第3話 土砂降りと許嫁の約束(改訂)
授業をサボる羽目になってしまったのだが。
屋上で50分.....いや。
多分1時間過ごさないといけない。
誰がこの責任を取るつもりなのだろうか。
思いながら俺は顔を引き攣らせて目の前を見る。
丁度、俺の目の前では龍と虎が喧嘩する様な感じになっている。
だが突然だが2人共、このままでは馬鹿らしいと思ったのかプイッと横を向いた。
それから直ぐにりーちゃんが此方に迫って来る。
「ねえ。さーちゃんさんや」
「な、何でしょうか」
「私とそこの女の子とどっちが魅力的かな?」
「それは決めかねるぞ俺は.....」
「.....そうなんだね。うん。まあそこら辺はかなりしっかりしているね。やっぱり」
「当たり前だろ。どっちも魅力的なんだよ」
その言葉に、なっ、と言いながらりーちゃんは真っ赤になる。
瀬奈も真っ赤になりながら俺を見る。
じゃ、じゃあもっと魅力があるのは、と瀬奈が言った。
そんな瀬奈に俺は真剣な感じで顎に手を添える。
そして、ゴメン。ノーコメント。そこら辺はマジにお前ら魅力的だから、と言う。
そうだな、と思いながら。
「これは恋とか関係無くお前ら魅力的だから」
「.....何というか相変わらず落ち着いて小っ恥ずかしい事を言うね.....さーちゃん」
「まあせめてそこら辺だけは争いたくないしな」
プルプル震えながらりーちゃんは苦笑い。
俺はその中でも手を広げながらそう宣言する。
すると瀬奈は、そうなんだ.....魅力あるんだ、と赤くなって呟いていた。
何だか嬉しそうに、であるが。
俺はその姿を見ながら苦笑して溜息を吐く。
そして、それは良いがお前ら。どうする気だよ1時間も、と言う。
すると瀬奈とりーちゃんは顔を見合わせてジト目になる。
バチバチと火花を散らす。
「.....取り敢えずはこの時間はまあ今後を決める為の話し合いの時間にしたいかもね」
「そうだね。結構.....衝撃的だしね。今現在の状況がね」
「.....ハァ.....」
「でも申し訳無いけど仲良く出来ないと思う」
「そうだね。私も貴方とは仲良く出来そうにないと思う」
プイッと左右に横を向く2人。
俺はその姿にまた盛大に溜息が出た。
それから、分かった。取り敢えずは話し合いをしよう。現状況をどうにかしたい、と言ってみる。
すると瀬奈とりーちゃんは頷いた。
「そうだね。まあ.....それなら賛成かな」
「そうだねぇ」
「.....そうか.....」
「だから私は絶対に負けない。さーちゃんを取り返してみせる」
「私の許嫁なんだからそういう.....」
あ、と口を慌てて塞ぐが。
口が滑った.....!?
瀬奈が許嫁と言ってしまった!
俺は愕然と思いながら青ざめる。
少しだけ衝撃を受けながら俺を見てくるりーちゃん。
俺はその姿に、どうすっか、と思いながらりーちゃんを見る。
その時だった。
いきなり屋上のドアが開く。
誰も来ない筈の.....ドアが.....あれ?
と思いながら見ると漆黒のオーラを噴き出している人間が立っていた。
「やはり貴様ら此処に居たか.....」
「げ!姉貴!?」
「生徒会長さんだよね.....姉貴.....え!?」
「マジかよ.....何の勘だ!?」
俺は思いながら逃げる体制で思いっきり青ざめる。
そこに居たのは茶髪の長髪の女子生徒。
しかしこの女子生徒はただの生徒では無い。
茶髪の地毛にしての史上初の生徒会長様の矢加部矢那(やかべやな)先輩である。
何というか顔が凛としていて正義深く。
めっちゃ怖いのだ。
目が常に細いし.....イラッとしている様な.....美少女である。
瀬奈も青ざめて逃げる体制に入った。
唯一キョトンとしているりーちゃんの手を握る俺。
「逃げるぞ。りーちゃん。殺される」
「え?逃げて良いの?」
「ああ。あの女帝に捕まれば最後。俺は.....首を捻られてマジに処刑される」
「それは私もだけどね」
「ほほう。私を女帝と。特に瀬奈も。.....サボっている癖にいいご身分だな?うん?貴様ら」
逃げるぞ!!!!!、と俺達は一気にダッシュしたが。
素早い動きの矢那先輩の蹴りが。
パンチが飛んで来た。
そして俺に立ったまま跨ってくる。
丁度、仁王立ちで見下ろす形である。
「貴様という奴もそうだが。いいご身分だな?うん?サボりは楽しいか?」
「はい。先輩その。.....ちょうどイチゴの柄のパンツが見えます」
「.....うん.....うん!!!!?」
目が飛び出るほど驚愕してから。
スカートを思いっきり乙女の様に抑える矢那先輩。
真っ赤になりながら、本当に貴様は最低だな、と睨んで言ってくる矢那先輩。
俺はその先輩が退いてから、俺は逃げる為ならどんな手段でも使いますんで、とニコッと宣言する。
それから屋上の出口から逃げようとしたが。
何というか教師どもに捕まり。
んで生徒指導室に連行されてしまった。
最悪だ。
☆
こっぴどく叱られたのだが。
これは俺が悪いのか?
