第5話 新婚さんみたいだね(改訂)
でも何というかやっぱりこの状態はマズイ気がする。
俺はそう思いながら時計を見る。
まだ17時なのに真っ暗ではないか。
簡単に言ってしまうと真夜中の様な感じである。
俺はそれを見てから横の台所を見る。
そこだけが律儀に片付いた。
今日だけじゃ全ては片付けられない、という事でりーちゃんは寝てから起きてそのまま晩ご飯を作り始めた。
暴風雨で買いに行けなくて食材が何もないってか缶詰しか無いのにりーちゃんはその食材だけで美味しそうな賄いカレーを作っている。
俺はカレーの美味そうな香辛料の香りなどを嗅ぎながら顎に手を添える。
するととんでもない事をりーちゃんは言った。
「何だかこれって新婚さんみたい」
「本当にそう思ってしまうから止めてくれ」
「うふふ。止めない。だって恋している人と一緒だしね。大好きな人と一緒だから」
「あのなお前.....」
「知ってる。アハハ」
言いながら鼻歌混じりでそのままカレーを混ぜるりーちゃんを見る。
しかし.....まあ何というか。
料理もこなせる家事が出来る掃除も出来る。
何これ欠点無さ過ぎ。
彼女どころか新婚でも良いぐらいですね。
俺は赤くなる。
そして首を思いっきり振る。
「.....全くな.....畜生め」
俺はそう呟きながらりーちゃんから目を離す。
それからメッセージを打つ。
瀬奈に、すまないな。本当に、と。
すると瀬奈は、良いよ。そうやって真面目だから、と返事を寄越した。
でもその代わりのお詫びで今度絶対にデートしてね、と文章を打ってくる。
スタンプで、お願い、と詫びるウサギを送りながら。
俺はそれに苦笑しながらも、ああ、と返事を打つ。
それから送信した。
(約束は必ず守る)
(うん。ありがと。それにしても姉貴のせいで今日は身が半殺しだよ。本当に)
(お前も大変だな)
(そうだね。まあ厳しい姉を持つと大変だよ)
そんな言葉を書いてくる瀬奈。
俺はその言葉に、だな、と返事を書いて送信する。
すると、出来たよー、と声がした。
顔を上げてみるとお茶碗を使い丸く綺麗に盛り付けられたカレーが。
所謂.....賄いシーフードカレー。
俺は驚愕しながらりーちゃんを見る。
りーちゃんは胸を張っていた。
何コレ凄い。
「ふっふっふ。あれだけの食材でよく出来たと褒めて下さい」
「そうだな。缶詰にカレー粉ぐらいしかなかったのに.....」
「私は花嫁修行をしていたのです。5年間ずっとアメリカでね」
「.....花嫁修行ってお前さんな.....ん?5年?」
「.....ああ。うん。5年だよ」
7年間メッセージ無かったのそれのせいか?
にしても5年?
何かズレているな。
俺は思いながらも、まあ良いか、と気にしない事にした。
すると対面にりーちゃんは腰掛ける。
「全部君の為にね。まあでも許嫁がまた出来ていたのは予想外だけどね」
言いながら不服そうな顔をするりーちゃん。
俺はその姿に、そうだな、と返事する。
すると、今も瀬奈さんとメッセージでしょ、とまた不服そうに言ってくる。
まあそうだな、と俺は律儀に返す。
そしてりーちゃんを見る。
「まあ瀬奈ちゃんも良いけど私も相手してよね」
「.....いや。私も相手ってお前な」
「だって私だって.....」
「.....」
少しだけ口を噤んでから俺を赤い顔で見てくる。
だって君が好き、と言ってくる。
赤くなる俺。
そんな一途な感じで言うなよ、と言うと。
だから絶対に諦められない、と言いながら、婚約して永遠の愛を誓った訳じゃない、と言ってくるりーちゃん。
そして潤んだ目で俺を見てくる。
「.....お願い。今だけ」
「.....分かった。分かったから。.....その上目遣いやめてくれ。可愛いから」
「.....本当に?じゃあ止めないから」
「止めろっつってんだろ。可愛いんだよ」
全くコイツという阿呆は。
俺は思いながら赤くなりつつカレーを食べて.....ってオイ何じゃこれ。
相当に絶品なんだが。
俺は愕然とする。
しかも俺の味に合っているのだが。
完璧過ぎるカレーだ。
まさか、と思いながら顔を上げる。
ニヤッとしているりーちゃんが居た。
そして俺を真っ直ぐに偉そうな態度で見てくる。
「.....君の味ぐらい甘辛中間で把握しているんだから。5年も一緒だったんだよ?お母さんに教わったしね」
「.....お前は本当に非の打ち所がないな.....」
当たり前だよ。
ここにある全ては君の為に全部やってきたんだから、と言ってくるりーちゃん。
俺は一瞬だけオドオドしながら匙を置きつつ、何故そこまで、と言う。
何故俺をそんなに好いている?、と聞いてみる。
そういやコイツの原点を聞いてない。
「.....簡単だよ。.....私の運命の人が君だったってだけ」
「.....いやいやそれでここまでするか普通?有り得ないんだが」
「するよ。だって私は.....君が大好きだから」
「俺がお前にした事って野犬からお前自身を救っただけだぞ?」
「それって女の子が好きになる理由になるよね。ヒーロー」
言いながら俺の鼻にツンと人差し指を立ててくるりーちゃん。
ツンツンと押してきながらニヤッとしてくる。
俺は真っ赤になりながらりーちゃんを唇を噛んでもどかしく見る。
すると、そうだ。ねえ。一緒に風呂に入らない?久々に、と言っ.....オイ!?
「何考えてんだお前な!冗談でも止めろ。俺は入らんぞ」
「.....エヘヘ。まあそれはそうだよね。私だって恥ずかしいよ。流石にそれは」
「お前な.....」
「.....うん。.....でも私は一緒に入っても良いって思ってるし。恥ずかしいけどね。今でも。.....ね?昔は一緒に入ってたよね。あちこち成長しているよ。私」
艶かしい感じで何も着るものが無かったので俺のズボンを履いているが。
それをヒラヒラさせるりーちゃん。
そして赤くなって俺を見上げてくる。
俺は心底だがドキッとした。
それなりにりーちゃんが汗をかいているのと。
胸の谷間とか.....そういうのを意識.....!
マズイ.....これは。
「カレー美味しいな。アッハッハ!」
「そうやって逃げるつもり?それで私から逃げれるとでも思っているのかな?」
「.....お前な.....」
「エヘヘ。私は何でも.....そして全部を知っているからね。アハハ」
だってその。
エヘヘ、と言いながら俺の下半身を見てから。
赤くなりつつ自らの分のカレーを食べるりーちゃん。
何考えてんだコイツ!?
俺は思いながらボッと赤面する。
この変態女め。
考えながら俺は首をまた振った。
良い加減にしろっての全く。
これ明日まで心臓保つのか?って思ってしまう。
現在の許嫁が居るってのにな.....。
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