第13話 8年という過去と連絡が無かった真実

八熊先生に出会ったのは高校1年生の頃である。

この頃は.....何というか。

まあ本当にあらゆる事で悩んでいた。


何か俺の顔が死んでいたとも言われていたが。

無視されるのもそうだが.....それだけでは無く2人も幼馴染が居なくなった事に。

衝撃を受けていた。


瀬奈と.....りーちゃんが。

居なくなった事に。

するとそんな話を担任に知られたら。


八熊先生は俺を外に駆り出した。

放課後にいきなり、だ。

つまり1対1で、だ。


何処に連れて行ったかと思えば。

そこは.....水族館だった。

俺はそこで.....こんな事を言われた。


コイツらを見ろ。のうのうと生きているがそれでも一生懸命だ。

これはまるでお前だろ、と。

俺はこれに対して本当に強い衝撃を受けた。

だけど時たまにはのうのうで良いんだ、とも。

八熊先生は違った視点で.....俺を笑顔にしてくれたのだ。


だから先生には感謝しかない。

そして.....その後に知り合ったのが.....舘島だった。

んで.....瀬奈という彼女が出来たのだ。

それから素晴らしいクラスメイトに出会い。

中学時代の俺という石像は.....粉砕されたのだ。


「そんな過去があったとはな」


「.....さーくんの知られざる過去だね」


「.....そうだな。だからこんな猿どもでも感謝しかないんだ」


「ウッキー!!!!!」


教室に帰るなり聞いてきた3人にそう言う。

猿か?本当に。

俺は思いながら背後を見る。

城山とか山田がウホウホ言っていた。

猿ですかね?、と思いながら苦笑する。


「まあ冗談は置いて。お前は良い奴だぞ。佐野島」


「だよな。俺も思う」


「俺は思わない」


オイ最後のヤツ。

こっそりと何言っとんじゃい。

俺は思いながらも苦笑した。

そしてクラスメイト達を見る。

するとそんなクラスメイト達はこんな事を言い出した。


「って言うかカラオケ行くんだろ?だったらこのクラス全員で行ったら良くね?」


「それは確かにー。良いかもしれんな」


「思うぜ」


そんな会話になってきた。

俺は溜息を吐きながら見ていると。

舘島が、よし!、と声を出してからバシッと手を叩く。

それから、お前ら全員でカラオケだ!、と言う。

オイマジかよ。


「それに.....まあ凛花ちゃん誕生日みたいだしな!」


「おおマジか!」


「祝わないと!」


「そうだな!」


確かに凛花は誕生.....いや。

はえーよ。

何でだよ、と思いながら見る。

7月1日だぞ。

後7日もあるっての。


「え?え?わ、私?」


「.....あのな。7月1日だぞ誕生日は。舘島.....良いのか」


「良いんじゃないかな」


「「「「「うっほー!!!!!」」」」」


ウルセェんだよ!

猿ですかね?

ったくこの馬鹿ども。


俺は思いながら見ていると。

ってかそれは良いけどさ。テストあるぞお前ら、と俺は告げる。

嫌な事を思い出させるな、的な空気になった。

一気に株価が暴落する様な.....。


「オイオイ。それでもお前はクラスメイトかぁん?」


「思い出させんなよマジに」


「そうだ」


「ゴミクズが」


言った最後のヤツ。

絶対に許さんからな。

どんだけ俺を馬鹿にしてんだよ。


思いながらも、でもそうだよなぁ、と会話し始めるみんな。

舘島ものめり込む。

その隙にりーちゃんが俺に寄って来た。

それからコソコソ言ってくる。


「ね。明日でも水族館デートしない」


「え?いや。構わないが.....何で?」


「.....水族館が思い出の場所なら私も行ってみたいのもあるけど」


「成程な。明日は土曜日だしな。まあ良いが.....」


そんな会話をしながら笑顔になるりーちゃん。

よっしゃ、と言いながら握り拳を作った。

その姿を瀬奈は見ていたが。

特に何も言わなかった。

君達のターンだから、という感じで、だ。


「.....えっと。まあそれはそうだけど水族館で大切な話があるの」


「.....え?何の話だ」


「アメリカでの暮らしの話。.....私が今まで音信不通だったの実は人種差別とかでのかなり酷いいじめに遭ってね。.....それでうつ病になって.....失語症になったりしたの」


「.....え.....」


俺は目を丸くして愕然とする。

それからりーちゃんは、でもやっぱり日本が最高だって思った、と笑顔を浮かべる。

いや笑顔だけど失語症.....ってお前.....。

俺は思いながら見つめる。

ほら。向こうってアジア人があまり受け入れられない部分もあるから、とも言う。


「それは.....5年ぐらい続いたから。最初は5年で日本に帰るつもりだったのにね」


「.....お前.....何でそれを全部連絡しなかったんだ.....親にでも頼れば.....」


「それで君に連絡して.....私は今、酷い様って言ってどうにかなったかな。.....それに私は君に迷惑を掛けたく無かった。酷い姿を見られたく無かった。だから一人で戦っていたの。そして.....君にまた笑顔を見せたかったからずっと」


「.....」


「でもアメリカでその病が治るのに3年掛かったなんて情けないよね。私」


言いながら俺を苦笑気味に見てくる。

そして女子達の群れに入って行ったりーちゃん。

俺は顎に手を添える。

そうしていると.....瀬奈が俺を見てきた。


「.....凛花ちゃんにはそんな過去があったんだね」


「.....それで俺と似た事をしたいと思ったのか」


「.....凛花ちゃんに付き合ってあげて。今回は」


「ああ。お前の配慮は本当に有難いよ。.....りーちゃんと行って来る」


うん、と言う瀬奈。

そして俺とりーちゃんは。

今と過去を見つめる為に水族館に向かう事にした。


とりあえずは先ずは全員でカラオケ屋に寄ってから、だ。

次の鐘が鳴るまでこれは続いた。

全く.....何でクラスメイト一同で、と思ったが.....。

まあ楽しいから良いか、と思ってしまった。

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