俺は思いながら放課後になり不満げに窓から外を見る。
すると、まあそれは天罰だな、と苦笑いをする。
いいきみだ、と舘島は続けながら鞄を持った。
「お前は呑気だな全く」
「呑気とかじゃねーよ。.....ったく。リアル2股とか最低だなオメーも」
「喧しいわ。俺は好き好んでこんな事をやってないわ。それに二股じゃねぇ」
そんな会話をしながら帰る準備をしていると。
りーちゃんがやって来た。
それから俺を真剣な顔で見てくる。
俺はハッとして無言でその顔を見た。
そして言ってくる。
「一緒に帰ろう」
「.....瀬奈は」
「あの女の子なら呼び出されてるから」
「.....」
「.....2人が良いからね。話がある」
「.....」
しかしそうは言ってもな。
考えているとタイミング良く瀬奈からメッセージが入って来た。
俺は?を浮かべて開いてみると。
そこには、先に帰ってて。姉貴から罰を食らってる、と書いてあった。
俺は額に手を添えながらりーちゃんを見る。
りーちゃんは真剣な顔のまま俺を見ているままだ。
「.....ね?」
「.....分かった」
「おう。俺はもう外されているのか?お前らの劇から」
「すまん。今日だけは頼むよ。マジに」
「.....そうか。.....んじゃまあ俺は先に帰るからごゆっくり」
それから、大変だなお前も、と言いながら舘島は帰って行く。
そんな舘島を見送ってから俺は見てみる。
りーちゃんは少しだけ複雑な顔をしていた。
俺はそんなりーちゃんに溜息を吐いてから鞄を持って立ち上がる。
そりゃそうだよな、と思いながら。
☆
帰り道。
2人黙って歩いていると。
りーちゃんが俺に向かって話してきた。
ねえ、と言いながら。
「アパートに1人暮らしなんだよね」
「そうだな。そういう事になる」
「お部屋ちゃんと片してるかな」
「う.....ま、まあ」
「ちゃんとカップラーメンとかじゃ無いものを食べてるかな?」
「.....」
もー。昔からそうだよね。
得意じゃ無かったもんねそういうの。
と言いながら俺を見るりーちゃん。
俺はその姿を見ながら苦笑いを浮かべて、すまん、と話した。
するとりーちゃんは俺に真剣な顔を向ける。
「ねえ。瀬奈さんが許嫁ってどういう事」
「.....やはりそれか」
「.....当たり前だよね。答えが知りたい。私は.....捨てられたの?」
「.....お前の事は好きだよ。.....でも親が.....許嫁を決めるとかそういう家柄だから.....だからこうなっているんだ」
「.....私は.....ずっと好きだったのに.....」
りーちゃんは胸に手を添える。
そして落胆する様な顔を見せた。
俺はズキッとその顔に痛みを覚える。
すると風が吹いた。
それから木の葉が舞う。
それを見ていると.....りーちゃんは決意した様に顔を上げた。
「私は諦めない」
「.....え?」
「私はさーちゃんが好き。だから諦めない」
「.....りーちゃん.....」
例え私は無視されても。
捨てられても。
初恋は貴方だった。
だから私は絶対に諦めない、とりーちゃんは俺を見てくる。
その眼差しは固い決意に溢れていた。
俺はその顔を見ながら少しだけ横を見る。
するとりーちゃんはこんな事を言ってくる。
俺の手を握りながら。
「今日、お部屋を片付ける」
「は?.....いや。馬鹿言え。今から片したら時間が掛かるだろ」
「じゃあどうするの。お部屋は汚いまま?それは許せないんだけど」
りーちゃんはプクッと頬を膨らませる。
何というかりーちゃんなりの切り返しだろうとは思う。
俺はその事を噛み砕きながらりーちゃんを見る。
そして頬を掻いた。
「じゃあ明日は。時間早いだろ。学校の」
「分かった.....」
とそこまでりーちゃんが言った時。
突然天候が勢い良く悪くなった。
