第4話 一途な想いと瀬奈の思いと(改訂)

将来の約束.....か。

俺は考えながら目の前の窓の外の土砂降りの様子を見る。

それからりーちゃんが出るまでと思いボーッとしていると。

インターフォンが鳴った。


それからノックがしたので俺はハッとしてからドアを開ける。

大家さんの80歳のお婆ちゃん。

長島富子さん。

その人が傘を差してから何かを持って立っていた。


「こんにちは」


「こんにちは.....って富子さんどうしたんですか?」


「誰か一緒に来ていたから.....温かいものを、と思って持って来たよ。ぜんざいだけどねぇ。この時期にぜんざいってのもどうかと思ったけどお婆ちゃんパワーだよ」


「.....そうなんですね」


俺は苦笑しながら富子さんを見る。

富子さんは鍋に入ったぜんざいを差し出してくる。

それを素直に受け取りながら俺は真っ直ぐに富子さんを見る。

彼女さんかい?、と笑みを浮かべて富子さんは聞いてきた。

俺は、いえ、と言いながら苦笑い。


「彼女さんというよりかは知り合いです」


「.....ああ。そうなんだねぇ。大雨で帰宅出来なくなったのかい?」


「そうですね.....」


「.....まあこの天気じゃあねぇ.....何かあったら言ってね。私は何時も下に居るからねぇ」


言いながら富子さんは、じゃあね、と言いながら去って行く。

相変わらず俺にとっては祖母の様な存在だ。

俺は考えながらぜんざいの温かさと.....そして感謝の心で暖まりながら。

そのまま室内に戻る.....と。

何故かTシャツ一枚姿のりーちゃんが.....!?


「お前何やってんの!!!!?」


「エヘヘ。誘惑だよ〜。.....なんてのは嘘だけどね。色々あって」


「.....ああそうか。湿気が多いもんなこの部屋。汚いしな」


「そうだよね。全く。少しは片付けようよ」


頬を膨らませながら俺に向いてくるりーちゃん。

雑誌とか教科書とか書類とかバラバラだもんな.....服は脱ぎ捨ててあるし。

俺は考えながら苦笑する。

そして頭を下げた。


「.....でもそれはともかくこういうの興奮した?」


「ん?いや。する訳無いだろ。俺は.....お前とはそんな関係じゃない」


俺は言いながら、ぜんざい作ってくれたぞ下の人が、とぜんざいを器にそのまま入れてみる。

するとりーちゃんは、有難う、と言いながら俺の背後に来てから。

そのまま寄り添って来る。

何やってんだ。


「.....エヘヘ。ね。さーちゃんあったかい」


「分かったから離れてくれ」


「.....む。さっきから冷たいね。さーちゃんは私が嫌いなの?」


「違うって」


言いながら俺は溜息を吐く。

それから、約束は約束。それは分かるがしっかりしないといけないだろ。そこら辺の境界線は、と話す。

すると、まあそうだけど.....、と言いながらりーちゃんは俺にまた寄り添う。


「おいおい」


「どんな事があろうとも私はさーちゃんが好きだから」


「.....」


「.....だから、ね?今だけ」


「.....分かった」


俺は言いながら背後を見てから。

そのまま前を見る。

りーちゃんはそのまま暫く寄り添っていた。

そんなりーちゃんに俺は、家に電話しなくて良いのか、と話し掛ける。

すると、電話はしたよ、と答えた。


「.....さっき風呂場で」


「.....早いわ。手回しが」


「エヘヘ。泊まるって言った」


「.....はぁ!!!!?」


「だってこの土砂降りでどう帰るの?私」


「.....そ、それはそうだが.....」


困った事になった。

許嫁が居るのに、と思いながらりーちゃんを見る。

りーちゃんは嬉しそうな顔をしていた。


俺はその感じに困惑しながらも。

まあ仕方が無いか、と思いながら後で瀬奈に電話しよう、と思った。

報告は遅れたら駄目だ。



『.....佐野島くん。私の亡くなったお父さんの話をしたかね?』


『?.....いえ。聞いた事ないですね』


『私のお父さん.....つまり私の旦那さんと私は初恋が学生時代だったんだよ。.....それでお父さんと一緒に歩んだ60年は.....幸せな日々だった。5年前に脳出血で亡くなっちゃってね。.....まあ何が言いたいのかと言うとね。今を大切にしなさい』


『.....!』


『1度きりの人生。.....後悔のない様に生きなさいね』


そんな言葉を思い出した。

俺は思いながら風呂場で考える。

後悔の無い様に、か。


思いながら風呂の栓を閉める。

そしてそのまま着替えてから戻って来ると。

りーちゃんはスースーと寝ていた。

俺は、おいおい、と思いながらその姿を見る。

ズボンから.....パンツがはみ出ているし。


「.....全くな」


俺は思いながらバスタオルを掛ける。

そしてりーちゃんを見てから窓から雷が酷い外を見る。

その光景を見てから瀬奈にメッセージを飛ばした。

そして瀬名からの返事は、分かった。今日だけだからね、と返事が来る。

俺はその言葉を見つつ、当たり前だ、と返事を書いて送信。


それから考えていた事を書いてから飛ばした。

なあ。瀬奈。気付かれたぞ、と。

その言葉だけで瀬奈は気付いた様だ。

俺達の関係性に。


そして瀬奈は、そうなんだね、と送ってくる。

それから、じゃあまた今度話そうか、と絵文字を入れて送ってきた。

スタンプも一緒に。

俺はその文章に、そうだな、と返事を書く。

そうしてから送信した。


(私達の関係性は崩したくない)


(それはそうだな。許嫁だもんなお前)


(だからお願い。私を見捨てないでね)


(そんな馬鹿な真似をするか)


そんな会話をしながら。

俺はスマホを見つつそのままりーちゃんを見る。

どうなっていくのだろうなこの先。


そして.....俺達の関係性は。

考えながら俺は.....暫く悪天候過ぎる外を見ていた。

横の無邪気な顔は.....8年前と何も変わってない。


「.....後悔の無い人生.....か」


俺はそんな呟きをしながら顎に手を添える。

そして考えてみる。

そうだな。後悔の無い人生は送りたい。

そもそもそんな事はしたく無いしな.....と思う。

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