第8話 過去の傷(改訂)
「まさかその。譲ってくれるなんてね」
「.....そうだな。確かにな.....」
俺達はそんな会話をしながらそのまま歩いて帰宅する。
因みに今日はりーちゃんは部活に行っている。
茶道部に入部したらしいのだ。
その為に俺となーちゃんはゆっくり共に帰宅していた。
なーちゃんは俺に微笑む。
そして歯にかむ。
「私が言い出した事だけど全部これで良かったね」
「そうだな。でも本当にこんな感じで世界を変えて良かったのかお前は」
「後悔は無いと思うよ。まあでも本音を言えば後悔しかないよ?.....でもその。私の株も思った以上に上がったでしょ?」
「そ、そうだな。その。お前を好きになりそうだ。.....もっとな」
「うん。それの全部が計画だから。.....私に振り向いて笑顔になってほしいな」
「ああ」
なーちゃんもそうだが。
何というかりーちゃんもそうだ。
2人は本当に良い子だと思う。
今はなーちゃんとりーちゃんの間で複雑になっているが。
思いながら俺はなーちゃんを見てみる。
「あ。見て見て。河川敷。とってもキラキラしてる」
「.....そうだなぁ。.....キラキラしているな。.....良かったら降りてみるか」
「そうだね。降りてから川に石を投げてみようか」
「.....だな」
それから俺達はオレンジ色の夕日に誘われる様に手を繋いで下に降りる。
そして河川敷の石を見る。
石は丸い石ばかりだ。
俺はその石を拾いながら見ていると。
ねえねえ。どんな石が良いかな?、と俺に笑顔で向いてくるなーちゃん。
俺は顎に手を添えた。
「そうだな。まあ石だったら軽くて重い。つまり丁度良いサイズが良いと思うぞ」
「うーん。でもそういうサイズを探すのが面倒臭いかなぁ。なら.....よし」
と言いつつ。
俺の側を歩いて行ったなーちゃん。
それからニヤッとして顔を思いっきり上げる。
そして川の水を俺にぶっ掛けてきた。
オイ!?何だ!?
「エヘヘ。これは綺麗な水だからね。大丈夫だよ」
「.....いや大丈夫じゃねーよ。そうだとしても.....お前という奴は!」
「きゃー!アハハ!」
俺達は水を掛け合いながらそのまま大笑いする。
なーちゃんは笑顔を浮かべながら俺に水を掛けてくる。
そして5分ぐらい.....そのままで居た。
それから俺達はビショビショになってしまい。
俺の家になーちゃん仕方が無く招く事になった。
☆
「そういえばふと思ったけどお前が俺を好きになった理由って聞いてないよな?どうしてなんだ?」
「私が君を好きになった理由?それは簡単だよ。幼い頃に私に声を掛けてくれてそのまま.....かなり優しくしてくれたじゃん」
「.....え?たったそれだけなのか?」
「そうだよ。一人ぼっちだった私は.....何よりも嬉しかったんだから」
なーちゃんは笑顔を浮かべながら俺を見てくる。
そして顎に手を添えて、そうか、と返事しながら俺はそのまま鍵を開けて中に入る。
何というか女子高生を招くとかあまりこういうのは良く無いとは思っているが。
まあ言える立場では無いけど。
臨時で仕方が無い。
思いながら俺は、なーちゃん。先に風呂に入って来たら良い、と促す。
するとなーちゃんは、だねぇ、と言いながら俺を見る。
「.....覗かないでね」
「そんな事しないって。.....あくまで俺はそんな馬鹿な真似はしない」
「まあちょっとぐらいなら良いけど。いっぱいは恥ずかしいかも」
「覗かないってお前」
俺は言いながら少しだけ赤くなる。
するとなーちゃんは、真面目だね。エヘヘ、と言いながら。
運動着のジャージを取り出してそのままお風呂に入って行った。
今日は体育が無かったしな小雨で。
俺は、全く、と思いながらそのままスマホを見る。
ニュースでも読むか、と思ったのだが。
そこに見知らぬ番号からこんなメッセージが入っていた。
(ほほう。貴様らデート中か?電話に出ろ。ふざけるなよ)
こんな言葉を言うのはあの人しか居ないのであるが。
俺は顔を引き攣らせながら、そうか.....なーちゃんが帰ってないから!、と思い直ぐに勢い良く返事を書いてそのまま送信した。
すると、そうか。貴様と一緒なら.....まあ大丈夫だな、と書いてくる.....ん?。
何だこの書き方は、と思いながら?を浮かべる。
そして見ていると。
(貴様も知っているかもしれないが瀬奈の額には大きな傷がある。貴様なら知っているかもだが優しくしてやってくれ。瀬奈は水が苦手なんだ)
(知ってます。なーちゃんは水が苦手ですよね)
(そうだ。だから出来れば水というキーワードにはなるだけ気をつけてほしい。ふとしたキッカケでPTSDが蘇る可能性があるからな)
(分かりました。確かにそうですね)
すると、だが貴様と一緒の時は本当にあの子は楽しそうだ、と笑顔を浮かべる様な文章とスタンプを送ってくる。
俺はその画面を見ながら目を丸くする。
それから少しだけ柔和になる。
この人らしくない。
(そうなんですかね)
(そうだな。全て貴様のお陰だと思うぞ。ここまで瀬奈がPTSDを抑え込んでいるのも貴様のお陰だ)
(で、ですか)
(貴様と瀬奈は本当に一心同体なのかもしれないな。ハハハ)
俺はその言葉に少しだけ複雑な思いを抱く。
それから返事に悩んで考えていると。
追加の様にメッセージが送られてくる。
そのメッセージには.....こう書かれていた。
青ざめる俺。
(時に貴様は他に女が居るそうだな)
(ウェ!?)
(まあだからといえ貴様の事だ。そんな二股などはしないとは思うがそこら辺は心配していない。だが私からは一つだけ強く言っておきたい。貴様には全てにおいて瀬奈を選んでほしいと願っている)
(矢那先輩)
(私は瀬奈の将来を幸せにしたいからな。だから配慮して頂ければ幸いに越した事はない)
(配慮します)
俺はそんなメッセージを送りながら。
そのままそのメッセージを見ていると、にしても貴様は本当に優しいな、と文章が送られてくる。
それから、もし私は貴様の横に居たら惚れていたぞ、と送って.....オイ!?
俺は赤くなりながら、ちょ!?、と先輩に送る。
(まあそれは冗談だ。ハッハッハ)
(全く。勘弁して下さい)
(だけど瀬奈の事は冗談では無い。貴様には本当に心底から期待しているからな)
(はい。承知しました)
それからメッセージを終了する。
俺は胸をホッと撫で下ろしながらそのまま居ると。
洗面所のドアが開いた。
それに応える様に俺は顔を.....は!?
俺は真っ赤になった。
何故か.....ジャージの下を着ていない。
所謂.....太腿が顕になっている。
「エヘヘ。ゆ、誘惑。ちょっとサービス的な?」
「お、お前な!」
「少しだけ恥ずかしいけど.....でもさーくんにアピールするには十分でしょ?」
「.....く.....」
ヤバいこれはかなり艶かしい。
俺は赤くなりながら蒸気を発するなーちゃんを見る。
生足が艶かしい。
このままではマズイ!
俺はもっと見たいと思いながらもなーちゃんにズボンを投げる。
「お前な!.....俺は男なんだぞ。そんなに魅力を発したら駄目だ」
「.....!.....うん。そうだね。.....さーくんがそう言うなら止める。ごめんなさい」
「.....そうだな」
ただでさえ一緒に居るだけでも.....、と思う。
それからハッとしてなーちゃんに向いた。
なーちゃん。水は苦手って聞いたけど大丈夫か、と。
そんな言葉になーちゃんは目を丸くして、うん。今は大丈夫、と言ってくれた。
それから苦笑する。
「姉貴だね。全く余計な事を.....」
「.....でも本当に心配だからな。何かあったら話すんだぞ」
「.....うん。さーくん」
じゃあそろそろ帰ろうかな、となーちゃんは言う。
そして立ち上がるなーちゃん。
俺は、ああ、と言いながら見送る為に玄関に出た。
するとなーちゃんは、今日は有難う、と言ってくる。
その言葉に頷いて首を振った。
「.....気にするなよ」
「エヘヘ。.....じゃあまた明日ね。さーくん」
「.....そうだな」
それから俺達は別れてから、と思った瞬間。
なーちゃんが踵を返していきなり突進してきた。
それから俺に向かって俺の頬にキスをする。
なっ!?ほあ!?
「おあ?!」
「.....うふふ。シャワー貸してくれたお礼だよ。さーくん」
「お、お前な!?マジにい、いきなり何すんだ!」
「やっぱり恋は攻めてこそ、だよ」
「こ、この野郎!」
真っ赤になりながら俺はなーちゃんを見る。
なーちゃんは後ろの腰に手を添えてそのまま笑顔で手を振りながら、じゃあね、と嬉しそうに去って行く。
後に残された俺は.....あまりの突然の事に。
呆然とするしか無かった。
真っ赤になるしか.....出来ない。
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