それから土砂降りになってくる。
俺達は驚愕しながらそのまま駆け出した。
取り敢えずりーちゃんを俺の部屋に上げよう、と思いりーちゃんを誘導する。
☆
「結局上がる羽目になってしまったな.....」
「そうだね.....」
俺はゴロゴロと雷が鳴る中。
自分の部屋に帰って来た。
唯一違うのは.....びしょ濡れになっているりーちゃんが側に居る事。
何という事か。
許嫁が居るにも関わらずこれで良いのだろうか.....。
「.....シャワー借りても良いかな」
「.....あ.....ああ!?」
「?.....どうしたの?」
「透けている!下着が.....!」
「下着.....ああ。問題無いよこれぐらいさーちゃんには」
「いや。俺には別の許嫁が仮にも居るから配慮して.....」
そこまで言葉を発するとりーちゃんは不愉快そうな目をした。
許嫁許嫁って。
それは付き合っているけど絶対的に結婚している訳じゃ無いよね。そんなの.....、と悲しげな目をした。
その。幼い頃にした私との約束は?、と言いながら見上げてくる。
俺は、う、と言葉に詰まった。
すると次にりーちゃんはとんでもない事を言った。
瀬奈ちゃんとの約束よりも先に私が約束したよね、と。
俺は愕然として見開く。
今何.....と言った。
思いながらりーちゃんを見る。
りーちゃんは俺を見ていた。
そして、全て思い出した、と言ってくる。
「病気でちょっと忘れてた。それに瀬奈ちゃんは滑って転んで怪我して.....大学病院に通う為に直ぐに引っ越したのもあるから。だけど.....8年前の記憶。あの時に瀬奈ちゃんも居た筈。思い出した」
唖然とする俺。
そしてその瀬奈ちゃんとは内緒にタイムカプセルも埋めた。
大切な記憶、と言い出すりーちゃん。
タイムカプセル?
「.....それには一体何が書かれている?」
「覚えてない。本当に昔の事だから。だけど私は先に許嫁になった。好きになったのも先だった筈だから」
例え現許嫁がそうでも、と言いながら。
そして静かに寄り添って来る。
それから濡れている俺の服を握った。
俺はその姿に少しだけ赤面する。
そして、そうだな。すまない、とだけ告げた。
「決して割り込むのは良く無いと思うんだよ。だけど.....先にあの日に確実に約束した私の事も見てほしい」
かなり泣きそうな顔をするりーちゃん。
俺はその姿にビクッとしてから顔を背ける。
そして唇を噛んだ。
それから真剣な顔になる。
そうしてからりーちゃんを見る。
「すまん」
とだけしか言えなかった。
だけどりーちゃんはそれでもニヤッと.....え?
俺は目をパチクリして見る。
「まあそうだね。確かにね」
「え?」
「今は瀬奈ちゃんが勝っているから何とも言えないけど。でも新しくても昔でも。許嫁の戦いでも私が今度も勝つよ。私がね」
「.....お前な.....悲しげな顔をいきなり笑顔に切り替えるな。ビックリするだろ」
うん。でも心配してくれてありがと、と言いながら歯を見せて笑うりーちゃん。
俺はその姿を見ながら後頭部を掻いた。
それから何度目か分からない溜息を吐く。
するとりーちゃんは、でも私に多少は向いてほしいのは事実だから、と言う。
そして次に、幼馴染だろうが何だろうが、と呟き。
「.....絶対に負けない」
そう言った。
俺は見開きながらその姿を見る。
そして苦笑した。
それからまっすぐな眼差しのりーちゃんを見る。
「.....ああ」
「だから見ていてね」
「.....分かった。約束する」
そんな会話をしながら。
俺達は動き出した。
りーちゃんに先にシャワーを案内して、だ。
それから俺は顎に手を添えて.....考えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます