明けた夜に
第6話 愛しているからこそ(改訂)
こういう事は本当に駄目なのは分かっているから。
そう言いながら元許嫁の彼女は、だから今は何もしないから安心して、と言いつつ俺達はそのまま夜を迎えた。
それから離れて寝てみる.....。
「.....くぅ.....」
しかしその、やっぱり寝れる訳が無い訳で。
だってお前さん。
俺の横でそれなりに無防備な女子が布団敷いて俺の布団で寝ているのだ。
かなりマズイ状況である。
布団を貸してやるとは言ったものの.....馬鹿な事をしてしまったかな、と思う。
俺は思いながらりーちゃんの寝ている布団を見る。
りーちゃんはスヤスヤと寝ていた。
安心しきった様に、だ。
俺は盛大に溜息を吐いて天井を見上げる様な姿勢を取る。
「俺も大概だな.....」
思いながら俺は方向転換して床に寝ていたが寝転がる。
それから後頭部に手を添えて考え事をする。
そうしていたらいつの間にか寝ていた。
そうして朝.....目覚めると。
何故か目の前に瀬奈が居た。
青ざめる俺。
☆
「おはよう。裕介.....」
「ど、どうしたんだお前さん。ビックリしたんだが」
「どうしたって彼女だからね。来てあげたの♪」
一晩の大雨が嘘の様な感じで晴れ渡っている空を窓から見つつ。
そのまま俺は瀬奈を見る。
瀬奈は俺をジト目で見ている。
俺はその様子に顔を引き攣らせた。
ヤバいぞこれ。
非常に怖いんですけど.....?
青ざめるしかない。
「そ、そうか。その。り、りーちゃんはどうした。まさかお前を入れる訳が無いだろうし.....?」
「桜田さんならトイレに入ってるよ。想像もつかないかもだけど私を入れてくれたの。.....私は今の許嫁じゃ無いしね、と言って」
「.....ああ.....そうなのか.....」
「.....ねえ。裕介。どう思う?」
「どうってそれは.....何方にせよお前の事は俺は愛しているが」
「.....そうなんだね。.....でも迷うよね」
何が迷うのか。
と思ったが一瞬だけ考えてハッとして顎に手を添える。
それから俺は瀬奈を真っ直ぐに見た。
そして、俺はお前が好きだ。だからこれといって変わりは無い感じで付き合いたい、とまっすぐ見据えながら言う。
そもそも俺はお前に告白されて付き合い始めたのは事実だから。
それに俺は許嫁としてお前を見ているのは事実だから、とも。
瀬奈はビックリしながら俺を.....見る。
「.....裕介.....」
「これは変わらないと思う。お前の様な.....素晴らしい女の子は居ないから」
「.....うん。裕介。有難うね。やっぱり裕介だ」
瀬奈は柔和な笑みを浮かべる。
だがその次に直ぐに真剣な顔になった。
それから俺を真っ直ぐに見てくる。
正座する瀬奈。
何だ.....?、と思っていると。
そう思ってくれているからこそ私と別れてほしい、と言ってきた。
俺は驚愕する。
あまりに突然の事で、だ。
「それは.....え!?」
「でも勘違いしないで。それは嫌いになったとかじゃない。これはあくまで桜田.....じゃなくて凛子ちゃんとの絆を考えてやる事だから。許嫁解消って訳じゃない。だけど恋人は解消してほしいの」
「.....つまり.....お前はまさか.....」
「そう。私は君の事は好きになったままだけど凛子ちゃんにチャンスを与えたい。それにこういう事をしたら君の中での私の株も上がると思うしね」
「やれやれ.....お前という奴は」
ウインクする瀬奈に呆れる俺。
良いのかそれで、と聞く。
すると瀬奈は、全然構わない、と答えた。
「私の許嫁の肩書きはそのまま。でも恋人じゃなくなるだけ。惨めな凛花ちゃんを思ってやるだけだからね」
「.....」
全くな、と思いながら見ていると。
背後のトイレからりーちゃんが出て来た。
それから聞いていたのか、本当にそれで良いの、と俺達を見てくる。
特に瀬奈を見据える感じで.....りーちゃんは真っ直ぐに見据える。
「.....そうだね。でも勘違いしないでほしいけどこれは凛花ちゃんの為にやっている訳じゃないから。あくまで私は裕介の為を思ってやっているから。このままじゃ悩んでばかりの裕介の為に多少でも力になれればと思ったから」
「そんな配慮は要らないのに。私はそれでも勝つから」
「うん。そう。.....でも私はライバル同士で対等でやっていきたいのもあるからこれで良いの。全部」
なーちゃん。私は、と言う瀬奈を.....いや。
その通りの名前だが、なーちゃん、を見ながら真剣な顔になるりーちゃん。
まだ何か言いたいの?、と.....なーちゃんは笑顔を見せる。
りーちゃんはその顔に首を振る。
そしてりーちゃんは、なーちゃんが決めたなら何も言わない、と言う。
俺は後頭部を掻く。
そして、なーちゃん、と声を掛ける。
なーちゃんは、何かな?、と笑みを浮かべる。
そのまま俺を見てくる。
全く.....。
「何?」
「.....お前って真面目なツンデレだな」
「.....つん!?いや!そんなんじゃないけど!?」
「そうか?ツンデレだと思うけどな」
苦笑して言いながら時刻を見る。
しかし何だか朝日が早い気がする。
時間を見るとまだ7時10分だった。
俺はなーちゃんを見てりーちゃんを見る。
するとなーちゃんのお腹が不愉快そうに、グゥ、と鳴った。
りーちゃんがその姿に苦笑する。
それからツンデレの様に、ご飯食べる?少しだけあるけど、と呟く。
その言葉になーちゃんが驚いた姿を見せる。
「.....え.....その。凛花ちゃんご飯作れるの?」
「.....うん。そうだけど。何か文句でもあるの?」
「.....えっと.....その」
「.....?」
その言葉に威嚇する事も無く素直に瀬奈は赤くなりながら、その。ご飯の作り方を教えて下さい、と唇を噛む様に言い出す。
俺はその様子にハッとする。
そして苦笑い。
そういやコイツは料理が苦手だったな、と。
家事全般が苦手なのである。
「ビックリした。でも教えてあげるよ。私はかなりスパルタだけど良い?」
「有難う.....凛花ちゃん」
「.....」
互いに今はライバル同士だが。
昔の記憶、か。
互いに助け合って.....生きている。
そうだな、と思う。
俺は思いながら苦笑する。
そして、やれやれ、と言った。
それからそのままゆっくりと立ち上がる。
そうしてから顔を洗おうと思っているとなーちゃんが声を掛けてきた。
「裕介.....いや。さーくん。.....有難う」
「俺は何もしてないぞ。なーちゃん」
「人生で一番凄いと思う。私は君に出会って最高に楽しい感じだよ」
「ああそれは俺もな。お前に出会ってから楽しいよ」
「.....だからこそ凛花ちゃんに勝ちたい」
「.....そうか」
その様子を見ながらりーちゃんはクスクスと笑う。
それからリーちゃんは言う。
2人とも早く食べないと遅刻する、と。
俺となーちゃんは顔を見合わせてクスクスと笑う。
だな、と言いながら.....用意をする事にする俺。
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