第16話 一石二鳥

土曜日になった様だ。

俺は.....朝、起き上がりながら大欠伸をしながら目の前を見る.....ん!?

目の前に何故かりーちゃんが居た。

いや相変わらず勝手に入って来るね!?

笑みを浮かべながらそのまま俺を見てくる。


「おはようだよ〜。ねぼすけさん」


「ねぼすけさんってお前.....え!?今って午前10時なのか!?時計鳴らした筈なのに?!.....あ。電池が切れてる.....」


「全くもー。グースカ寝ているから」


「いやいや。ごめんってか起こしてくれれば良かったのにお前さん」


「まあそうだけど。でも気持ち良く寝ている人を起こすのもねって思ったの。だから私は起こさなかったんだよね」


そう言いながらニコッとしながら花柄のエプロンに身を包んでいるりーちゃんは俺に何かを食べさせる。

それは.....スプーンに乗せてあるスクランブルエッグだった。

俺は赤くなる。


「新婚さんみたいだね。本当に。.....隣人として御世話になるね」


「.....お前が隣に引っ越して来るのは予想外だった。どう反応したら良いかも分からんから.....」


「そうだね。.....でも私としてはいつも通りに接してくれれば良いからね」


瀬奈ちゃんの事も考えて。

私だけが全部を独占しない様にしないとね、と言うりーちゃん。

俺はその言葉を聞きながら見る。

相変わらず優しいもんだなお前さんは、と言いながら。


「優しいけど身内だけだよこんなの。.....普通は有り得ないから」


「そうか」


「.....瀬奈ちゃんには負けたくないけど。でも瀬奈ちゃんを追い越して先に行くつもりは無いから」


「.....そうか」


「.....だからお願いした」


「.....何を?」


共同生活する事を、と言ってくるりーちゃん。

何を言っているのか分からない、と思って首を傾げると。

私ね。こっそり連絡して瀬奈ちゃんと暮らす事にしたの、と言ってくる。

ほあ!?、と思いながら愕然とする俺。


「お前何言ってんの!?」


「保護者が認めてくれたから共同生活の形で一緒に住む事にした」


「マジかよ.....」


「それだったら不公平は無いよね。さーちゃん」


「無いけど.....でも狭くないか?部屋が」


「狭くないよ。心が広ければ」


上手い事を言ったつもりかも知れんが。

だけど.....まあそう言うなら仕方が無いな。

一緒に暮らそう、と思う。

年頃の娘が俺と暮らすわけにもいかないだろうしな。

その様な感じなら一緒に暮らしても良いと考えるだろう。


「しかしお前は考えるね。本当に色々と」


「.....私ばかりが優勝する訳にはいかないからね。だから一緒なら良いかなって思ったの」


「まあそうだが.....極端だよなお前さん」


「私は極端なのが好きなの。アハハ」


すると、座って。朝ご飯出すから、と言ってくるりーちゃん。

それから俺は腰掛けようと思い立ち上がる。

ヨロめいてしまった。

そしてそのままりーちゃんを壁ドンする。

俺達は見つめ合う形になる。


「.....も、もー!!!!!何しているの!!!!!」


「す、すまん!決してワザとでは無いからな!」


「バカ。もう.....赤くなってしまうでしょ。キスしたくなるでしょ」


「.....そこまでとは言ってないが」


っていうかどさくさに紛れてキスって言ったか。

俺は赤くなりながらそのまま壁ドンを止めつつ椅子に腰掛ける。

それから頭をボリボリ掻く。

すると、でも。ふふっ。君がトラブルのは相変わらずだね、と言ってくる。

俺は赤面する。


「好きな男の子にそんなのされたら憧れるよ。やっぱり」


「そ、そうか」


「.....だから気を付けて。そういうの」


「.....だな、うん」


それから俺達は笑みを浮かべ合う。

そしてスクランブルエッグとパンとヨーグルトを見てから食べ始めた。

俺が寝てしまったせいでデートはご破産の様になってしまっている。

サポートしなければな俺が。

思いながら俺は.....ニコニコしているりーちゃんを見た。



「しかし共同生活って上手くいくのか?」


「.....そうだね。最初は慣れない事もあるかもだけど。でも.....彼女が料理の作り方を習いたいって言っていたからこれは一石二鳥だよね」


「.....まあそうだが.....」


「あまり気にしないで。.....君も私達を助けてくれるだろうしね」


「それはまあな」


俺は喉の奥につっかえていた。

先程思い出したが.....凛子も俺が好きだと。

その言葉を、だ。


だけど俺は首を振って言わない事にした。

彼女が話す時が来るまで待とう。

そう思いながら。


「じゃあ準備するから」


「分かった。部屋を出るね」


「すまないな」


「ううん。大丈夫」


そしてりーちゃんは部屋を出た。

俺はその隙に着替えながら。

そのまま服装を決めてから家を出ようとした時。

スマホにメッセージが。


(お兄ちゃん。私の分も含めてお姉ちゃんを幸せにしてね。約束)


(ああ。分かった。有難うな)


(絶対だよ)


(うん)


そんな会話をしながら。

俺は周りを見渡してからドアを開ける。

それからデートの正装になっている一階に居るりーちゃんを見る。

相変わらずの可愛さだった。

さらさらした髪をしていて風にたなびいていて.....赤面した。


「.....じゃあ行こうか」


「そうだね。王子様」


それから俺達は歩き始める。

水族館に向かい始めた。

俺の起源となった.....水族館に。

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