第11話 世界は変わった(改訂)
「ああ。成程。色々な事を遂に貴様に話したのだな。瀬奈が」
「まあそうですね。なーちゃんもそうですが.....色々ありましたが上手く纏まりそうです」
「.....貴様には感謝しかないな」
「.....いえ」
俺と矢那先輩。
2時限目の終わりに俺達2人は屋上に居た。
矢那先輩自体を呼び出して悪いとは思ったが。
今日の事を話すなり矢那先輩は苦笑気味で俺を見てきた。
そして青い空を首を垂直にする様に見上げる矢那先輩。
それからはにかんだ様な笑顔を浮かべる。
「.....私は瀬奈がいつか話すだろうと。.....だからこういうのは全て話す気は無かった。.....瀬奈が言わなくてはならない事だっただろう」
「.....」
「しかしまあ何にせよ。これから先の貴様には本当に期待しか無い。全てにおいてな。瀬奈を救ってくれる筈だ。例えば今の彼女の格好だが.....瀬奈がギャルになってしまったのも.....」
「.....?」
矢那先輩は少しだけ黄昏てから言葉に詰まる。
それから、実はな。瀬奈がギャルになったのにも理由がある、と語り始めた。
まるでタバコでも似合いそうな顔をしながら、だ。
カクテルでもあったらヤバそうだな。
「.....彼女がギャルの格好をし始めたのは親と.....友人関係.....というかまあ人間関係の複雑さが原因なんだ。親とは私と比べた生徒会長の差と。そして人間関係では額の傷を馬鹿にする人達とかと。.....それで今に至っているんだ。私は.....瀬奈が女子であり一個人である事を知ってもらいたいんだ」
「.....」
「私は根っから強いからな。その中で瀬奈は.....彼女は決してギャルになりたかった訳じゃ無いんだが.....色々と疲れた為に敢えてギャル化した、とも言えるかな」
「.....そうなんですね」
進化した、とも言える。
と、ふんす、と鼻息を荒くする矢那先輩。
俺は、進化って.....ポケ◯ンかな?、と苦笑しながら、そうですか、と答えながら屋上の手すりを持つ。
それから外の方を見た。
だが、と切り出す矢那先輩。
「.....彼女はもう辞めると思う。ギャルという個性をな」
「え?それは何故ですか?」
「.....それは貴様には分かるだろう?全ては色々と貴様に救われ始めてもう必要無くなったから、だ」
「!」
俺は目を丸くしながら矢那先輩を見る。
矢那先輩は笑みを浮かべながら俺を見てきた。
すると.....その時だ。
ドアが開いた。
それから.....顔を見せた.....のは。
「.....へあ!?」
何という事なのでしょう。
登校前に何処に行ったかと思ったら。
1時限目すらも居なかった。
俺は愕然とする。
目の前のなーちゃんは黒く髪の毛を戻し。
髪の毛の結ぶ位置をずらしてポニテにしている。
そして制服を着こなし。
全く制服を崩してなく.....胸元も閉まっておりリボンを着けている。
そして真面目な姿で俺を赤くなって見ているなーちゃんが.....嘘だろ!?
「な?戻ると言ったろう」
「.....しかし.....そんな.....」
「こ、こういうのは嫌い?.....さーくん」
「.....!」
俺は真っ赤になる。
さーくん。
それは.....夢の中で呼んでいたあの名前だ。
そしてかつて俺が聞いていた名前を今の形で言う。
それからなーちゃんは何だか居心地というか。
服の着心地が悪いのかモジモジする。
そして俺をチラチラ見てくる。
俺は赤くなってしまい.....煩悩が浮かぶ。
「.....それじゃあまあ私はお邪魔の様だから去る事にするよ。ハッハッハ」
「ちょ、ちょっと矢那先輩!」
「貴様自身で後は頑張れ。ただし遅刻はするなよ。再び殴る必要性が出てくる」
「.....!」
戸が閉まってから。
俺はドギマギしながら見つめる。
その姿に一目惚れしそうな勢いがあった。
清楚感があって.....薄化粧を辞めた清楚で可憐な美少女に、だ。
真っ赤になる。
「私は君の為にこうして辞めた。.....君が居るから。笑顔が浮かぶよ」
「.....お前という奴は.....いきなりだな。本当に。困惑する」
「私はいつだって突然だから。そういう性格じゃ無いけど。でもギャルのままじゃもう.....駄目だって思った。君が好きな姿になりたいと思った」
「.....!」
「私は頬にキスをした時から決意したから。.....君を本気で惚れさせるって」
駄目だ.....クラクラする。
俺は思いながらなーちゃんを見つめる。
なーちゃんはゆっくりと俺に近付いて来る。
その姿に俺は後退りするが。
壁際に追い詰められた。
「えへへ。逃げ場が無いね。.....あ、でもキスはしないよ。今は保留」
「.....な、何をする気だよ。なら」
「私とお揃いの品物を買いに.....行かない?」
「お揃いな品物.....?た、例えば?」
「スマホのケース.....とか?」
「.....それもい、良いな!アッハッハ!」
俺は次第に声が小さくなる。
で、赤くなりながらそっぽを見た。
直視出来ないんだが。
身長が10センチも違うのに。
目の前に感じる。
思いながら俺はなーちゃんを見ていると。
なーちゃんは俺の胸に寄り添った。
それから心臓の音を感じる様な動きを見せる。
「.....な、なーちゃん。.....取り敢えず次の時間が迫っているから.....」
「そうだね。.....でももうちょっとだけ」
俺は赤くなりながら胸に顔を埋める様に寄り添っているなーちゃんを見る。
あまりの事に頭を撫でようとした時。
ドアが開いた。
それから、コラー!、と声がしてくる。
目が逆三角形になっているりーちゃんが.....。
「次の時間が始まるよ!もう私は教師にしばかれるのはゴメンだから!」
「お、おう.....りーちゃん」
「.....ほほーう?何しているのかな?ついでに」
「な、何でもない」
良い感じであった.....とは言えないが。
取り敢えずこんな感じになるとはな。
そう思いながらなーちゃんを見る。
それから俺達は苦笑しながら。
そのまま教室に戻ると.....舘島に顔面にチョップを食らった。
貴様という浮気者は!、と。
オイコラ何すんだ。
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