一章 傲慢王女は帰りたくない①
「あっははは! 読み通り婚約破棄は保留せざるをえなかったようね。さすがわたし、
自室に
ずいぶんと長い間同じ姿勢で考え込んでいたリュークがようやく
わたしの誠心誠意の謝罪に感動し、ついでに完全和解できたら話が早かったのだが。まあ
それでも一国の王女が床に
それどころかじわりと
とりあえずあの場での強制
「それにしても王女であるこのわたしに向かって婚約破棄だなんて。物静かそうな顔してやってくれるじゃない」
本来なら王族の
だが今回に限っては少し事情が
事前に一定期間領地で過ごし
王国の中でも最北の辺境地。
一見不毛地帯のようなバルテリンクは王国にとって貴重な
かつての
けれど現領主に
国王であるお父様としてはここで一気に良好な関係に持ち込みたいのだろう
ところでバルテリンク領を王都や隣国から守り続けたその地形だったが、長年に
それは山を
おまけにド寒くて、あまりにも違いすぎる
つまり、ありていに言えば
代々の当主夫人は
近年に至っては大商人の
そこで白羽の矢が立ったのが、
といってもお父様としては「嫁不足の
(もしかして、わたしの性格上、
ともあれ、あの婚約破棄の場面に立ち会っていたのは、事情を知っている本当にごく一部の側近や有力者達だけ。
表面上は視察に来た王女が予定を終わらせて無事に王都に帰ったという事実しか残らない。
しかし通常ならありがたいその
あの場はなんとか
……そしてその後にあるのは
「それだけは嫌よ!」
思わず
(やっぱりあの『絶対結婚しない』宣言はまずかったわね)
考え事をするには糖分を補給するに限る。持ち込んだお
とにかく今のままではいつ王都に帰らされてしまうか分からない。
リュークに
あんな未来、回避できるならなんでもする。
(そのためには……うーん、どうやったら
「とにかくリュークに婚約解消を考え直してもらわなきゃ。まずはそこからね」
そういえば以前彼に、周囲と
(ふむ、周囲との協調ねぇ)
確かに全然うまくいっている気がしないし、ついでに言うなら上手くやるためにどうしたらいいのか見当もつかない。
「うーん、今まで全くしてこなかった努力を急にするのって難しいな」
わたしは王女様だ。
人にどう思われているかなんて気にした事がない。誰も彼もがわたしを
それって生まれた時からずーっと
むむむと
まだ許可をしていないうちに当然のように部屋に入ってくる。けれどそれを悪いとは
(今思えばわたしも少し意固地になっていたかもしれないわね)
王宮では主人の許可なしに部屋に立ち入る使用人などいない。主人の命令には絶対服従だし口答えなんてとんでもない。だけど周囲と
(要するに価値観の違いなのに、わたしは絶対的に正しいと一方的に押し付けるだけだった。そんなものうまくいくものもいかないわよね)
一度
「失礼
納得はできても、やはりこうもあけすけに主人を悪く言える使用人はどうかと思うけれども。
ふわふわとした
(なによ、大
こんな事くらいでどうしてそんなに
「いいじゃないこのくらい。どうせこれからベッドメイクでシーツ
親切に教えてあげたのに、アンは余計に
(王女であるわたしにこの態度。王都なら罰せられてたわね)
当然だが、かつてこのわたしに非難の咳払いを聞かせる侍女などただの一人としていなかった。それどころか生理反応の咳払いだって無理して
アンは
「そんな下品な
(あー、はいはい。いつものフローチェ様ね!)
わたしの
アンは言ったあと
フローチェ・モンドリア
リュークの
そこへ王命でやってきた評判の悪い第四王女、わたしが
それでも文句一つ言わずに身を引いた心
ええ
(だけどそれ、別にわたしのせいじゃないし!)
よく考えて欲しい。
顔見知りもいない、
そんな場所に
(これってどう見てもわたしの方が悲劇のヒロインポジションじゃないかしら?)
まあわたしは泣きもしないしここから逆転してみせるけどね!
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