺は思いながら2人を見つめる。
すると矢那先輩は、私の妹の将来の旦那様だ。取らないでもらいたい、と俺の腕に手を回してくる.....大きなおっぱいというか胸が当たっている!
「何を言っているんですか?お姉ちゃんの将来の旦那様です」
「私の妹のだ。勘違いしないでもらいたい」
誰か助けてくれ。
俺は思いながら苦笑しながら状態を伺っていると。
奥から声がした。
コラー!、と。
それは瀬奈と.....りーちゃんだった。
「喧嘩しないの!」
「喧嘩はダメだよ姉貴!」
「.....お姉ちゃん.....」
「しかしだな。瀬奈」
「「だーめ!」」
言いながら2人を各々引き摺って行く瀬奈とりーちゃん。
俺はその様子を顔を引き攣らせて見ていた。
すると、今日はお料理当番は私が当番だけど.....瀬奈ちゃんに行かせるね、と俺にりーちゃんはウインクする。
俺は、へ?、と思いながら見る。
「ちょっとお姉ちゃん.....せっかくのチャンスが.....」
「良いから帰るよ。凛子」
「姉貴も帰って。お願い」
「妹の頼みなら仕方が無いな。お邪魔虫は帰るとするよ」
踵を返しながらみんな去って行く。
すると階段を降りる際に、時に凛子だったかな。貴様とは美味い酒が飲めそうな気がするよ、と笑みを矢那先輩は浮かべた。
凛子はその言葉に、いやいや。私はまだ中学生です、とドン引きで否定する。
俺と瀬奈はその姿を見ながら苦笑した。
そんな会話で帰ろうとした時。
矢那先輩が俺を見た。
それから小声で呟いてからウインクする。
「.....頑張りたまえ」
「.....いやいや。何も無いですから」
俺は盛大に溜息を吐きながら。
3人をそのまま見送る。
それから富子さんに挨拶してから。
そのまま瀬奈と一緒に俺の部屋に入った。
「.....」
「.....じゃ、じゃあ練習したお料理作るね!」
「.....そ、そうだな」
居心地悪いんだが。
俺は赤くなりながら瀬奈を見る。
瀬奈も此方を全く見ないが真っ赤になっている様だ。
唇を舐めてからそのまま俺は、やれやれ、と思い床に座る。
すると瀬奈が、ねえ。さーくん、と言ってくる。
「.....もう一回だけキスしていい」
「.....!?.....は!?」
「.....ろ、ロマンチックじゃなかったから。ね?」
「.....い、いや。恥ずかしいんだが!?」
瀬奈は荷物を床に置いた。
それから俺にゆっくり近付いてくる。
俺はその顔に目を閉じた。
そして俺達は唇と唇を重ねてキスを交わした。
瀬奈は.....涙を流している。
「.....え、えへへ。こんなに幸せなのって.....良いのかな」
「.....瀬奈.....」
「.....昔が昔だったから。.....だから今がとても幸せだよ私」
「.....そうだな。俺も幸せだ」
それから俺達はクスクスと笑み合ってから。
そのまま瀬奈は、じゃあお料理作るね、と笑みを浮かべてから台所に立った。
俺はその姿に、ああ、と返事をしながら。
そして瀬奈を見ていた。
何か可愛らしいフリフリのエプロンを身に付ける瀬奈。
「.....手作りか?それ」
「うん。これから先もこういうの必要かなって思って」
「まあその.....何事もエンジョイって事だな?」
「そうだね」
そして、エヘヘ。こういうのって初めて見せるけどね、と赤い顔で自然体な笑顔を浮かべてから。
そのまま髪の毛を結ってから料理を作り始める。
俺はその後ろ姿を見ながら赤くなった。
それから、またキスをしてしまった、と思いながら気付かれない様に悶絶する。
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